シスターからの紹介
コンコン
重厚な扉をノックする。ここはシスターマリアの研究室。奥からどうぞ、と聞こえその重たい扉を両手であげる。
「先生、マリア先生、私です。サルバメントです。」
「マカ・サルバメント、来るのはもっと後でよかったのだけれど。まあ来たものは追い返さないわ。そこにお座りなさい。」
奥から重そうな本を読みながらシスターマリアが出てくる。本を読む時の頭の角度を保ったまま、目だけこちらに向ける。その目には、怒りか呆れの感情が入っているのが見て取れた。マカはその表情に、顔が一気に青ざめる。マカの心情を表すようにもみあげもシュンとする。
マカは勧められたままに、椅子に座る。フワフワだが、ほこりっぽくて座るとギシッという音とともにほこりが舞う。
「先生、今日、、、というか最近私が遅れそうになっているのには、理由があるんです。」
「サルバメント、あなた、素直に謝れないのですか。」
「す、すみません、先生、、、でも、毎晩同じ夢を見ていて、その夢のせいで寝覚めがよくなくて、、」
「夢、ですか。そんなもの、誰でも見ると思うのですが。それがあなたの理由と言うのなら、これはこれは、、、たいそう立派な言い訳ですねぇ。」
呆れてため息をつくシスターマリア。マカは自分が考えていた展開と違うため、何を言えばいいかわからず、ぐっと口をつぐむ。
「いいですか、マカ・サルバメント。ここ聖グラニーディアの目指す生徒は」
「恵みある愛、豊かな教養、清廉なる純潔、です。」
「いまのあなたでは、どれも当てはまりませんよ。自分の生活をもう一度しっかりと見直しなさい。あなたはこの歴史ある学校の誇れる生徒の一人なのです。それを忘れては行けませんよ。」
「は、、はい、、、」
シスターマリアの勢いに押され、もう下を俯くしかないマカ。返事とともに礼をして部屋を出て行こうとする。
「それはそうと、サルバメント、あなたに博士を紹介しましょう。無意識や夢など、意識下について詳しい方です。きっとあなたの力になってくださいますよ。」
「えっ、あ、ありがとうございます!」
話半分で聞いていたと思っていた夢の話に触れられ動揺する。シスターマリアは紙に住所と博士の名前を書いて渡す。
「ケンザキ博士、、、え、ラ、ラグナダ?!」
「ここからラグナダまでは列車を使えば3日で行けます。土日でいければよかったのだけれど、そうもいかないですね。よろしい、サルバメント、あなたは明日から1週間学校を休んでそちらに向かいなさい。博士には話を通しておきますから。」
「は、はい、シスターマリア、、、」
あまりの展開についていけず、扉にぶつかりながら、メモを握りしめたまま教室に戻った。