買い物
職場に行くとリヤカーが完成していた。
「もうできたんですか?」
「おう、設計図がすごかったからな。これでいいか?」
あんな地面に描いた様な設計図で希望以上の品を作るレオスの方がすごい。
強度の足りそうにない部分は補強されている。
試しに動かしてみたがスムーズに動く。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。仕事が捗るならこっちも嬉しいしな」
早速準備をしてリヤカーを使い運搬を始める。
町の人達には奇異な目で見られたが気にしない。
サイズが少し大きく10樽載せる事ができた。
半日ほどで50樽も運ぶことができた。自力で運搬するより疲れも少ない。
「おいおい、すげーな」
「すごいのはレオスさんですよ。まさかここまでの物を作ってもらえるなんて」
半日使ってみたがリヤカーに痛みなどはなかった。
荷重がかかる部分の補強がしっかりしているからだろう。
他の社員が1日で運ぶ量だという。
俺が運んだのは距離が近い場所だから、比べるのもおかしいかもしれない。
「こりゃ今後が楽しみだ。期待してるぜ」
「あまり期待しないでくださいね」
出来る事はやらせてもらうが、あまり期待されても困ってしまう。
銀貨1枚を受け取り教会へ戻る。
教会の外に子供達がいた。
地面に絵を描いているようだ。
「ただいま」
声をかけると駆け寄って来る。
「おかえりー」
「あ……おかえり」
絵を描いていた木の枝を振り回すのをやめさせる。
何か期待している目をしているが、今日は飴はない。
「……」
ハナが無言で枝で突いてくる。
それを見たレンも真似をしだす。
「こらこら、やめなさい」
枝の先端が尖っているのか痛いからやめてほしい。
「おみやげは毎日はないんだよ?」
攻撃が増した。
「たまには買ってくるからね」
攻撃が止まった。
「たまにだよ?」
優しく突いてくる。
くすぐったい。
「今日は買い物に行こうか」
枝を捨てた。
「いくー」
「いく……」
「お菓子を買うんじゃないよ?」
枝を拾いに行くのを止めた。
マリアも誘おうとしたが、教会でお祈りに来ていた人の相手をしているようなので、一声かけて出かける。
「なにかうのー」
「とりあえず、服とか生活用品かな」
買う予定の物を説明する。
「ふく……もってる」
「うん、でも着替え用に2、3着は欲しいね」
「きがえー」
水浴びして遊んだりするので、着替えは少し多めにあってもいいかもしれない。
ギルドで世間話の時に聞いておいた古着屋に行く。
お店は中央広場の近くにだいたい集まっているらしい。
古着屋に到着し早速中に入る。古着のほかにも古生地なんかも置いてある。
「いらっしゃい」
恰幅のいい中年の女性が声が出てくる。
「この子達と、あと自分の分の着替えを探してるんですが」
「あいよ、それならそっちからサイズが合うのを探しておくれ」
案内された方に行くと大量の服が置かれている。
ある程度サイズ分けはされているようだが、決まった規格がないらしく大きさはばらばらだ。
「値段はいくらくらいですか?」
「それなら1着銅貨2枚だね。まとめて買うなら安くしとくよ」
銅貨2枚の時点ですごい安い気もするが、古着だし安いものならそんなものか。
「でかーい」
「あな……あいてる」
レンは遊んでるようにしか見えないが、ハナは服をしっかり選んでいるようだ。
結局レンの分もハナが選んでいた。
俺の自分の分を適当に選ぶ。
大き目の古生地があったのでそれも一緒に買うことにする。
「全部で銅貨23枚だね。おまけして22枚にしてあげるよ」
「お姉さん、20枚になりませんか?」
一応値切ってみる。
「こんな中年のおばさんにお姉さんなんて言って値切るんじゃないよ。銅貨21枚ね」
値切ってくれた。
おばさんにお礼を言って店を出る。
「つぎは、どこー?」
「なに……かうの?」
「雑貨屋かな」
マリアが色々と用意してくれるが、最低限必要なものは用意しておきたい。
聞いておいた雑貨屋を目指し移動する。
服が意外とかさばるので買う順番を間違えたかもしれない。
雑貨屋は古着屋の近くにあった。
中に入ると所狭しと商品が置いてある。
店主はどこになにがあるか把握できているのだろうか。
「らっしゃい」
奥からボサボサ頭のおじさんが出てくる。
「探すの大変だろ? 欲しい物言ってくれれば探すぜ」
大変だとわかっているなら整理して欲しい。
大きめの籠や生活に必要そうなものを店主に出してもらう。
縄や鋏も見つけたので買い足す。
「あと、歯を磨くものってありますか?」
おじさんが不思議そうな顔をしている。
「あんた、どこの生まれだ?」
何かまずいことを聞いたのだろうか?
