VS魔術師&騎士&熊男
「……これはどういうことだ」
色黒でやたらと巨体な……熊みたいな男が唸るように言う。
どういうことかだなんて知りたいのはこっちの方だ。
何で! 外にも! 人がいるんですか!?
思わず敬語になっちゃうぐらい驚いた。
もともと結界の中になぜかいた人々のうちのまだ立っている騎士然とした男と、結界の外にいた熊みたいな熊男と、魔術師っぽい人たちの中でも特に高そうなマントを羽織った男は特に強そうな気配がしていて、思わず一歩後ずさる。
十四人の成人男女対一人の幼女とかどんな状況だよ。正確には昏倒状態のが何人もいるし、カウィール達いるから八人の成人男女対二人の子供・鳥五羽か。どちらにせよいい年した大人が子供と動物を虐めるというひどい図が出来る。
「……新築祝いパーティーなんて招待した覚えも開催した覚えもないんだけど?」
「しゃべっ……!?」
「ん?」
……なんか今、喋ったことに驚かれた?
いやいやさすがにそんなことに驚かれはしてないだろう。幼女だって喋るし。人間だもの。
「『ウィンドバレット』!」
そんなことを敵前で考えていたせいか、風の弾丸が飛んできた。ちょっ、危な!
まあ何事もなかったように防壁が弾いてくれましたが。
弾かれた弾丸は昨日の火事の後処理地をがりがりと削りながら消滅した。うぅーん、あそこの土は不本意ながら昨日耕したようなもんだからやわらかいんだろうけど、それでも結構な威力はありそうだ。手足の一本や二本飛んで行っちゃいそう。
そんな弾丸を軽く弾く風の防壁、もはや《ちーと》ってやつだな。
「わ、私の『ウィンドバレット』を弾くなんて……!」
攻撃をしてきた女の魔法使いが信じられないものを見るような目を向けてくる横で、一番強そうな気配の魔術師が片手を上げて全体に指示を出した。
あっ、これやばいやつかも。
嫌な予感というのは良く当たるもので、ゴウッと音を立てて巨大な火の玉がこっちに向かって飛ばされた。今まで飛んできた火の玉の魔法なんか比じゃないレベルのものだ。
風の防壁で防ぎきれるか……と心配したのもつかの間。
「ピィピッ!」
「グゥー!」
鳴き声から察するにジオークとネイヴィが、前に出てきて同等の火の玉……いや、火炎を吐いた。火炎放射器みたいに。
……君らさっきまでカウィールと一緒の防壁の中に入ってなかったっけ!? どうやって出たの!?
昨日の事故の時のように防壁の外側は炎でもはや何も見えなくなっている。
ジオークやネイヴィたちの雛二羽が焼き鳥になるとはなんとなく思わないけど、それでもさっき見た男たちへの不安や嫌な予感は拭えない。
炎の魔法は私も使えるし、煙幕代わりに炎を出しながら逃げるのも一手かもしれない。
……うん、三十六計逃げるに如かずとか戦略的撤退とか言うし。
数の差とかはどうにかなる気がするけど、どうにも今の私では彼らに勝てる気がしないのだ。君子じゃないけど危うきにはなるべく近寄りたくない。
それに作った家を壊されてしまった今、ここにとどまる理由はない。
それにしても、髪が黒いというだけでこんな見敵必殺な扱いを受けるのか。
正当な理由を聞いた訳ではないが、今現在で命を狙われそうな理由はそのぐらいしか思いつかない。
もし私の見解があっているのだとしたら、それこそ会話の余地もなく首と胴体が永遠のお別れを迎えてしまう。
そう考えると、本当に戦うか逃げる以外の道はないだろう。
既に密猟者たちを焼き炭にしているから無駄な殺しをしたくないだとか甘っちょろいことは言わないが、下手すれば私達が焼き炭になりかねないこの事態からは早くおさらばしたい。
カウィールの方を向いて、撤退を身振り手振りで伝えようとしたその時。
何かが私の横腹を掠め、鋭い痛みが走った。




