赤ん坊
初投稿です、かなり更新速度がいると思いますが、宜しくお願いします。
サータモア大陸の南西部に位置するエンプロ王国、その更に南に、リレットの森は在る。そして、リレットの森の更に奥深くに、「神竜王の迷宮」は在る。
神竜王の迷宮とは、文字通り、神竜王と呼ばれる神が創った迷宮で、700年程前までは、そこに多くの開拓者が訪れ、魔物を狩り、経験を積んでいた。
神竜王は戦いを司る戦神にして、比類なき最強の戦士であった。
そんな神竜王が創った迷宮だ、難易度は当時の最高ランクのA++で、多彩な環境と魔物で、開拓者達を苦しめた。
それ故、「神竜王の迷宮」は開拓者達の登竜門として扱われ、迷宮の1階層でも攻略出来れば歴史に名を残せた程という。
だが、ある時から迷宮内から湧き出る魔力の量が異常に増えて、唯でさえ強い魔物がより強くなり、当時魔物が多く生息していない、とされていたリレットの森にも魔物が溢れかえり、リレットの森近くの村や町に被害を及ぼし、神竜王の迷宮は危険とされ、それきり迷宮に入る開拓者はいなくなり、やがて、迷宮は忘れ去られた......
§
「神竜王の迷宮」の最深部、迷宮の主が鎮座する場所。日の光の一筋も届かない黒い神殿
他より数段高い台座の上で蹲るように、その日も、神竜王ザラヴェリオンは、退屈と孤独を満喫していた。700年の間に、未だ一柱と一人しか迎えたことのないこの場所で、また1日の始まりを迎えた。
彼は飽き飽きしていた。700年の間魔族含む国家間の大きな戦争が18、9度、小さなものは数知れず。内乱も多々あった、およそ戦と呼ばれる全てを今まで見てきた神は、700年の間自分に匹敵する実力を持つ者が現れない事にうんざりしていた。
自分の居る迷宮も、魔物達が強くはなっているが、それでも、自分に届きうる者は現れなかった。
自分に届きうる者はもう現れないのか、自らと対等に渡り合える者は居ないのか、そう思いながら又時の流れに身を委ねるのか、と更にうんざりしながら意識を手放した。
数刻後、ザラヴェリオンは空間の揺らぎを感じ目覚めた。
一瞬、知己である一柱か一人のいずれかが、訪れて来たかと考えたが、すぐにその考えを打ち消す。
空間の揺らぎが荒く、其処から放出される魔力の量も多い。放出される魔力の量が多いのは、決して魔術師の腕が良いことにはならない。
彼の知己は、両方高位の魔術師である。しかも片方は空間魔術で魔王と戦う程である。間違ってもこんな稚拙な空間魔術は使わない。
それ故に、ザラヴェリオンは警戒する。稚拙でも、此処まで来れるほどの魔術師だ、警戒するに越したことは無いだろう。
と、身構えたザラヴェリオンだったが、その警戒は直ぐに解かれた、それと同時に首を傾げる。
(……赤ん坊?)
空間の揺らぎから出てきたのは、産まれて間もないだろう赤子であった。
人間族の子で、白い布にくるまって、大きな声で泣いている。
ザラヴェリオンはこの現象に覚えがあった。
神隠し、他には、取り替え子等と呼ばれるものだ。
だが、ザラヴェリオンが知る神隠しと、今起こっている現象は、似て非なるものだった。
神隠しとは、神族や妖精の類いが、自らの領域に迷いこんだ子を拐う事を言う。この場合、相手が赤子(赤子が神域に入る事はまず出来ない)である事と、自ら拐って居ないことで神隠しではない、とザラヴェリオンは結論付けた。
そして、取り替え子だが、これもまた違う。取り替え子とは、悪戯好きの妖精や、人間族の子を可愛がりたい妖精族が実親から産まれて間もない子を密かに拐い、代わりにトロールやフェアリー、エルフの子等を親の元に置き去りにする事で、取り替え子は、このトロールやエルフの事を指す。これは、まずザラヴェリオンに子供が居ないから違うと言える。
では、これは一体どんな現象なのか、恐らく、この状況は異常だ、と、ザラヴェリオンは考えた
だが、何をすれば良いのか皆目見当も付かず。ザラヴェリオンは赤子を見つめながら考えだした。
§
あはは、可愛いなあ
俺は、目の前に居る赤ん坊を見つめながら、そんな事を考えていた。
プクプクした指とか、腕を振り回す仕草とか、本当に可愛いなあ。
って、違うわッッッッ!!!!!!
赤ちゃんを愛でるのは後だ後、今は情報が欲しい。
まず、この子は何者だ?
