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VS魔術師&騎士&熊男 弐

たいっへんお待たせしました?

「いっ……!?」


 地面から突如現れた巨大な土の棘に脇腹を貫かれた。

 もしカウィールの方を向いていなかったら脇腹にかすった……というよりは刺さった程度では済まなかっただろう。

 驚きと痛みに気を取られたせいで弱まった風の防壁から熱気が伝わってくる。


 あまりの熱量に思わず三歩ほど下がれば、さっきまで私が立っていた場所から連続して土の棘が出現した。

 あっぶな!

 吃驚しすぎて今度こそ防壁は完全に崩れてしまった。

 雛たちの吐く炎に近い位置のこの場所はさすがに肌が焼けそうなほどの暑さなのでさらに数歩下がった。

 炎の向こう側は全く見えない。


「エルミシア様! 大丈夫ですか!?」

「うぅ……大丈夫っちゃ大丈夫だけど、大丈夫じゃないといえば大丈夫じゃない……」

「どっちですか!? って、お腹から血がでて……!」


 完全に解けてしまった防壁の中からカウィールが私のところまで来た。

 その数秒後には、恐ろしい事にさっきまでカウィールがいた位置にまで土の棘が現れた。

 もう少し移動するのが遅かったら、私もカウィールもあの棘にやられていただろう。

 ……まあ私はもう刺さった後だったけどね!

 

 明らかに脇腹に風穴空いちゃってるけどじくじくした痛みだけで、寒気がするとか立ち眩みとかは感じない。普通ここまでの怪我をしたら立っていられないとかなりそうなところなのに。

 もしかしたら脳内でなんかヤバイもの分泌していてそれのせいで痛み以外のものを感じなくなってるだけかもしれないけど、今はラッキーだと思って行動を起こそう。


 そう、戦略的撤退だ!



 ……何て思っていたら突如目の前の炎が裂け、一番強そうな魔法使いが向こう側で両手を上に広げている姿が見えた。

 どっかで見たことのある図だ。割っているのは炎じゃなくて水だったはずだけど、どっかで見たことある。多分少女の前世で見た、教本に乗っていたやつだ。

 嫌な予感しかしない。


 案の定来たのは、魔法使い二人による火の玉の弾幕だった。


 急いでカウィールを横に突き飛ばして、カウィールの方に風の防壁を張る。私一人だったら飛んだり跳ねたりで避けれるけど、カウィールはそうはいかない。体術を教えてもらった時に、カウィールの身体能力がそこそこだということを知ったのだ。

 それに、今集中して作れる結界は一つだけだ。作ろうと思えば二つ作れるだろうが、どうしても性能が下がってしまうだろう。二人とも共倒れ何てことにはなりたくない。


 カウィールの方にある程度の安全を確保して、私自身は意外と見切れる火の玉を避けつつ、避けきれないものは小さめの風の盾のような物を作って防御しては消してを繰り返す。


 ちらりと傍を見れば、ジェネラルモックの雛たち五羽と人間五人がほぼ一対一で戦っていた。

 パッと見た印象としては、戦っているというより雛たちに人間が遊ばれている感がするけども。


 ある程度この人間たちを翻弄してからなら逃げられるかもしれない、という希望が見えてきた。

 見えてきたのだが、何か引っかかる。何だ……何が引っかかってるんだ…………あっ!!



 引っかかりが何なのかにようやくたどり着いて、今ならまだ間に合うかと足を防壁の方に向かわせる。

 戦闘中に的に背を向けるなんて自殺行為に等しいけど、緊急事態だから仕方ない。

 火の玉を気配だけで避けて、たった今作ったばかりの風の防壁を崩し、カウィールを横抱きにして斜左上方向に飛んだ。


「エルミシア様、俺も戦います! 戦わせてください!」

「分かったけど後でね!」



 小柄とはいえ自分より一回り以上大きい男を抱えて飛び上がれるか不安だったけど、それも杞憂に終わった。すごく……軽いです……。



「『アース』…」


 そんなくだらない事を考えていたら、地中から聞こえた声と同時に、突如地面が大きなトラバサミのように変形した。直後、飛び上がったすぐ真下の空間で、ガンッと鉄を打ち据えるような音を立ててその大顎が閉じられた。

 


「…『ファング』!」



 ……右手を上に突き上げてかっこよく地面から射出してきたはいいけど、わたしに避けられて良かったのかな?

 ここ空気読んで当たっとくべきだった?


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