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目覚める

 暖かな風が吹く。肌に生の実感を感じながら目を開ける。

 木々の間から差し込む木漏れ日が映し出される。


「ここはどこだ?」

 病院のベッドの上なら話はわかる。だが、周りを見渡しても草木しかない。

 腕や足を動かしてみる。痛みなどなく問題ない事を確認するとゆっくりと立ち上がる。


「車に跳ねられて山まで飛ばれた?」

 そんな訳はないとわかってはいた。もしそうなら無事ではすまない。

 記憶に問題がないか自分の事を思い出してみる。


 名前は、青山 誠三。

 歳は、34歳。独身。

 住所は……


 どうやら記憶も問題はないようだ。

 もう一度ゆっくりと辺りを確認する。


「あれは何だ?」

 先ほどは気づかなかったが、少し離れた場所に何か立っている。

 兎?

 しかし、俺が知っている兎とはあきらかに違う部分がある。

 背中から羽が生えているのだ。

 もしかしたら俺は死んでいて、天使の変わりに迎えに来てくれたのだろうか?


「こんにちは」

 一応声をかけてみる。

 ビクッと、兎は驚いて俺とは反対方向に走っていった。

 途中でこちらを一瞬振り返った時の何あいつ、みたいな表情が悲しかった。


 どうやら天使ではなかったようだ。

 意識もしっかりあるし死んではいないのだろうか。

 上から葉が揺れるような音がしたので頭上を見上げる。

 猿みたいな動物が木の上で声を押し殺して笑っている。

 みたいなのというのは、頭に大きなモヒカンのような物がくっついている。毛なのか皮膚が硬質化した物なのかはわからない。

 似たような猿をテレビで見たことがあるがその仲間だろうか。

 ただわかるのは、おもいっきり笑われているということだけだ。何がツボに入ったのだろうか。


「ウキキ」

 もう1匹猿がやってきた。新しく来た猿は少しモヒカンが小さい。

「ウキャキャ、ウキャウキャキャ」

「ウキ」

 2匹の猿は会話をしているように見える。身振り手振りを加え盛り上がっている。

 会話が終わったのか新しく来た猿がどこかへ行こうとして立ち止まる。

 もう1匹の猿に振り返り先ほどの兎の顔真似をする。

「ウキャキャキャキャ」

 2匹は大爆笑だ。今度は笑い声を抑えることもしない。

もちろん俺は面白くない。


 恥ずかしいような、腹が立つような思いになり、大人気ないとは思ったが近くの石を拾い、いまだに笑っている猿めがけて石を投げつける。      

 コツンっと、猿がいる足元の木に当たる。

 それがお気に召したのか、より一層笑いながら猿達は去っていった。

 

 少し落ち着いて考えよう。

 モヒカンの猿はともかく、羽の生えた兎は地球にはいないはずだ。

 少なくても日本にはいないし、俺は聞いたことがない。

 周りを見ても見覚えのない植物が多い。 

 結論を出すには早いが、海外にいるというよりは知らない世界にいるのではないだろうか。

 死後の世界ということも考えられなくはない。

 とりあえずは、人がいる場所を探すため移動することにする。

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