贈り神君
短いです
贈り神は神父のような格好をした男で、金色のサラサラの髪に、吸い込まれるような金瞳と見る者に安心を与えるような優しげな整った顔は、笑顔で此方を見ていた。
だが、俺はこいつが胡散臭かった。
まず最初にこいつが纏う雰囲気、まるで霧の様に掴み所の無い感覚を覚える。俺の知り合いに同じような奴がいるが、あれは無駄に馬鹿なことばっか考えてるから把握が出来ないだけだからな......多分。
次にこいつが自分の事を贈り神と言ったこと、つまり、今も泣きわめいているこの子を此処に贈り付けた張本人だと言うことだ。こいつは自分がこの子を何処かから拐って来て、此処に贈り付けた誘拐犯ってことを認めたと言うことだ。
以上の点から、俺はこいつを胡散臭く思った。
さて、そんな贈り神だが、俺が思考を巡らしている間黙って待っていたようで、俺が意識を向けると喋り出す
「さて、皆様驚かれてますでしょうが、まず私の話を聞いてからお願いします」
ムッ、横暴な奴め、自分勝手に贈り付けていきなり出てきて話を聞けだと? ......うん? 皆様? こいつ皆様って言ったか? こいつは他の誰かにも同じメッセージを送ってるのか? しかも、恐らく贈り物(者?)付きで、一体誰だ? まあ予想が付くけどね。
「私はこのたb......命名神様!! 止めてください!!」
おいっ!! よりによってフィロティーに何か贈ったのか!?
あ~あ、こいつ死んだわ、贈り神で神だとしても、あいつ最高神だからな。
それに加えて名前言っちゃってるからなあ、命名神、或いは真名神と呼ばれるフィロティーは、自分に名前を名乗った相手を、数分の間絶対支配ができるからな。多分その力を利用して目の前に顕現してるだろ。
それはそうと、フィロティーに何か言われているのか、贈り神はごめんなさいごめんなさいと謝罪の言葉を連呼して虚空へペコペコ頭を下げている。......あっ、土下座した。
「申し訳ありませんでした!! もうしません!! 信じてください!!」
えっ、そんなに? そんなに怒られた?
「でも!! 一度贈ったのを回収する事は無理ですし、贈り物を他人に譲渡する事も放棄する事も出来ません、しようとしても出来ません。それが権能ですから」
えぇ、贈り返せないのかよ、無駄に強いな、その権能。
普通、最高神の行動を制限出来る程の権能は無いぞ。
多分、その権能だけに力を注いだんだろう。
あ、贈り神君が正座で何か書いてる、多分机で書いてるんだろう、膝のちょい上に書いてる、何を書いてるんだろう、筆跡を見てみると俺は絶句した。え? 卑小なる云々偉大なる命名神様云々ってなに?
「ええと、そろそろ許してあげなよ」
思わず声に出してしまった、これが相手に届かなければ独り言になるが、贈り神のメッセージ同封はアルブのシステムに介入して作ったのだろうから、アルブにサブアカウントを貰った此方からの介入は可能だろう、実際もう介入出来たからな贈り神君は驚いたのか膝を恐らく机に打ち付けた、うわあ、結構痛そう。
「し、神竜王様!? うぅ、申し訳ありません、もうしません、許してくださいぃ」
すっげえ可哀想なんだが、フィロティーお前何をした。
「えぇ!? アルブ様!? ひいっ! 調子に乗りすぎました、お許しください!! ..................え? 違う? 気に入った? ありがたき幸せ、私カルゼツ貴方に一生の忠誠を誓います!!」
えっ? 気に入られた? 贈り神君の言ってる事から推理すると、アルブが贈り神君の前に顕現して多分、......スカウトしたのかな? もしそうだとすると、贈り神君は大出世をしたね。アルブの部下になるって事は、そのまま最高神の部下になるって事だからな。
まあ、それはいい、おめでとうですむ、..................だけどな、贈り神君、色々聞きたい事があるんだよ、聞いても、良いかな?
「贈り神君、少し聞きたい事があるんだけど良いかな?」
贈り神君はビクッと体を硬直させた。
さて、質問タイムだ。