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子供との出会い

 明るい方向に進んでみると、すぐに道のような場所に出た。

 お昼前後なのだろうか太陽の位置が高く、大地を明るく照らしている。

 道はアスファルトではなく、土が踏み固められてできたものだ。

 道の周りは整備されたのか木は伐られている。そんな道が左右に延びている。


「あれは、煙かな?」

 右の道の先で煙が上がっているのが見える。

 煙突の先から出るような細い煙ではない。

 広い野原で野焼きでもしているかのような大量の煙が上がりはじめている。

 人がいるかもしれない。とりあえず近くまで行ってみることにする。


 煙が上がっている場所に近づいてきた。

 その場所は道沿いではなく、道から左の林に入って開けた場所にあった。

 近づいたことで何が燃えているのか明らかになった。

 村だ。


 あまり大きくはなかったであろう村が燃えている。こちらに走ってくる人が見える。

「すみません、何があったんですか」

 駆け寄り話を聞いてみる。

「化物だ、化物が出たんだよ」

 着の身着のまま逃げてきただろう男は慌てた口調で言う。

 男が言った化物が何かはわからない。まさかモンスターだろうか。

 とりあえず言葉が通じるのは確認できた。男との会話を続ける。


「化物ですか?」

「悪いが答えてる暇はない。俺は行かせてもらう」

 男はそう言い捨てると走り出した。すれ違ってすぐだろうか後ろから男の声がする。

「あんた、旅人か? 悪いことは言わねえから、あっちに少し行った先にある町に急いだほうがいい。じゃあな」

 そう言って男はまた走り出した。

 男は俺が来た方向とは逆を指差すと町があることを教えてくれた。

 少し口が悪かったが、悪い男ではないのかもしれない。


 それよりも、こんな知らない場所でいきなり化物に遭遇したくはない。

 遠目に化物の姿でも見えないかと思い焼けている村を見渡していると、動く小さな人の姿が見える。

「まさか、子供か」

 遠くてはっきりとは分からないが、迷っている暇はないと焼けている村へ走る。


 距離が近くなると子供だという事が分かる。

 幸い子供がいるのは村の入り口のようだ。化物の姿はない。

 もし化物を見てしまえば躊躇してしまうかもしれないので、今は姿を現さないでほしい。

 村に近づくにつれ熱さが増してきた。


 子供は2人いた。

 襤褸(ぼろ)を着ただけの幼い体を寄せ合い泣いている。

 2人とも女の子だと思う。

 急に近づいて来た俺を見て片方の子供が怯えた表情で見てくる。


「お、おじさんだれ?」

 少し聞き取りづらいが子供が話しかけてきた。

「おじさんの名前は誠三だよ」

 努めて優しく言う。

「セイゾー?」

「うん、そうだよ。それより急いでおじさんとここを離れようか」

 あまり話している暇はない。

「いや……こわい……」

 もう1人の子供が怯えながら呟く。

 そうしている間にも火の勢いは増している。いくら入り口とはいえ危険だ。

 火だけではない、化物もいるはずだ。

「ここは本当に危ないんだ。急いで離れるよ」


 怯える子供を両脇に抱える。

 暴れたり泣き声が増したりするが、気にしている暇はない。

 力の限り走る。早くこの場所を離れなくてはならない。

 火の熱さがあまり感じなくなるくらい離れた時、背後から心臓を突き刺すような視線を感じた。

 子供達を背に隠し後ろを振り返る。

 燃え盛る村の中、姿ははっきり分からないが黒くて大きな影が見える。

 しかし、その両目だけははっきりと見える。

 周囲の炎など関係ないと言わんばかりに赤い瞳がそこにある。

 その両目でこちらを睨んでいる。

 せめて子供だけは守らなくては、そう思い身構えた俺に向けて化物は不気味に微笑むと炎の中に姿を消した。


「おじさん、どうしたの?」

 子供の声で我に返る。

 どうやら化物が襲ってくるという危険は去ったようだ。

 それでも早くこの場を離れなくては、化物がいつ気分を変えて襲ってこないとも限らない。

 子供への返事を返すのも忘れ、先ほど会った男の言った町へと向かった。

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