VS魔術師&騎士&熊男 参
私生活のゴタゴタが収束に向かいつつあるため、更新再開して行きたいと思います…!
地面から射出してきたのはやはりというか、熊男だった。しかし奴にとって今の攻撃をよけられるのは想定内だったらしく、土の弾丸の追撃が飛んでくる。さっき私の腹に刺さった土の棘と同じ形状をしているから、刺さりどころが悪ければ一発でアウトだろう。
私はもう逃げる気満々だというのにこの目の前の人間たちはそれを許容してくれそうにない。
それにしても、土に潜ったり入ったりできる能力をもっているこの熊男は厄介だ。
最悪人間全員を風の防壁の中に閉じ込めて足止めし、その間に逃げようかと思っていたのだが地面から出てこられてしまうのでは意味がない。本当にどうしてやろうか。隙をついて足の一本や二本切り落として逃げようか。防御面で言えば風の防壁は熊男の土の棘の攻撃に対して不利だが、攻撃するとなれば話は別だろう。風の刃は空気の刃だ。相手が気付く前に間近から刈り取ってしまえば問題はないはず。
想像するのは少女の記憶にある《医療せんたー》の庭師が持っていた木を刈り取る道具の刃。あれは面白いぐらいスパスパと木々を刈り取っていたから、人間の足もスパスパ刈り取ってくれるだろう。それに今の熊男は土から完全に出てきていない状態で、まるで雑草だ。ちょうどいい。
飛んでくる土の弾丸は風で方向をそらせて事なきを得るが、カウィールは無理やり横抱きにして飛び上がったせいもあり、変な体勢にさせてしまっている。一度体勢を立て直したいところだ。
ネイヴィたちの炎の攻撃がそこまで効いていないのを見る限り、私のも効果があるとは思えないけど目くらましぐらいにはなるだろう。一秒か二秒、それだけあればカウィールの持ち方を直してトンズラする事ができる。
「『防極炎』」
風と違い、炎の壁はこちら側まで見通せない。円形のイメージで使っていた風の防壁とは別に、炎の防壁は板状のイメージで精製したが上手くいったようだ。
「なっ、炎の壁……!? ユアン殿!」
「あぁ、わかっている!」
直ぐにでもさっきの炎と同じように真っ二つに割かれると思っていたのだが、予想に反して壊される気配がない。一瞬だけ炎の壁が揺らいだようだったけれど、特に問題もなく煌々と燃え盛る盾となっている。
予想に反して人間の足止めが一応できているみたいだし、もうこのまま逃げてしまおうと思った時、グンッと強い力で上に引っ張られる感覚と、悲鳴のような叫び声。
「全員屈め!!」
リーン……と静かに鳴る鈴の音と共に、目下に大きな水の塊が通った。
「も……森の魔神……!」
水の塊が飛んできた方向を見れば、荒れた湖の上にかつて見た水でできた牡鹿がいた。それはじっと魔法使いたちを見ていたようだったのだが、それをちゃんと見る前に私の体はぐんぐんと湖の上を進み、離れて行く。
バタバタと凄まじい羽音が間近からいくつも聞こえる。ジオークたちだ。
馬鹿みたいに大きいとはいえ、ちまっと生えた小さな翼だというのに、私とカウィールを足で掴み上げて飛んでくれているようだった。そして速度が本当に速い。あっという間に人間や家、水の牡鹿がみえなくなった。
「み、みんなありががぼぼぼがぼがぼ」
お礼を言った途端足を離すなんてなんて照れ屋だこの野郎!
いつの間にか気絶していたらしいカウィールを離さないよう抱えたまま、私は激しく波打つ湖へと沈んでいった……




