再会
教会へ着いたのは随分と遅い時間になってしまった。
子供達は寝てしまっているだろうか。
部屋に近づくとマリアが部屋から出てきた。
「セイゾーさんですか? 」
暗くて顔がよく見えなかったのか確認してくる。
「ただいま、マリア」
「無事でよかったです。そちらの方は? あとセイゾーさんなんで上半身が裸なんですか?」
レンゲに服を貸しているので上半身は裸だ。
上半身裸で帰ってきた男を見たら理由も聞きたくなるだろう。
「この人はレンゲ、子供達の母親です。 俺が裸なのは気にしないでください」
俺がそう言うとレンゲがマリアに頭を下げた。
「え? 母親が見つかったんですか?」
マリアがレンゲをじっくりと観察する。
「セイゾーさん? 何をしたんですか? 事情を説明してください」
レンゲが俺の服を着ていることに気付いたようだ。
犬を追って出て行ったと思ったら、子供の母親を連れて帰る。
その母親は自分の服を着ただけの姿だ。
事情を聞かれても仕方がない。
部屋へと移動し事情を説明することにする。
子供達はやはり寝ていた。
話を始める前に服を着て、レンゲにも服を貸し着てもらう。
「何から話したらいいだろうか」
説明しなくてはいけないことが沢山ある。
レンゲに何か話してはいけないことはないか確認するが、何もないと言われた。
教会で会った犬がレンゲであり、そのレンゲが子供達の母親であることをマリアに伝える。
「え? あの大きな犬がレンゲさん?」
信じられないのも無理はない。
俺だって目の前で見なければとても信じられない。
「信じられないですか?」
「いえ、驚いただけです。セイゾーさんが嘘をついているように見えませんし、大変珍しいですが獣に姿を変える獣人がいると聞いたことがあります」
マリアはそういった獣人がいることを知っていたようだ。
レンゲが違う世界からきたということは話せないので俺と同じように難民ということにした。
マリアに色々と説明していると話し声で目が覚めたのか子供達が起きた。
眠い目をこすりながらこちらを見る。
その瞳にレンゲの姿を映し出したとき、眠気など忘れたように目を見開いた。
そのまま子供達は勢いよくレンゲに飛び掛かり抱きついた。
「おかあさん!」
「あいたかった!」
子供達はもう二度と離さないといわんばかりにレンゲを抱きしめた。
「私も会いたかった」
レンゲもまた子供達を強く抱きしめる。
子供達の様子を伺っていたとはいえ、子供達に久しぶりに触れ合うのだ。
嬉しくないわけがない。
「よかったです。本当に」
マリアの方を見るとその瞳に涙を浮かべていた。
親子の再会に心打たれるものがあったのだろう。
俺だって感動している、感動しているが逃げ出した男達のことを考えると、どうしても不安がある。
親子の平穏は取り戻されてはいないのだ。
母親に会えた喜びからか、それとも今まで離れていて不安だったのか泣き出した子供達が落ち着くまで少しの時間がかかった。
今はレンゲにくっついたまま眠っており、レンゲはそんな子供達の頭を愛おしそうに撫でてている。
慌しさが落ち着ちつくとマリアが口を開いた。
「これからどうするのですか?」
「そのことなんですが、しばらくレンゲをここに置いてくれないですか」
すぐにどこか別の住む場所を探してもいいが、時間もかかる。
子供達もここに慣れているし、レンゲにもマリアしかいないこの場所の方が落ち着けるだろう。
「マリア、私からもお願いする」
レンゲがマリアに向かって深く頭を下げる。
「いえ、私はかまわないんです。ただ……」
マリアが俺を見る。
何か問題があるのだろうか?
「セイゾーさんはどうするんですか?」
「どうするとは?」
本当にわからない。
その顔を見てマリアも俺がわかってないことが伝わったのか困った顔をする。
「寝る場所です!」
「ここで寝たらいいんじゃ……」
言いかけたところでマリアが言わんとすることが理解できた。
この場所で寝るということはレンゲも一緒に寝ることになってしまう。
たしかにそれはまずいかもしれない。
「藁は余ってるし脱衣所か外にでも寝ます」
今の時期なら外で寝てもそれほど冷え込むこともないだろう。
「もう、何も考えてなかったんですね。それじゃあ私と寝ます?」
またマリアの悪い冗談が始まった。
やれやれと思っているとレンゲが口を開く。
「私はかまわない」
「は?」
「え?」
その言葉を聞いて俺もマリアも意味がわからないといった顔になる。
「私はセイゾーと一緒の部屋で寝てもかまわない」
その言葉を聞いたマリアがこちらを冷たい目で見てくる。
「あらあら。随分と仲がよろしいんですね」
笑っているようだが目が笑っていない。
目が怖い。
「いや、俺は外がいいかな~」
「私と子供を守ってくれるんじゃないのか?」
レンゲが追い討ちのような言葉をかけてくる。
確かに言ったが、このタイミングで言うと随分と誤解を受けそうだ。
「そんな事まで仰ったんですか?」
今ならヘビに睨まれたカエルの気持ちがわかる気がする。
「なんだ? 妬いているのか?」
レンゲさんもう勘弁してください。
あの目を見てもレンゲは平気なのか?
犬だからヘビに睨まれても平気なのか?
「べ、別に妬いてません! た、ただ不謹慎です」
マリアが慌てている。
先ほどの冷たい目がなくなり胸を撫で下ろす。
「私はマリアにも感謝している。心配ならマリアも一緒にここで寝ないか?」
どうしてこうなったのだろう。
今5人が同じ部屋で寝ている。
部屋は6畳ほどで荷物もほとんどないため5人で寝れないことはない。
寝れないことはないのだが距離はどうしても近くなってしまう。
俺は部屋の端でその横に子供達、レンゲ、マリアと続く。
「いつも1人で寝ているのでなんだか嬉しいです」
「私も子供達と寝れて嬉しい。マリアには本当に感謝している」
2人もまだ寝付けないのだろう会話を始めた。
「いいんですよ。教会としても当然の事ですが、私個人としてもレンちゃんやハナちゃんと離れると寂しいですし」
「セイゾーとは離れてもいいのか?」
その会話はやめてほしい。
「え? え~と、セイゾーさんはおまけです」
「そうなのか?」
「そうです。 この話題はやめましょう」
俺の心が通じたのかマリアが話題を変えてくれた。
なにやらその後も2人が会話をしていたようだが、疲れていたらしく2人の会話を子守唄のように感じながら眠りに落ちた。




