表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

VS密猟者 弍

「なっ、ジェネラルモックの雛だと!?」

「おい騎士さんよぉ! 話が違うじゃねえか!」



 男たちは木陰から出かけた私の前に落ちてきた藍色の雛に意識がいっているようだったから、さっと身をもう一度隠した。

 どうやら雛の登場に動揺して気付かれなかったようだ。


 雛は昨日見た時より明らかに大きくなっていた。

 今は私の腰ぐらいまでの大きさになってるんじゃないだろうか。

 ……と、いうか口から火を吹くなんてことができたんだね、あの

 ピャッ、ピャッと鳴きながら火の玉を繰り返し男たちに吐き出す雛を木陰から覗き見ながら、きっと息をするように簡単に魔法が使えるんだろうな……と思ってからふと気付いた。


 もしかしたら、私もこの雛たちのように魔素だの魔力だのを気にせずにやれば魔法を使えるのでは? と。


 

「お、俺は知らねえからな……ジェネラルモックなんてバケモン、相手に出来るわけねえだろ……逃げさせてもらうぜ!」

「なっ、まて、そっちは……」


「ピィピィ」


ゴウッ



 逃げようとした猟師らしき男の一人が、どこからともなく現れたもう一羽の雛によって焼き殺された。

 いつの間にか雛は五羽とも集まってきていた。うち、三羽が男たちを包囲し、二羽が私の横に来ている。



「えっ、あ、ちょっ!?」


 さあさあ行こうぜ! と言わんばかりに私の背中に体当たりして押してくる雛たち。

 ぐいぐいと押されて木の陰から出てしまった。

 二対の目が、私に向けられる。


 そのうちの片方を見て、私は気付いた。気付いてしまったのだ。





 ーーこれは、私にとっての害獣なのだ・・・・・と。




「『小炎ナルムフレン』」



 これは唾棄すべきもの。

 これは排除すべきもの。

 これは害をなしてきたもの。

 これは私が、私のもののために処分しなければいけないもの。


 恐怖は静かな怒りに書き換えられていく。



 雛と同じぐらいの大きさの火が、逃げようとした男に向かって飛んでいく。

 火の玉は男にぶつかるとその全身を包み込み、猛火となった。

 不思議なことに、全身を包んではいるが服は燃えず、男の肉体だけが燃えているようだ。



「あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"」

「ひっ」



 開けた口の中にも火の手が回って、内側から焼けていく。とてもじゃないけれどいい匂いとは言い難い。

 騎士然とした男が、恐怖で引きつった声を出す。


 そうだ、私は恐れられるべきであり恐るべきではなかったのだ。

 というか、私は何でこんなものに恐れをなしていたのだろうか。


 さっき感じたはずの恐怖なんて跡形もなく、逆に恐怖を覚えたことに疑問さえ感じてしまう。


 まあ、いいだろう。今度からこんな小物に恐怖なんて覚えないはず。

 経験しないとわからないこともあるからね。

 さてと、それはともかくこの騎士然とした男はどうしようか。


 すり寄ってくる雛の頭をグリグリと撫でながら男の方を見て考える。


 ぶっちゃけこの男を生かしておこうが殺そうがどうでもいいのだが……。

 よく見れば結構良さそうな鎧を着けているな。下に着ている服も上等そうだ。

 あ、そういえばカウィールの服がそろそろ限界そうだったっけ。

 私の服を作ってくれたときに、自分のは作らないのかと聞いたら曖昧な笑いを浮かべて流されてしまったし。

 いっそこいつの服を引っぺがしてカウィールにあげるか、と思い至ったところで男が叫んだ。

 


「わ、我を導き空間を繋ぎたまえ! 『ワープ』!」



 眩い光が男を包んだかと思うと、次の瞬間には男が居なくなっていた。


 ……え? 何? 新手の自殺? さすがにそんなわけ無いだろうけども、え?


 目の前で起きたことについて行けず目をぱちくりさせていると、私を呼ぶカウィールの声が聞こえた。



「カウィール、こっちこっちー」

「エルミシア様! ご無事で……っ、ジェネラルモック!? エルミシア様、下がってください!」



 臨戦態勢に入るカウィール。

 それに対して私の頭に乗ったり背中にひっついたり足にすり寄ったりしながら「ハァン?」とでも言いたげに鼻で笑ってそうな雛達。

 な、なんというかシュールやでぇ……。



「大丈夫だよ、カウィール。この雛達、私に懐いてくれてるみたいだから」

「……ジェネラルモックを手懐けたんですか?」

「た、多分」

「…………」

「……カウィール?」

「さ、流石ですエルミシア様! 森の炎魔とも言われるジェネラルモックを傘下に置くなんて!」



 顔が引きつってますよ、カウィールさんや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