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芹澤八雲は愉快に暮らしたい  作者: 芹澤 八雲
3/6

事故

 気が付くと、私は病院に居た。

 別に気を失っていたわけではない、その時を冷静に振り返ってみると私は何もせず呆然と立ったままだった。いや、呆然と立っていたわけではない。なんだろう、事故に遭った男性の剝き出しになった脳を観察していたのが正しい。ずっと見ていた。瞬きを殆どせずにずっと見ていた。

 普通の人間なら失神もしくは悲鳴を上げるだろう。だがなぜ私はずっと見ていたのだろうか。

 あの後、付近の住人が通報し、警察と救急が来た。男性はすぐ救急車に乗せられて行った。私も同じく病院に乗せられて行った。 

 病院に着いたら私は医師の診断を受けた。まぁ正面衝突だ、首にむち打ちの痛みがあった。

 軽い処置をしてもらったがまだ首が痛む。当分は病院通いになりそうだな。

 

 そんな事を考えているとこちらのほうに警察官が二人来るのが見えた、事情聴取といったところか。しかし心配である、私が加害者扱いされないか。

 「警察です。少しお話を聞かせていただいても宜しいですか?」

 片方の警察官がそう話を切り出し、事情聴取が始まった。

 事故の経緯を説明したが少し予想外の事故だったことが分かった。

 どうやら相手の男性は速度違反でパトカーに追跡中だったとのこと、そのカーチェイスに私が巻き込まれたというのが今回の事故の真相だ。相手方の男性は即死とのこと。

 「えーと…芹澤さん、お怪我のほうは大丈夫ですかね。」

 「私は軽く首をむち打ちした程度で済みました、運がよかったのでしょうね。」

 「全くです、大けがにならずに済んでありがたいです。」

 まぁ、カーチェイスに巻き込まれたわけだ、ここで私も死んでいたら警察の責任問題がより大きくなるしな 

 「精神的には大丈夫でしたか?事故当時ずっと立ちっぱなしで唖然としてたようですが。」 

 正直、咄嗟に返事が出なかった。が、一呼吸おいてこう返した。

 「そうですねぇ、少し唖然しましたね…本来ならば警察、救急を真っ先に呼び事故の相手男性の意識を確認するべきでしたね。申し訳なかったです。」

 「いえいえとんでもない、普通でしたら唖然となりますよ。」

 そう警察官は軽く笑って返してくれた。

 「ではすみません、お時間ありがとうございました。また日を改めて事情の方を詳しく聞かせていただきますのでその際は宜しくお願いいたします。」

 そう言って警察官は帰っていった。ポケットからスマートフォンを取り出し時間を確認する。時刻はだいたい夜8時だった。またスマホを見たときに着信履歴が2件あった。片方は会社からでもう片方は実家からだった。

 とりあえずまずは会社に電話をかけた。そういえば会社からの帰宅途中だったなあと思うと色々面倒くさくなるのだろうか、労災の扱いになるから色々書類とか書くんだろうなぁ…と思っていると電話がつながった。

 「はい谷崎ですー。芹澤くん大丈夫ー?会社の帰りに事故ったって聞いたけど。」

 「お疲れ様です谷崎さん。今お電話よろしいですかね?」

 そんな感じで上司に今回の事故の報告をした。ケガをした事が伝わっていたのか明日休みにしてもらえることになった。思った通り、明後日出社したときに事故報告として書類を何枚か書かされるハメになった。

 その後は実家に電話をかける。まぁ親に報告するのはまた別の面倒くささがあるが仕方ない。

 「もしもしー?八雲大丈夫?大怪我してないー?」

 「俺はむち打ちで済んだ程度だよ。だが車が派手にぶっ壊れちゃったよー。」

 

 そういえば私の車、大破したんだったな…そこもどうにかしないとなぁ…

 事故に遭ったのは不運すぎるなぁ、色々やらなきゃいけない事が一気に増える。そういった意味でも谷崎さんは休みにしてくれたのだろうか、気の利く上司だなぁ…。


 「とりあえず今日は帰るか…って病院から自宅までの足が無かったな…」

 

 電話をかけなきゃいけない所がまた一つ増えた。

 


 

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