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伝説の竜の息子  作者: 旭桜
プロローグ
7/12

とある鬼神の憂鬱

時間が掛かったのは単に私が怠惰だからです。

 「神竜王の迷宮」「追憶の層」1階。

 神竜王の印象に残っている場所が、神竜王の記憶を基に、具現化したものを一括りにした階層である。

 1階から三十階までは神竜王の故郷、ガスユィヤの森全域が区分けされて入っていて、その様相は、一階だけでも、鬱蒼と生い茂る木々、地平線が見れる程広い草原、毒々しい沼地、色とりどりの花が咲き誇る花園。と、様々な顔を見せている。

 この階層に住む者達はは総じて理知的な者等が多い。

  

 その中で最も多くの人口を有している種族、霊媒術や気功、巫術に精通し、鬼と神霊を先祖に持つシュロウ族。

 そのシュロウ族の集落に、一人の少年の姿が見られるようになってから、何年経ったのだったろうか。

 シュロウ族の先祖にして長老のザゲンは、ふとそんなことを考えた。

 永い時を生き、時間の感覚が他よりずれている事を自覚しているザゲンは、その答えを思い出すのに、少し間をおいた。そして思い出す。

 

 「そう言えば、丁度五年か、ラート君が来てから」

  

 男は呟いた、そしてそのまま思い出した。

 少年が集落に来た時のことを。




   §




 「こいつ、預かっててくれ」


 その声と共に、神竜王はその手に抱き抱えた赤ん坊を、ザゲンの手の内に収めた。

 

 「えっと、この子は?」


 ザゲンが聞くと、神竜王は誇らしげに答えた。


 「俺の息子だ」

 

 対するザゲンは驚愕していた。


 「はあ、......はぁっ!?」

 

 それもそうだろう、ザゲンの知る神竜王は誰とも交際していない筈なのだから。一人、それらしい人がいる事は知っているが。その場合集落に預ける必要はない。

 

 何かがある。そう、ザゲンは確信した。

 だが、それを聞く前に、機先を制すように神竜王は口を開く。


 「日中預かってくれれば良いよ、夕方迎えに来るから、これから頼むね」


 そう言って、神竜王は自分の居るべき場所に戻っていった。 


 赤ん坊を残して。

 

 


   §




 「あれから五年、月日が流れるのはやはり早いものだな」


 老いた鬼、ザゲンはそう呟いて、

 

 「あの後は、大変だったな」


 集落の皆に説明し、少年の世話係を決め、いざ御披露目というときに何処かへ居なくなり、見つけたら自分の子孫と共に遊んでいた。そんな出来事を思い出した

 

 「本当、あの子がもう魔法を習い始める年になってるだなんてね」

 

 はて、それだけだったかと違和感を感じるザゲンであったが、

 耳をすませば、外から、子供達の声が聞こえてくる。


 「ラート、またまほーじんいじってる」「げっ、シオン、......良いじゃん、すこしくらいなら」「そうだよ、そーいくふーがだいじだって先生言ってたもん」「アギトまで、......良いもん、私もそーいくふーするもん」「がんばれ~」「ねえ、ラート」「ん、何?」「今日って、あの日じゃなかったっけ」「あっ! そうだった」「何でわすれてんだよ」「ごめん」「まあ、ラートだもんな」「何だよ、その言い方」「あ、せんせいだ」「はい、皆魔法陣は出来た?」「できたよせんせー」「どれどれ~? ......ん?」「せんせーどうしたのー?」「ええっと、皆、ちょっと待っててね」

 

 「ん、何かあったのかな?」


 ザゲンは、子供達に魔法を教えている女が駆け寄って来る様子を見て、何か厄介ごとが起きたのだ、と確信した。

 

 「イズ、どうしたんだそんなに慌てて」


 一応、聞いてみる。一抹の期待を寄せて。

 

 「長老、シオンちゃんがこんなものを」


 イズと呼ばれた女は、ザゲンに魔法陣を見せた。おそらく、会話からしてカエデという人物のものだろう。

 魔法陣を見せられたザゲンは、緊張した様子で、魔法陣をじっくり見ていた。

 やがて、大きく息を吐く。そして、嘆息混じりに最後の確認をとる。

 

