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夜の会話

 マリアの家で夕食を食べ終わった。

 レンもハナも頂きますと、ご馳走様を言うようになっていた。

 子供達は俺が教会に帰る前にマリアと水浴びを済ませたらしい。

 不謹慎とは思うが、少し羨ましい。


「もうお部屋に戻られますか?」

 食器を片付けながらマリアが言う。

 先ほど片付けを手伝おうとしたが丁重に断られた。

「もどるー」

 レンがそう言うので3人で戻ることにする。 

 暗いからとマリアに燭台を持たされる。


「トイレは大丈夫か?」

「あたし、いく」

「わたしも……」

 先にレンがトイレに入る。

 暗いと怖がっていたので燭台を持たせるが、それでも怖いらしくハナと一緒にトイレに入った。

「セイゾー、いるー?」

「ちゃんといるよ」

 2人でもまだ怖いらしい。

 子供達が出てくると俺もトイレを済ませた。


 部屋に戻ると、部屋の隅にはマリアが洗ってくれたのか洗濯物が畳まれていた。

 昨日と同じように寝床を作る。

 子供達は嬉しそうにそこに横になる。

「もう寝るの?」

 横になったので寝るのかと思ったが違うようだ。

「まだねむくないー」

「おはなし……する」

 まだ寝ないらしい。

 2人の横に腰をおろす。

「セイゾー、きょう、なにしてたの?」

「お仕事だよ」

「おしごと……なに」

 どうやらどんな仕事をしていたか興味があるらしい。

「うんこを運ぶお仕事かな」

「あはははは、うんこはこんだの?」

「セイゾー……うんこ」

 俺はうんこではない。

 そんなに面白かったのだろうか、子供って変なものを面白がるな。


「2人は何してたの?」

「わたし……そうじ」

「あたしも、ふきふきした」

 拭き掃除の仕草を仰向けになってしている。

「お手伝いしたのか、えらいね」

「わたし……がんばった」

 そう言ったハナの頭を撫でてやる。

「あたしも、あたしもがんばった」

 それを見てレンも頭を撫でてほしいのか突撃してきた。

「レンもえらかったな」

 空いているほうの手で頭を撫でてやると、2人とも気持ちよさそうにしている。

 はじめて耳に触ったが、ほんのりと温かかった。

「セイゾーも……えらい」

 そういって立ち上がったハナが俺の頭を撫でてくる。

「あたしもやる」

 レンまで真似してきた。

 2人に撫でられ、昨日も今日も慌しかったが、やっと落ち着けたんだなと肩の力がぬけるような感じがした。

 気がつくと髪がボサボサにされていた。

「やってくれたなー、お返しだ!」

 2人の頭もボサボサにしてやる。

「あはは、セイゾー、やめて」  

 楽しそうにと笑う2人に満足して手を止める。

 2人も笑い終えるとまた横になった。


「セイゾー、あしたもしごと?」

 レンがどこか寂しそうな顔をする。

「しばらくは仕事かな」

「わかったー」

 元気のない返事が返ってくる。

 子供達と遊んであげたいという気持ちはある。

 しかし、今は生活の為にも稼がないといけない。

 ふと疑問が頭をよぎる。

 俺はこの子達とどうしたいのだろう。

 正直に言えば、知らない世界で自分の事だけでも手一杯だ。

 だからといって、こんな幼い子供を見捨てるわけにはいかない。

 教会に預ければいいのかもしれない。

 1人ならば今日の給料から考えても生活はできるだろう。

 それでも、その選択ができないのは子供達を見捨ててしまうような罪悪感からなのか。

 助けた自分自身の責任と置き換えるには、あまりにも大きな重りなのかもしれない。


「セイゾー……ねむい?」

「つかれた?」

 子供達の声で我に返る。

 そこには俺を心配そうに見つめるつぶらな瞳があった。

「なあ?」

 その瞳に問いかける。

「お母さんが見つかるまで俺といるか?」

 考えて出た言葉ではなかった。

 ただ、その瞳を見ていると自然と呟いていた。

「いるー」

「一緒が……いい」

 この先どうなるかはわからない。

 無責任な大人だと罵られるかもしれない。 

 それでも今は目の前の2人と一緒にいようと思った。

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