俺は、泣きつかれたのか居眠りしている赤ん坊に、「鑑定」を掛けようとした。「鑑定」というのは、あらゆる物体に対して、その情報を「鑑定」のレベルに応じて見ることが出来るというスキルだ。スキルについては今は割愛する。
<神位階第3位の権限にて、対象のステータスがロックされています。神位階第1位階の権限を行使しロックを解除しますか? Yes/No >
無機質な女の声が頭の中で響いた。
この声は迷宮の外に住む種族に、世界の声と呼ばれるものだ。これは世界に一定以上の影響を与えると聴こえる、神託のようなものと認識されている。
ちなみに、このシステムを作ったのは、ある研究に人生を捧げている奇特な転生者で、今は神だ、名は賢神アルブ、彼はこれをシステムメッセージと呼んでいる。なので、そう呼んでいる。
それにしても、神位階第3位かあ、こんな事する奴居たっけなあ。というか、こんな事出来るのって、神位階第1位の奴等でも少ないよなあ。
というより、なんでロックをかけてるんだ?
......まあいい、取り敢えずYesを選ぼう。
<神位階第1位の権限を行使し、ロックを解除します。............完了しました>
ロックが解除されたようだ、さて、ステータスを見てみるか。因みにステータスというのは生物がもつ能力が可視化されたものだ。
俺はまた赤ん坊に、「鑑定」を掛けた、瞬間俺の目の前に青白く光る半透明なボードが出てきた。
これはステータスウィンドと呼ばれるもので、これもまた賢神アルブが創ったシステムだ。そのステータスボードにはこのように載っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:未登録
種族:ヒューマン
LV:1
性別:男
年齢:0
状態:飢餓
HP:7/8
MP:4/4
SP:0/10
筋力:3
耐久:4
魔攻撃:2
魔防御:3
俊敏力:1
器用:5
知力:4
精神:1
幸運:26
[装備]
[スキル]
[固有スキル]
[戦闘系スキル]
[耐性系スキル]
[通常スキル]
[特殊スキル]
[魔法]
[固有魔法]
[属性魔法]
[特殊魔法]
[適性]
[戦闘系スキル適性]
「剣術の天才」「槍術の天才」「投擲術の才能」「鎖鎌術の才能」「弓術の才能」「盾術の才能」「格闘術の才能」
[魔法系スキル適性]
「水魔法の天才」「空間魔法の天才」「光魔法の才能」「土魔法の才能」
[通常スキル適性]
「解体の才能」
[特殊才能]
「努力の天災」
[称号]
「伝説の竜の息子」「贈り神からの贈り物」
[加護]
「贈り神の加護」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
............はっ!!??
やべえ、一瞬意識飛んだ。
何だこれ、特に称号、何でこんなに持ってるの!? 伝説の竜ってもしかして俺か? 一応「鑑定」掛けとこ、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「伝説の竜の息子」
古より世界に君臨した戦いを司る神竜の息子に与えられる称号
効果:戦闘系スキルの成長に補正
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うん、俺だ、俺だったよ。
........................何でだよ!!!!????
何でこいつ俺の息子になってんだよ。
訳わかんねえよ、もういいよ、次いこ次、
俺は次の「贈り神の贈り物」に「鑑定」を掛けた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「贈り神の贈り物」
贈り神から誰かへ贈られたものに与えられる称号
効果:「贈り神の加護」を付与
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フム、贈り神なんて神居たっけ?
「贈り神の加護」を「鑑定」すれば何か解るかも。
よし、「鑑定」だ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「贈り神の加護」
効果:幸運+20 術式付与
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
......術式付与??
何だそれ?幸運+20は解るが加護ってこういうのじゃ無いだろ。
その時、頭を抱える俺の目の前に展開している、ステータスボードの術式付与の項目が点滅し出した。
「今度は何だあ!!??」
何だか、あの子が来てから驚いてばかりな気がする。
そんな俺に構わず、点滅の間隔は狭まり、強烈な光を発している。そして、一際大きな光りが辺りを照らし、驚いたのか赤ん坊が泣き始め、何から手を着ければ良いのか迷う俺に答える様に、光りが収まった。
収まった後、そこに居たのは青白い光を放つ半透明の小人だった。
体長は20センチ程で、小人というよりは普通の人間をそのまま小さくしたような体型だ。
それは優雅に一礼をし、言葉を発した
「皆様初めまして、贈り神ルフカと申します」
恐らく俺にあの子を送り(贈り)つけたであろう贈り神であった。
2016 5/6改稿
贈り神の名前をカルゼツからルフカに変更
贈り神君の名前があれだったので変えました。
2017 8/04 改稿
冒険者を開拓者に改名しました