子供の名前
子供の喋りをひらがなにしています。
読み辛かったら申し訳ありません。
燃えた村からだいぶ離れた距離まで歩いてきた。
あんな怪物がいるということは、元の世界ではないということが濃厚になってきた。
気が付くと、いつの間にか2人の子供は泣き止んでいた。
「おじさん、へんじしてよ」
先ほど助けた子供の1人が何度も話しかけてきた。
薄く赤い瞳、灰色の髪をショートカットにした女の子。
見た目通り活発な印象を受ける。
先ほどから気になっていたが、頭に獣の耳がついている。
獣人ってやつなのだろうか。
「返事をできなくてごめんね。あそこは危険だから早く離れたかったんだ」
話しかけてきた子供にそう答える。
理由があって返事をしなかったにせよ心苦しかった。
「おかあさん……」
もう片方の子供が呟く。
おかっぱのような髪型、髪の毛は黒かった。
髪の一部分だけが白くメッシュのようになっていた。
こちらの子も目の色は薄く赤い。こちらの子にも耳がついている。
「まさか、お母さんはあの村にいたの?」
失念していた。先に逃げた男が親ではないにしろ、子供だけが村にいるわけがない。
親とはぐれてしまったと考えるほうが自然だ。
まさか自分は子供を助けたつもりが誘拐してしまったのだろうか。
「おかあさん、いないよ。いたけどいなくなっちゃった」
ショートカットの子が答える。
どういうことだろう。
いなくなったというのはあの現場からいなくなったのだろうか。
それとも、それより前からいなかったのだろうか。
「いなくなったていうのは、どういうことかな?」
もしかしたら答えにくいことかと思ったが子供たちに質問した。
「わかんない。でかけてから、いなくなっちゃった」
「じゃあ、お父さんは?」
あの逃げた男が父親なのだろうか?
「おかあさんしか……いない」
母子家庭だったのか。
まさか母親に捨てられたのだろうか。
それとも出稼ぎとか?
こんな小さな子を置いていくなんてよほどの事情があったのだろう。
親がいない以上この子供達をここに置いておく訳にはいかない。
この子供達を連れて町に行くことにする。
元の世界だったら青い制服の人に手錠をかけられそうだ。
子供達と歩いていると、名前を知らないことに気付く。
「お名前を教えてくれるかな?」
膝を折り子供達と目線を合わせて話しかける。
少しの間にせよ、名前は知っておきたい。
「なまえ……ない」
おかっぱの子が答える。
さすがに名前がないということはないと思うのだが……。
「あのね、なまえね、ないの」
もう1人の子もそう答える。
「名前がないっていうのは、わからないんじゃなくて、名前がないの」
「そう」
「うん」
頭を強く打たれたような気がした。
まさか名前がない子がいるのだろうか?
自分のいた国では考えにくいが、子供達が嘘をついているようにはとても思えない。
どうするべきか少し考える。
「名前がないなら、おじさんが付けてもいいかな?」
嫌がられるかもしれないと思ったが、子供達に提案してみる。
「おじさん、なまえつけてくれるの? やったー」
「べつに……いいよ」
おかっぱの子のいいよがどちらの意味かわかなかったが、嫌そうではなかったので名前を考えることにした。
「う~ん、どういったのがいいだろう」
俺はこの歳で独身だったので、子供に名前を付けたことがない。
「花子?」
「なんか、かわいくない」
お気に召さないらしい。
「上だけとって、ハナ?」
「わたし……それがいい」
思いもよらない方から答えが返ってきた。
「ハナが気に入った?」
「うん……おはなみたいでかわいい」
なら花子でもいいんじゃないかと思ったが、突っ込まないでおこう。
「おねえちゃん、ずるい、わたしもかわいいのがいい」
ん?
「もしかして姉妹なの?」
「みたらわかるでしょ、セイゾー、わたしのなまえもかわいいのがいい」
さっきまでおじさんだったのに、呼び捨てに変わっている。
姉妹と言われてみたら、目の色は同じだし顔立ちも似ていなくもない。
「姉妹なら花の名前がいいかな?」
「ハナはおねえちゃんでしょ。わたしもかわいいの、はやく」
そういう意味ではなかったのだが、うまく伝わらなかったようだ。
期待をこめた瞳で見つめられる。
「ならレンは?」
薄く赤い瞳に見つめられて蓮の花が思い浮かんだ。
自分で花の名前を提案しておきながら花に詳しくない。
さすがにハスでは可愛くないのでレンにした。
「かわいい、おねえちゃんとおなじ」
何が同じなのだろうか?
文字数が2つくらいしか似てない気もする。
でも本人達が気に入っているならよかった。
「じゃあ2人はハナとレンでいいかな?」
「いいよー」
「うん」
はじめて子供達の笑顔を見た。
泣いていた顔に花が咲いたような愛くるしい笑顔だった。




