新しい寝床
夕飯を食べ、日が暮れないうちにマリアに藁がないか確認した。
「沢山いるんですか?」
「換えのためにも沢山欲しいかな」
それなら教会近くの農家が分けてくれると教えてくれた。
すぐに戻るからと子供達に伝え、教えてもらった農家に買っておいた縄を持って行ってみる。
教えてもらった農家の家は教会から歩いて数分くらいの距離にあった。
町を囲う柵の近くに建っており、家の裏にある柵の向こうには畑や放牧地が広がっている。
家の前には大きな木が立っていた。
マリアが教えてくれた特徴と同じなのでここで間違いないだろう。
家の外にいた農家の人に挨拶をし、藁を分けてもらえないか相談する。
農家の人は快く藁を分けてくれた。
訛りは強いが、柔和な感じのする話し方だ。
持てる限りの藁を縄で縛る。
お金を払おうとしたがいらないと言われ、足りなければいつでも取りに来ていいとも言ってくれた。
お礼を言って、教会の部屋に帰る。
「なにそれー」
「なにか……つくるの?」
子供達は大量の藁に驚いている。
「今より快適な寝床を作ります」
そう伝えて準備を始める。
そんなに大層な物を作るわけではない。
藁を一握りくらいでまとめ両端を縛っていく。
縛り終えたら長さを切り揃える。
その藁を寝れる大きさに繋ぎ合わせていく。
藁のマットの完成である。
あまりきつく縛ると湿気がこもってしまうので、ばらけない程度にしている。
定期的に作り変えないといけないが材料費はほとんどかからない。
両脇で興味深そうに2人が見つめている。
完成しても何に使うかわかっていないようだ。
「なにに……つかうの?」
作ったものを床に引いて、その上に筵と今日買ってきた大きな布を敷く。
「あー、ねるばしょだー」
「ねて……いいの?」
「2人のために作ったんだ。遠慮せず寝てみて」
そう言って子供達を促す。
「やわらかーい」
「なんか……きもちいい」
あんまり暴れると形が崩れてしまうので、寝るときだけ使うように注意しておく。
自分のは簡単なのでいいかな。
適当に藁をしばり切り揃えもしない。寝れればいい。
作り終えた頃にノック音がする。
タイミングが良いのか悪いのかマリアがやってきた。
どうやら藁で何をするのか気になっていたようだ。
「それは?」
念のためか確認をしてくる。
「藁のベッドみたいなものです」
熱い視線で藁のベッドを見つめている。
「私のは?」
「え?」
「私の藁のベッドは?」
どうやらマリアも寝るときは筵で、この町ではそれで寝るのは珍しくないらしい。
農家などは加工してない藁に直接寝たりもするようだ。
それはチクチクしそうで嫌だが、すごく温かそうだ。
「マリアも必要かな?」
コクリとマリアが首を縦に振る。
笑顔で無言の肯定をされるとなんだか怖い。
後日マリアの分も子供達と同じように作ってあげたのは言うまでもない。
寝る前に子供達と歯を磨く。
雑貨屋のおじさんに言われたとおりあの木の枝を使う。
子供達も使ったことがないのか不思議そうに見ている。
先に自分が磨いている。
歯ブラシとは違うが、磨けなくはない。
木の匂いみたいなものも気にならない、むしろ少しいい匂いがするくらいだ。
自分が磨き終わると子供達の番だ。
「じぶんでやるー」
「わたしも……やってみたい」
挑戦してみたいというのでやらせてみる。
レンは枝をガジガジと噛んでいるだけで磨こうとしない。
ハナはうまくできているようだ。
「ほら、レン貸して」
レンから枝を貸してもらうとレンの歯を磨く。
「へいほー、くふぐったひ」
口を開けたまま話すので何を言っているか分からない。
笑っているのでくすぐったいのだろう。
よだれが口から溢れてくるので大人しくしてほしい。
「これで……いい?」
ハナが終わったのか口を開けて見せに来る。
見たところ問題はなさそうだが、磨き残しのありそうな奥歯などをもう一度磨いてやる。
「くすぐったかった……ありがとう」
ハナは大人しく磨かれてくれた。
歯を磨き終わったので寝ることにする。
子供達は嬉しそうに新しく出来た藁のベッドに寝転がる。
嬉しそうな姿を見ると作ってよかったと思えた。




