夢から目覚めて
ーーーハッハッ、、
私は一面の花畑の中を夢中で走っている。
少し先を走るのはお花と同じピンク色の髪の男の子。
走っても走っても追いつけない。
足元には、小さい頃お気に入りだった赤い靴。
あれ?私、今何歳だっけ?
「マカ!早く来いよ!置いてくぞ!」
立ち止まった私に振り返って手招きをする男の子。
ニコッとした笑顔は本当に可愛くて、ピンク色の髪の毛も相まって女の子みたい。
彼の白くて柔らかそうな手を早く掴みたくて、私はまた走りだす。
「待って!待ってよー!」
私が彼の手に届く寸前で、急に、視界が暗くなる。
まるで闇に手が生えたみたいに、男の子を掴んで離さない。
「やだ!離してよー!」
もがいても小さな男の子の力じゃびくともしない。
涙をためた瞳をこちらに向けて助けを求めるように両手を伸ばす。
「マカッッ!助けて、マカーーー!」
「、、、っ」
ガバッ
「また、この夢、、、」
もう何度目、、、
いつも同じ場所、同じ男の子、同じ展開。
最後に声が出なくなるのも、
全部いつも同じ。
マカ・サルバメントは枕に顔を埋める。
「あの子の名前何なんだろ、、、」
「あらぁ〜あんた、また夢見たのお?」
「おこしちゃった?ごめんね」
声に軽く答える。
といっても、部屋にはマカしかいない。
「あたしには睡眠なんて必要ないの!」
「幽霊だもんね」
「幽霊なんてそんな低俗なものじゃないわ!守護霊よ!守護霊!!」
食い気味で自分を幽霊と区別するのは守護霊のプシュケー。
プシュケーの姿が見えるのはマカだけだ。
たんぽぽの綿毛のようにまん丸でふわふわした光のような存在である。
「霊ってついてるからおんなじでしょ!」
「んま!イライラしちゃって!も〜寝不足なの?寝不足もイライラも美容に悪いわよ。もういっかい寝なさいな。」
「言われなくても!おやすみ!!」
もう一度布団にもぐり、プシュケーの声を遮断して目を閉じようとした。
「ま、もう、8時半ですけどね〜」
「えっ!うっそ!ちょっと!学校!!!」
マカは飛び起きて自分の部屋から飛び出した。
ショートカットのせいか、直りにくい寝癖を一生懸命整える。1番のこだわりはそこだけ伸ばしたもみあげ。両方のもみあげだけは肩下まで伸ばし、毛先だけカールさせる。
母親の呆れるような怒鳴り声を聞き流し、走って学校へ向った。