マオ様って誰だ
pv、ブックマークありがとうございます。
言われたことがちょっと意味わかんなすぎてフリーズした。
「……!! も、申し訳ありません! わ、私としたことが間違えておりました……」
あ、はい、そうですか。どんな間違い方をしたら人を食人嗜好に仕立て上げることになるんだ……。
「生贄ではなく、依り代でしたね」
「ん!?」
「……でも、もう魔王様は身体を持っているようですし……やっぱり食べてもらうぐらいしか……」
依り代って何の話!? マオ様って誰だ!? そして食人嗜好説がまだ消えてなかった件。色々と突っ込みどころはあるけど、もしかしたらただ単にちょっと頭が混乱しているだけかもしれない。うん、きっとそうだそうに違いない。もしくは腹が減っているのか。
わたしはとりあえず持っていた生魚をカウィールの口に突っ込んだ。
「んぐっ……、っ!? なにこれ生グサッ!?」
「……私は、お腹がすいたらとりあえず美味しいものを食べるべきだと思うよ」
そりゃそうだろう。さっき捕ったばっかりだしまだ鱗とってないし一回地面に落ちたからおまけに土の味もすると思う。
ぺっぺ、と吐いているカウィールを横目に、そこらへんに落ちている木の枝や枯葉を集めた。まずは焚き火をして、魚を焼いて、食べさせるべきだろう。さっき触れたカウィールの身体は異常なまでに冷たくなっていた。身体を温めて、お腹一杯になってからじゃないと話しにならなそうだし。
燃やすものはあるけど火種はどうしようか。火を起こす方法は知識としてはあるけれどなんかすごく時間かかりそうだし……と思っていたらいきなり目の前に大きな火柱がたった。轟々と燃え盛る、真紅の炎。
びっくりしすぎて声も出ない。今、いったい何が起きているんだ。
【業炎魔法を取得しました】
【業炎耐性を取得しました】
【火炎耐性が業炎耐性に統合しました】
…………え、なに、いきなりすぎてほんとに理解できないんだけれど、今、魔法って聞こえた気がする。
この世界、魔法なんてファンタジーなものが存在しているの?
とりあえず今するべきことといえば
「その魚焼くから、かして」
いつ消えるか分からないから今のうちにこの火柱で魚を焼くことだった。
結果から言って、火柱はちょっとしたキャンプファイヤー程度の大きさになって燃え続けていた。鱗を剥いだ魚を焼いてカウィールに食べさせてから聞いた話によると、この炎は私が魔法で出したものに間違いないらしい。しかも私の魔力を燃料に燃えているから、薪を集めたりしなくても良いんだとか。なにそれ便利。
あと私はマオじゃなくてエルミシアって名前だといったら、少し考えた後にいい笑顔で「わかりました! マオー様!」とかいってきた。だからエルミシアっつったろお前の耳はどうなってんだ。
そのあと何度も恐れ多いだのなんだのと言っていたカウィールに言い聞かせ、最終的には「エルミシア様」と呼ぶことに決着がついた。本当は様付けもやめさせたかったけど、そこは譲れないとかでこっちが負けた。なんでこんなぼろ布纏った幼女に様付けすることにこだわるんだ。解せぬ。
「まあ私の呼び方はいったん置いておくとして、いろいろと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何なりと聞いてください、エルミシア様! お……私が答えられることであれば、何でも答えます」
「あ、うん、とりあえず無理に『私』って使わなくていいよ。慣れてなさそうだし」
「はい!」
ほんとなんで彼は私に対してしっぽを激しく振らんばかりになついてきてるんだろう。名前をつけたからか、私もカウィールに対してこの短時間で愛着のようなものを感じるんだけどね。