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VSスライム

 朝になった。

 太陽の光は湖に反射して美しい輝きを放っている。

 そして鳥がチュンチュン鳴いている。そう、鳥がチュンチュン鳴いているのだ! あ、別に朝チュンしたとかそういうことではないよ?


 明け方見たあの水っぽい鹿状の生物(?)を見たあとから、理由は分からないけど動物の気配が増えた。鳥の鳴き声どころか虫の羽音一つしなかった昨日とは大違いだ。湖にも魚が多く泳いでいる。


 と、いうことはだ。



「朝ごはん、いっぱい!」




 未だ私にくっついて寝ているウィスプたちをポイポイっとこれまた寝ているカウィールの上に落として、湖に入る。心地よい冷たさが身を包んだ。



【水氷耐性を取得しました】



 上から見た時は小さい魚がいっぱいいたんだけど、できれば私は大きい魚を捕りたい。よってちょっと深く潜ってみることにした。

 簡単に潜って行けてしまうあたり、私の身体はつくづく三歳らしからぬハイスペックな身体能力を持っている。



 ひゅっ、と顔の横を通って行こうとした魚に、反射的に手が動いた。私の腕ぐらいの長さの大きな魚の体に、私の手が突き刺さった。

 うわなにこれ! と思う意識とは裏腹に、体が勝手に動いて水面へと浮上していく。もちろん片手は魚に突き刺さったままだ。



「……んっと、これは朝ごはんゲットなのかな?」


 水中から陸にあげた大きな魚を見て呟いた。

 とりあえず、次は森の幸だな!






 森の方も美味しそうな果実っぽいものやキノコを多く見つけられた。本当に、昨日はなんであんなに見つかんなかったんだって問い詰めたいレベルで色々見つけた。

 赤くて丸い木の実、黄色い紡錘形の果実、白くて細長いキノコ……なんかどっかで見たことあるような物が多い。


 ちゃんと食べられる物かどうか分からないから、昨日食べた赤と紫のまだら模様の果物と、白地に水色の斑点のあるキノコも探して持って帰ることにした。

 しかしまぁ、ちゃんと明るいところで見ると余計にこの毒々しい色合いが目立つな。


 

 なんて、手に持っていた果物に意識を向けすぎていたのが悪かったのか。

 上から落ちてきた物体に反応することができなかった。



 それは上から「べとっ」と落ちてきた。



「……? なにこれ…………っ! なんじゃこりゃあっ!!!」



 なにこの液体! さ、触った手がなんかベトベトするっ!

 ちょっと触れたであろう髪の毛もベトベトするっ!

 ぼろ布、もとい洋服は謎の液体が大量に付着したため死んだ。驚いて持っていた果実やキノコを全て地面に落としてしまった。


 急いで服を脱いで、上から落ちてきた謎の液体ごと地面に叩きつける。

 濃い水色っぽい液体状……いや、半透明なゲル状のそれは、モゾモゾと動きながら私の元・服を包んで、プルプルと震えている。



「もしかしてこいつ……スライム?」



 スライムといえば少女エルミシアの前世がやっていたファンタジー系の《げーむ》、《あーるぴーじー》によく出てきた最弱モンスターの代表例だ。そういえば私の知る今世でのゲームと少女の前世の《げーむ》では、認識の違いがあるみたいだ。

 

 そうこうしているうちに、プルプル揺れる半透明なゲルに包まれた布は十数秒間の間に跡形もなく分解・吸収されてしまった。

 とっさの判断で服を脱いで居なかったら、私自身もああなっていたかもしれないと思うとぞっとする。



 私は近くにあった木の棒を引っつかんで構えた。

 《げーむ》の知識通りにこのスライム(仮)が最弱モンスターだとするなら、私プラス木の棒程度でどうにか対処出来るはず。


 じりじりとにじり寄ってくるスライムに対し、適度な距離を開ける。

 急にピタッと止まったスライムを訝しく思いながら見ていると、なんとやつはスライムのくせにこちらに向かって飛び跳ねてきた。ちょっ、スライムに跳躍力があるなんて聞いてない!



「っ、らあぁぁぁあ!!」


 襲い来るスライムに向かって渾身の一撃を叩き込む。木の棒はスライムの脳天(?)にもろに入り、やつの身体を真っ二つに叩き割った。まさしく一刀両断である。



「ふう……つまらぬ物を切ってしまった…………と思ったんだけどなぁ」


 二分されたスライムを見ながらカッコよく決め台詞をはいたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 二つに分かれたスライムは、何事も無かったかのように二匹になって・・・・・・またプルプルと震え始めた。



「増えるとか、予想外すぎ……」


 体積が少なくなったからなのか、心なしかさっきよりも動きが早くなった気がする。

 また飛びかかってきたのを思わず持っていた棒で殴りつければ、また分裂して三体になってしまった。


 こ、これはどうするべきなんだ……。気の棒で叩くのはダメだとわかったし、手や足で殴る蹴るをしても同じことになりそうだ。何よりあんなベトベトしたの触りたくない。

 いっそのこと何度も何度も何度も何度も叩いて壊してすり潰して、襲いかかって来ることも出来ないぐらいにしてしまおうか。



 高速で叩きまくればいける気がする、と覚悟を決めたその時



「『プロミネンス』!」


 ゴオッと音を立ててスライム達が燃え上がった。



「エルミシア様ご無事ですか!?」


 慌てたように駆けてくるカウィール。え、もしかして……


「これ、カウィールがやったの?」

「はい、差し出がましいことをしてしまったかもしれませんが……スライムに襲われそうになっているエルミシア様を見たら、身体が勝手に動いていました」

「んーん、助かったよ。スライムどうやって倒せばいいかわからなかったから。ありがとう」

「これがスライムだということは知っていたのですか……? いいですか、エルミシア様。これも知っているかもしれませんが、スライムは飲み込んだものは全て強い酸で消化します。人でも、三十分もあれば完全に消化されます。さらに剣などで切ってしまうとその分だけスライムの数が増えてしまいます。ですがスライムの厄介なところはそこだけではありません。スライムは、高火力の火の魔法で体内の水分を蒸発させ、焼き殺す以外の方法では倒せません。なのでスライムを前にしたら直ぐに火の魔法を使ってください」


 おい誰だスライムが最弱って言ったやつ!

 魔法でしか倒せないとかなんかかなり強そうなんですけど!?



「そうですね、今後魔法を自由に使えるようになるために、スライムを倒すことを最初の目標としましょうね」

「……うっす、よろしくお願いします」



 こうして私はカウィールに魔法を習うことになった。







「ところで、あそこに落ちているのは食べると体内から発火して死に至るモウカタケと、皮には麻痺効果、果肉には猛毒が含まれているシニガ実ですよね。あれは五大毒物として恐れられているものなので、間違っても食べないでください」

「えっ」

「え?」



 思いっきり昨日食べちゃったんですけど。

ギリギリ13日の更新です。

魔法の詠唱を二重カッコにしました。

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