三歳児でも出来る!簡単住宅建築
「ふんふんふふーん」
今の私は機嫌がいい。
何故かって? ふふふ、なんだかんだと聞かれたら答えてやるのが世の情け!
広大な森付き木造一戸建てが完成したのだっ!!
えー、完成までの所要時間、体感でおおよそ二十分でした。実際日の位置がたいして傾いてなかったからそのぐらいだと思う。
もうね、ほんと最初っから木で作ればよかったと後悔している。
まさか床板と壁になる木材を風の魔法で切ったり整えたりして、ベースになる太い木にブスブス刺してくだけで家になるとは思わなかった。
この言い方だとかなり雑な家とも呼べないようなモノかと思うかもしれないが、実際に出来たのはぱっと見オシャレでさらに家具まで設置されたコテージ風の建物だ。しかも図らずとして高床式になった。
ドアを開けるのを忘れていたのでそこはすでにくり抜きにしてついでに窓も作って完成した。ちょっと風通しがいいけど、雨とか降ってきたら風の魔法でこれもどうにかするから問題ない。
んでもって本当に土の家が無駄足すぎて悲しくなる。
あんなに何度も何度もイライラするほど土壁を押しかためては崩れて、形成しなおしては押しかためてを繰り返した時間を返せ。
既にカウィールは家の中に作ったベッドのようなものに移動させてから、雛たちと一緒に寝ている。
どうやら私が家を作っている間に少し熱が下がったようで、顔色が幾分良くなっていた。それでもまだ、漸く峠を越えたと言ったところか。
家も出来たし、カウィールもまだ様子見とはいえ熱が下がった。ようやくひと段落ついたみたいだ。
……流石に今日は疲れたな。
まだ昼過ぎぐらいだし、私もちょっと昼寝しよっと。
何時もは眠気もあんまり感じないし、一、二時間目を瞑る程度でスッキリしていたけど今日は魔法を色々使ったからか、少し眠い。
枕も布団も無いけど、代わりにふっかふっかな雛たちがいる。しかも生きた湯たんぽ状態。
くり抜いた窓から入ってくる日差しもいい感じで、余計眠くなる。
あぁ、そういや雛たちの名前つけなきゃな。
なんか考えないと……まあ、起きてからでいっか。
おやすみなさーい。
「……シア……ま……」
「プピー……」
なんか声が聞こえる気がする。
でも私はまだ眠いんだ。手をひらひらして後で起きると伝えた。
「……ミシアさ……エルミシア様!」
「ん……うー……んんん……」
「ピャー……ピャー……」
だからまだ眠いって……。
「エルミシア様! 起きてください、エルミシア様!!」
「……まだ眠いって言ってんでしょぶっふぉ、ぉおおおお!?」
「ビッ!?」
私の主張を聞け! と声を荒げ用とした時、私の顔にはモフモフした巨大なものがぶつかって跳ね返った。
なんだこれ!?
藍色の、巨大な毬藻……だと?
いや実際濡れてたりしないどころかふわふわの手触り最高な毛玉みたいなんだけども。
何処となくっていうかどっかで見たことあるっていうか……もしかしなくてもこれは……
「……雛たちなの、か?」
「エルミシア様、そこにいらっしゃいましたか!」
「あ、カウィール……もう起きて大丈夫なの!? 無理はするな、寝てていいんだよ! ……と言いたいとこなんだがベッドが巨鳥で埋まってるよな」
ピィピィ、ピャッピャとアピールしてきているのだろう毛玉もとい雛たちは、羽で玉の様にまん丸になっている。
かろうじて嘴がちょこんとでているぐらいだ。
まあ、これはこれで可愛いからよしとする。
「俺も起きたらこのように囲まれていました。エルミシア様が埋もれているのが見えたのですが、そちらまでたどり着けなくて……。風邪の方は、起きたら喉の痛みももうなくて、ちゃんと喋れるようになっていました」
「うーん、でもまだちょっとおでこ熱いよ。今日明日は様子見したほうがいいんじゃないかな」
「でもそんな何日もエルミシア様にご迷惑をかける訳には……って、そうだ! この家どうしたんですか!? 昨日の夜一度起きた時に寝ているのが草の上じゃなくてすごく驚いたんですよ?」
「ああ、カウィールが風邪を引いたのはきっとちゃんと休めるところが無かったからだと反省した私が作ったのだよ。……って、夜?」
「つ、作ったんですか!? この規模の家を!? 見つけたとかじゃなくて!? というかどうやって!?」
驚くカウィールの反応は予想通りで嬉しかったが、なんだか今捨て置けないことを言った気がする。
「ほ、本当だ、普通の家とかよりちょっと床がザラザラする……」
「カウィール、今、夜に起きたって言った?」
「え? ああはい。暗かったけど窓から月明かりが入ってきていて、エルミシア様がよく寝ているのがわかりましたよ?」
「おぉう……」
な、何てことだ……もっと内装とか家具とか設置して「うわぁこんなところまで作ったんですか!? エルミシア様凄い! 抱いて!!」的な反応をカウィールにしてもらおうと思ってたのに!
寝ちゃうなんて私の軟弱者!




