噂
数日が過ぎこの生活にも慣れてきた頃。
仕事が終わりギルドで顔見知りになった人達が話している噂話を聞いた。
「隣の酒場に新しい女が雇われてな」
「ああ! 見た見た。なかなかいい女だな。」
「まじかよ、俺も行ってみるかな」
3人の男が話している。
酒場でいい女か、少しひかれる内容だ。
「話は変わるけどよ、最近家畜が襲われいるらしいじゃないか」
「ああ、そうらしいな」
「なんでも化物を見たって奴がいるらしいぜ」
話が変わりすぎだ、もう少し酒場の女の話を聞きたかった。
しかし、化物と聞いて自分が出会った化物が思い出される。
「俺はでかい獣を見たって聞いたぞ?」
「ここいらじゃ見かけないモンスターなのかもな」
「それよりも子供をさらう噂だよ」
その話が出たとき気になったので、男達の近くに寄る。
「あの隣の町だろ?」
「金になるとはいえ、ばれたら処刑もんだぞ」
「おい、あんまり滅多な事を言うな」
なんでもここから離れた町で子供をさらう事件が何件かあったというのだ。
聞き耳を立てているとラビーが話しかけてきた。
「怖いですよね」
「聞こえていたのか?」
そう言うとラビーが自分の耳を指す。
「耳はいいので」
「なるほど」
兎耳は伊達ではないらしい。
「レンちゃんとハナちゃんは?」
「え? 俺はさらったりしてないよ!?」
いや、回りから見たらさらったと言われるかもしれない。
「わかってますよ! セイゾーさんが保護したんですよね」
「保護ってほどじゃないんだけどな」
そういえば、子供達に遭った場所は門番の人が使われなくなった集落だと言っていた。
廃村みたいなものだろうか。
どうして子供達はそんば場所にいたのだろう。
「保護ですよ。悪い人なら身寄りのない子供を売ったりしますから……」
沈痛な面持ちでラビーが話す。
「この町はいい人が多いですけど、噂ではそういった悪い人も珍しくないって聞きますから。特にモンスターが多く出る地域では珍しくないって」
この町が平和ってだけで、この世界にも大きな闇があるのかもしれない。
「親が見つかるといいんだけどな」
「そうですね。セイゾーさんって優しいですね」
表情のコロコロ変わる人だ、さっきまでの表情嘘のように今は笑っている。
「優しくなんてないさ」
「優しいです! 私狙っちゃいます」
いきなり変なことを言い出した。
「おいおい、おじさんをからかわないでくれよ」
「もちろん冗談です。でもおじさんって、セイゾーさんいくつなんですか?」
34歳であることを伝える。
「え!? 見えない。20代後半だと思ってました」
「童顔なのかもな」
決して俺は童顔ではないのだが、この世界だと俺の顔でも若く見えてしまうようだ。
そのため俺も町の人の顔を見ただけでは年齢が読みづらい。
「でもセイゾーさん最近稼ぎもいいし、結婚されないんですか? マリアなんてどうです?」
前にマリアは渡さないみたいな事を言っていたのに。
「取っちゃだめなんじゃないのか?」
「マリアと私、2人とも養ってください」
これは完全にからかわれているな。
「今は子供達で手一杯だよ」
「今は、なんですね」
揚げ足を取られてしまった。
「勘弁してくれ」
「え~、おもしろいのに」
どことなくマリアに似ているような気がした。
さすがに小さい頃から一緒にいるだけはある。
マリアから逃げるようにギルドを出る。
教会に戻ると、騎士のような人がマリアと話していた。
「あなたがセイゾーさんですか?」
「はい、そうです」
俺の姿を確認するとその騎士が話しかけてきた。
「私はセーイス教会の騎士をしているトニーといいます」
一礼して自己紹介をしてくれた。
そういえばマリアの教会はセーイスを崇めていたな。
名前もそのままセーイス教会ということか。
「私に何か御用ですか?」
用件を尋ねる。
「ご存知かもしれませんが、他の町で子供をさらう事件がありました。私はその連絡のため各教会を回っています」
一呼吸置いて俺への本題を話し出す。
「あなたが子供を2人保護して教会で生活をしていると伺ったのですが?」
もしかして怪しまれているのだろうか。
騎士は何やら紙を取り出すとそれを見ながらこちらの顔を伺う。
「はい、間違いありません」
誤魔化しても仕方がないので素直に認める。
「あ、決して疑っているわけではありません。子供に会わせて貰いましたが、さらわれた子供とは違うようですし」
何かひっかかるが、疑われてはいないようだ。
「子供達はこのまま教会預かりになるんですか?」
以前マリアが話していた教会が生活できるように保護するってやつだろうか。
騎士の話の本命はこっちだったのかもしれない。
「それはしません」
子供達はわかっていなかったが、俺は子供達に一緒にいると言ったのだ。
教会預かりになるとどうなるかもわからない。
「そうですか、わかりました。先ほど話したようにこういった事件がありましたので注意はしておいて下さい」
そう言って騎士はマリアにも挨拶をすると去っていった。
「セイゾーさんならそう言うと思ってました」
騎士を見送るとマリアが笑顔で言った。
「えっと、なんでそう思ったんですか?」
「さあ? なんででしょうね?」
どこか楽しそうにマリアが笑っている。
「教会には悪かったですかね」
「いいんですよ。レンちゃんもハナちゃんもその方が喜びます」
「だといいんですが」
自信はあまりない。
「大丈夫です。妬けちゃうくらい仲良しですよ」
「からかわないでくださいよ」
「いいじゃないですか。私も仲間にいれてくださいね」
そう言ってマリアは夕飯の支度をするとめ家に入っていった。
子供達は部屋の前でボールを投げ合って遊んでいた。
「おかえりー」
「おかえり……いっしょにやる」
お誘いを受けたので一緒に遊ぶ。
俺がボールを投げると2人が取りに走る。
レンの方が足が速いのかハナはなかなかボールが取れない。
「ハナ、ボールを返しにいくとこまで一緒に走らなくても」
ハナはレンがボールを返しに戻るときも一緒に戻ってきていた。
「わたしも……とりたい」
それならばと、レンが戻ってきている間は向こうで待つことを伝えた。
これでレンが戻ってきたらボールを投げてハナが取るという流れができる。
流れができたのだが、投げる頻度が増えてしまった。
投げているだけなのだが、何度もやっていると疲れてくる。
子供達は全力で走ったりしているのだが、休む気配がない。
子供の体力のすごさを実感した 。




