現実逃避
マリアが自警団の詰所へと向かった後、俺はレンゲや子供達がいる部屋に行く。
部屋に入ると親子はおままごとをしていた。
先ほどまでの剣呑な雰囲気が嘘のような光景だ。
それでも今はひと時の安らぎを得るためにその光景を眺めていたかった。
「しょくじができましたよ」
「きょうのごはん……なに?」
レンはマリアの真似をしているのだろうか。
「やさいのすーぷです」
「おいしそうだな」
「はやく……たべたい」
レンが2人にできた食事よそう仕草をする。
2人はそれを食べる仕草をする。
「おお、おいしいな」
「おいしい……」
「おかわりも、ありますよ」
沢山作っているようだ。
2人がおかわりをを要求する。
「ちょっと、まってくださいね」
忙しい忙しいと言いながらおかわりをついでいる。
「おいしそうだな」
忙しそうにしているレンに声をかける。
楽しそうな雰囲気につい仲間に入りたくなった。
「あ、セイゾー、おかえり」
「おかえり……いっしょにあそぶ」
「おかえり」
おままごとをしていた3人が出迎えてくれる。
おままごとが中断しているがよかったのだろうか。
「セイゾー、いっしょにやる?」
「お、仲間に入れてくれるのか?」
「つぎは……わたしがおかあさん」
どうやら配役が変わるみたいだ。
「あたしは、こども」
「なら私はお父さんだな」
俺には何の役が回ってくるのかな。
「セイゾーは、いぬ」
あれ? 人間ではない配役が回ってきた。
「俺も子供とかがいいな」
「だめ……いぬ」
どうやら駄目らしい。
「セイゾーが犬……」
面白かったらしくレンゲが笑っている。
「おい、笑うことはないだろ」
笑っているレンゲに文句を言おうとする。
「セイゾー……いぬはワンでしょ」
「いぬは、しゃべっちゃだめ」
子供達に注意されてしまった。
それを見たレンゲがまた笑っている。
しばらく子供たちとおままごとをして遊ぶ。
言葉を話そうとする度に、犬はでしょ、と怒られた。
子供たちとこうやって遊んでいると先ほどまでの出来事が嘘のように感じてしまう。
しかし、そうではないのだ。
おままごとが一区切りするとレンゲに先ほどの事を伝える。
レンゲには知らせないわけにはいかない。
「そうか、迷惑をかけてしまったな」
「いや、レンゲ達にここにいろと言ったのは俺だ」
レンゲが少し考えてから口を開く。
「何かあればいつでも私達を追い出してくれ」
その表情は冗談ではなく、決意を込めた表情だった。
「そういうわけにはいかない」
「しかし……」
「俺がここにいてほしいんだ」
俺の気持ちを察してくれたのかレンゲも何も言い返さなかった。
「なにかあったの?」
「けんかしちゃ……だめ」
その様子を見て子供達が不安そうな表情を浮かべている。
子供達に心配をかけてしまったようだ。
こんなことじゃいけないな。
この子供達と一緒にいようと決めた夜を思い出した。
あの時はあまりに大きな重りだと思った。
でも今はその重りをどうか背負わしてほしいと思っている。
それほどまでに俺はこの子達を大切に思っている。