おじさんが奥へ行き何かを持ってくる。
「これだ」
その手には枝があった。
「これで磨くんだ。ここいらの者はみんなこれを使ってる。家に生えてるしな。皮を剥いで先を噛んでつぶしてから磨くんだ」
まさかこの枝はトイレにあった葉の木の枝なのか?
見覚えがある。
「トイレの葉の木ですか?」
「なんだ知ってるんじゃないか」
あの木は万能なんだろうか。
「あの木ってすごいんですね」
おじさんはそれを聞いて笑う。
「確かに色々使える木だな。実は沢山なってうまくはないが食べれるし。その実は胃腸にもいい。でも、木はまっすぐ伸びないから建材には向かないし、生命力が強いからほっとくと大変な事になる。良し悪しだな」
おじさんとの話が終わり子供達を見ると何やら探している。
宝探しをしているみたいで楽しいのだろう。
興味津々といった目をしている。
ハナが何かお宝を見つけたのか大事そうに持っている。
「何か欲しいものあった?」
「うん……でも」
遠慮しているのだろう。
何を持っているのか隠して見えない。
「見せてくれる?」
「うん……」
ハナが大事そうに持っていたのは櫛だった。
自分があまり使わないので気付かなかった。
確かに女の子には必要だ。
「それも買おう」
「え! いいの!?」
ハナが珍しく大きな声ではっきり返事をした。
よほど嬉しかったのだろう。
「うん。女の子には必要だもんね」
「ありがとう……」
ハナが照れている。
しかし、こんな簡単なことを忘れているなんて結婚できないわけだ。
今度はレンが嬉しそうに何か持ってくる。
「かってー」
その手にはハンドボールサイズのボールがあった。
貸してもらい触ってみる。
ゴムではなく鞠のように何かの皮で作られている。
「ほしー」
まあ、ハナにも買ってリンに買わないのも可愛そうなので買うことにする。
「全部で銅貨42枚だな」
「銅貨32枚になりませんか」
強気に値引いてみる。
「それじゃあ儲けにならない。41枚でどうだ」
「なら35枚でどうですか」
もう少し粘ってみる。
「40枚で手を打ってくれ」
「セイゾー、おかねないの?」
「これ……あきらめる」
2人が心配そうにこちらを見つめている。
悪い事をしているわけではないが、すごく罪悪感がある。
「40枚でお願いします」
おじさんの提示した額を受ける。
「なんか、悪いな。おまけに大きい籠もう1個持っていきな」
結構なおまけをしてくれた。
「子供には適わないからな。その代わりまたきてくれよ」
おじさんも子供には適わないらしい。
買ったものを籠に入れ帰ることにする。
籠は2つあるので1つは2人が持っている。
籠の両側を2人で持ち、中には先ほど買った服と宝物を入れ満面の笑みである。
その光景に買ってよかったと思う。
俺もおじさんのことは言えないな。
教会に戻り部屋に荷物を置くとハナがレンの髪を梳かし始めた。
自分の髪からやらないのがなんだかハナらしい。
レンはそれが気持ち良いのかニコニコとしてされるがままになっている。
俺は買った生活用品の一部を持ってマリアの所へ行く。
マリアは教会ではなく家の方にいた。
夕飯の支度をしていたようだ。
「おかえりなさい、いいものは買えました?」
「ただいま、いい物かはわかりませんが」
俺が持っている物をマリアが見つめる。
「それは?」
「食器です。よければ使ってください」
教会で使うためかマリアの家に食器は多くあった。
中には痛んでいるものもあったので、似たような食器を買ってきておいたのだ。
「まあ、いいんですか?」
「お世話になっているのはこっちのほうなので」
マリアも買い替えを検討していたらしく、素直に喜んでもらた。
明日から早速使うそうだ。
もう少しで夕飯ができるとの事なので子供達を呼びに行く。
部屋に入ると今度はレンがハナの髪を梳いていた。
レンの事だから雑に髪を梳かすかと思っていたが、ハナと同じように優しい手つきだ。
ハナも気持ち良いのかニコニコしている。
切りがいい所まで待って子供達を連れて食事をしに行く。
「あら? 髪を梳いたんですね」
マリアはすぐに気付いた。
「可愛くなってますよ」
2人とも嬉しそうだ。
「セイゾーさんは言ってあげました?」
そういえば言ってないなと子供達の頭に手を置いた。
「一段と可愛くなったね」
頭を撫でようとしたが、髪が乱れそうなのでやめる。
「えへへー」
レンは気にしないのか手に頭をぐりぐり押し付けてきたので撫でてあげた。
それを見たハナも寄ってきた。
子供達は嬉しそうに俺に撫でられていた。