 「これは、本当にシオンの描いた魔法陣なのかい?」


 イズは静かに頷く。


 「はあ~、全く、五歳にしてこんなものを作るなんて、流石は儂の子孫だな」


 ザゲンは苦笑しながらも誇らしげに言った。神竜王と同じように。

 その姿にイズは呆れながらにも笑っていた。




   §




 「でも、これって本当に凄い事だと思うんですよ」


 イズはそう、ザゲンに意見を述べた。


 「だって、こんな高度な追尾性能付与術式を、こんな低コストで発動できる陣を、五歳で作っちゃったんですよ」


 イズの意見に、ザゲンは重々しく頷いた。

 彼女の言ってる事の重大さを、良く理解しているからであろう。


 「これが外に出回り、しかも制作者が五歳の幼女と知れたら、確実にその才を狙う者が現れるだろうな」

 「ええ、それに、シオンちゃんは後十数年で外に出ることとなります、いずれ出ていくことになるのなら、その時の為に自分の才能を自覚させる必要があります」

 「まあそれは、今じゃないがな」

 「ええ、あんまり誉めて高慢ちきになっても、良いことは無いですからね」

 「ふふっ、経験者の言うことには、やはり説得力があるものだね」

 「そ、それは言わなくて良いじゃないですか!」


 イズは顔を真っ赤にして抗議した。

 ザゲンはイズの抗議を軽く流して、話を変えた。


 「はいはい、儂が悪かったよ。......ああそうだ、そう言えば今日はあの日だったね」

 「えっ、長老、とうとうボケましたか」

 「ボケとらんよ! 全く君は、たまにとても失礼だね」


 ザゲンは顔を真っ赤にして抗議した。

 イズは、ついさっきの焼き直しの様に、ザゲンの抗議を軽く流して、はなしを続けた。


 「はいはい、私が悪かったです。......で、今日は狩り始めの日ですが、新しい狩人は決まってるんですか?」

 「......あ、ああ、決まっているよ決まっておるともさ決してまだ決めてなかったなんて事も決めること事態を忘れていた訳ではないからねそれこそ天地神明に誓って決めておったからねそうだラート君とシオンにアギトにギシタキにキュオイにシンラ3兄弟だよさあこれで決定だ確定だ後の9つに皆に発表しようそうしよう狩り始めは儂らの集落の一番の祭事だからね......」

 

 ザゲンは烈火の如く誤魔化そうとしているが、そう簡単に騙されるほどイズの頭は悪くない。

 イズは呆れた顔で、まだ何かを捲し立てるザゲンに、冷然とその事実を突きつけた。

 

 即ち


 「長老......」

 「な、なんだいイズ」

 「忘れて、ましたね?」

 「! ......っそ、そんなことあるわけ」

 「忘れて......いましたね?」

 「..................はい......忘れていました......」

 

 ザゲンはイズの威圧的な問いかけに、呆気なく屈した。

 イズは嘆息を漏らした。


 「はあ~、若干ボケが回ってきたかと思ってましたが、まさかここまでとは」

 「......スミマセン」


 意気消沈するザゲンを見て、イズはまた大きく嘆息し、話を戻した。


 「それで、さっき言っていた子達でいいんですね?」

 「ああ、日頃あの子達の頑張りは見てきたし、どうせ全員狩り始めは経験して貰うしね」

 「あれ、じゃあ何で忘れていたんですか?」

 「......、............、..................、..............................」

 「え、まさか、狩り始めの日が明日だったことすら忘れていた、なんてこと」

 「..............................................................................」

 「え~」


 イズは頭に手をやった。まさか長老がここまでボケていたとは思わなかったから、心底呆れているのだ。

 むしろ、よくここまでこの集落の長老でいれたなと、心の中で密かに称賛できる。


 気を取り直して、イズは長老と予定を詰めていく。

 そうして後の9つ



   §



 「さて、全員集まったかな?」

 「はい、長老」


 集落の中心に位置する巨大な樹の前に、数にしておよそ十の人影が有った。

 その中の二つ、長老ザゲンとその子孫シオンだ。

 ザゲンはシオンの答えに満足げに頷き、シオンに手振りで子供たちの方に行くよう示した。

 シオンは素直に子供たちの方へ行き、子供たちを整列させ座らせた。

 ザゲンはその様子を見て顔に物憂げな表情を見せ、直ぐ後にはいつもの柔和な表情を浮かばせた。

 ザゲンは整列した子供たちの前に歩き出し、目の前の子供(ラート)の三歩前に立った。

 仁王立ちであった。

 ザゲンはゆっくりと口を開く。

 

 「諸君、明日は諸君らが狩りを学ぶ、学び始める日だ。この集落に生まれついたが最後、決して逃げられぬ掟だ。だが諸君、諸君等はこれから最低三年間続ける事となる狩りは、決して諸君等の人生の損失にはならない事をここに誓おう。十二柱の最高神と我が真名にかけて······まあつまり、最低三年間やるけど頑張ってねって事だよ」


 僅か五歳の子供たちに聞かせるには、少しばかり難しい言葉を繰り、何時にも増して真面目な表情と声で子供たちに語りかけたザゲンは、それが終わると直ぐ様相好を崩し、噛み砕いて説明した。


 子供たちの反応は十人十色で、中には狩り始めなどしてたまるかと言った者も居たが、誰しも心の奥底で、明日から始まる「狩り」という行動に心躍らせていたのだった。





 






















 それが一人の少年に一つの死を与えるものであるとは、誰も考えはしなかったのだ。

 何故なら彼は、



 伝説の竜の息子なのだから。

次回、少年は狩りに出る、この狩りを通して、少年は大きく成長することが出来るのか。

不穏な空気が漂う中、少年は見事、危機を乗り越えることは出来るのか、大丈夫だ、少年には主人公補正がかかっている、それに、昨今の流行りに乗った俺TUEEEEEEまである、これで少年に何かあっても安心だ。

次回、ラート·ヴェリオン死す

ハントスタンバイ

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