農家の手伝い
今日の朝は気持ちよく起きることだ出来た。
寝床が柔らかくなったのが良かったのかもしれない。
視線のようなものを感じなかったのは、気のせいだったのか慣れて気付かなくなった為だろうか。
後者だと嫌だな。
子供達もお気に召したのか仲良くまるまっている。
なんだか子犬みたいだ。物音で起こしてしまったのか目が開く。
「2人とも、おはよう」
「おはようー」
「おは……よう」
レンは寝起きがいいがハナは少しボケーってしている。
すぐに直るので寝起きがそんなに悪いわけではないと思う。
朝の支度をして仕事に向かう。
昨日と同じようにいつもの職場で仕事を終わらせる。
今日は、昨日お世話になった農家さんのお手伝いをする。
今朝ギルドに行った時に、町の東の農作物の被害が増えていると小耳に挟んだからだ。
余計なお世話になるかもしれないが、今後も藁をもらったりするのでお礼も兼ねて力になりたい。
まずはギルドで詳しい内容を聞いておく。
ギルドに入るとラビーがいたので対応してもらう。
ラビー以外にも職員はいるみたいだが、窓口での対応はほとんどラビーがやっている。
「農作物の被害ですか?」
「どういった被害か気になって」
今朝ギルドで話が聞こえたことを説明する。
「あは、聞こえちゃってましたか」
「聞いちゃまずかったかな?」
秘密だったのだろうか。
「いえいえ、大丈夫です」
「なら詳しく教えてくれないか?」
被害内容を聞こうとする。
お世話になった農家に被害がなくても、今後広がる可能性があるしな。
「家なんです」
「え?」
何を言っているのだろうか。
「私の家なんですよ。その農家」
農家といってもこの町には沢山ある。
とりあえず、俺がお世話になった農家の話をし場所を伝える。
「家の前に大きな木がありました?」
「たしか、あったな」
「昨日藁を取りに来ました?」
「教会近くの農家の家にもらいに行ったな」
ここまで話してやっとわかった。
あの農家がラビーの家なのだ。
「昨日来てたのセイゾーさんなんですね」
「えっと、昨日はありがとうございました」
「いえいえ、いいんです。父から話を聞いてもしかしたらって思ってましたから」
世間は狭いものだな。
まさかあそこがラビーの家だったのか。
「世間は狭いですね」
「今俺もそう思っていたよ」
ラビーが言うには、農場の野菜をモンスターが食べに来て荒らしてしまうらしい。
荒らしに来るモンスターは弱く臆病なモンスターではあるが、人が近くにいない時を狙ってくるので困っいるという話だった。
農場に行きながら何かできる事はないか考える。
臆病で人が近くにいると襲ってこないというところがポイントになりそうだ。
単純に柵などを作ってもいいかもしれない。
ラビーの家に到着した。
声をかけたが反応がないので農場の方にいるのかもしれない。
家の裏側に回ると、町を囲む柵に小さな出入り口を見つける。
その出入り口にも一応扉は付いているが簡素なもので、そこを通った先に農場だが広がっていた。
今の季節は正確には分からないが、畑には春野菜と思われるものが生育しており、見たところ収穫間際ではないだろうか。
畑の横には放牧場もある。
現在放牧をしていないのか、それとも見える位置にいないだけなのか飼育している動物の姿は見えない。
畑を眺めていると目的の人物はすぐに見つかった。
「すいませーん」
農家のおじさんに声をかける。
「どしただ? なんかようけ?」
農場の被害を聞いて藁のお礼に何かできないか伝える。
「気にしなくていいだ。藁は捨てるほどあるだ」
それでも何かしたいと言うと現状を説明してくれた。
「あの向こうの山から、兎が飛んでくんだ」
「兎が飛ぶんですか?」
「飛ぶだ。」
跳ねることを飛ぶと言っているのだろうか?
「あ、丁度向こうに飛んでるだ」
言われてそちらを向く。
確かに飛んでいる。
飛ぶというよりは滑空している。
見た事のある兎だ。
この世界で一番初めに遭った、あの兎だ。
あの翼はああやって使うのかと感心していると、畑に着陸。
目当ての野菜を掘り起こすと口に咥える。そのまま走って加速すると、高く飛び跳ねる。
遠くからでも兎の跳ねる高さが異常なのが分かる、
家の屋根を越えるくらい跳んでいるんじゃないだろうか。
翼を大きく広げて滑空しながら逃げる姿はなんだか美しい。
やっていることは泥棒だけど。
「あんな感じだべ」
これは柵をしても無駄である。
となると、もう一つの案を試してみるしかない。
「案山子ってわかりますか?」
「かかし?」
地面に絵を描いて説明する。
「そんなもんであの兎来なくなるだか?」
「慣れない内は警戒してくれると思います」
材料は農家にあるものだけで十分なので、道具を借り作らせてもらう。
木を十字架のように組んで、藁を巻く。
後は襤褸を着せたり、布で顔を作って完成である。
すぐにできあがる。
「とても人には見えないだ」
「俺にも見えませんね」
案山子なんてそんなもんだ。
遠くから何かいると警戒させるのが目的なので問題ない。
早速おじさんの畑に案山子を刺す。
おじさんの奥さんだろうか、お茶を持ってきてくれた。
奥さんは獣人で、頭にラビーのような耳がついている。
3人で遠くから案山子を眺めながらお茶を飲む。
日暮れ近くまで待ったが警戒しているのか来ないようだ。
「ただいまー」
ラビーが帰ってきたのだろうか?
「あっ、セイゾーさん本当にいる」
「お邪魔してます」
異世界で知り合いの家にお邪魔しているというのも不思議な感じがする。
「お迎えが来てますよ」
「お迎え?」
お迎えに来る人なんて限られている。
「セイゾー、いたー」
「かえるの……おそい」
小さなお迎えが近づいてくる。
その後ろにはマリアもいた。
「どうしてここが?」
ここに来るとは伝えていない。
「ラビーが教えてくれました」
ラビーの家はにギルドからの帰り道に教会がある。
「2人は知り合いなんですか?」
親しそうだったので聞いてみた。
「小さい頃から一緒なんですよ」
ラビーは嬉しそうにマリアに抱きつく。
「もう、ラビーったら」
友達に見せる態度なのか、いつもとは違うマリアだ。
「あれ? 小さい頃からマリアは教会にいたんですか?」
「はい、小さい頃は他に責任者の方がいましたが、今は私だけです」
親ではなく責任者ということは、マリアには家族はいないんだろうか?
「あ、セイゾーさん! 今、マリアに家族がいないとか思いませんでした?」
顔に出ていたのだろうか、ラビーが鋭い指摘をする。
「マリアは私の家族みたいなものです。取っちゃだめですよ」
そういってマリアを背に隠す。
「私、モテモテですね」
マリアも嬉しそうだ。
いや、マリアを取ろうとはしてはいなが、家族の形も色々あるんだろうと思わされた。
「セイゾー、まだしごと?」
「まだ……かえらない?」
子供達が聞いてくる。
「もう遅いし、帰ろうか」
「あれ? ご飯食べていかないんですか?」
ラビーが食事の誘いをしてくる。
「下ごしらえはしてるから。ご飯はまた食べに来るわ」
マリアはもう食事の下ごしらえを済ませているようで、ラビーの誘いを丁寧に断っていた。
ラビー達家族に挨拶をすると4人で帰路についた。




