表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

大事なことを思い出す時すでに遅し

短編のものに手直しを加えた程度です。

一部設定変更しました。

「あ、あぁあああぁぁぁ!?」


 私、エルミシア・ルキフェル・アグラダイタスは大いに叫んだ。

 これでもかと言うぐらい豪奢なベッドでゴロゴロしながら部下に持って来させたジュースを飲んだり、城にいる一流コックに作らせたプチクロワッサンもどきを食べてたら何かこう、ふと思い至ったのだ。


 この世界が、前世の記憶にある所謂乙女ゲームの世界だということに。





 頭のイカれたやつと思われるかもしれないが、私には前世の記憶と言うものがある。

 それは私が体験した記憶と言うより、私の中に別の人間の記憶だけを植え付けたような状態に近い。

 簡単に言ってしまえば一人の人間の人生を綴った本を読んだというような感じだろう。

 最初にこの記憶に気付いたのは弱冠三歳の時なのだが説明が面倒くさいので割愛。


 まあそれは今どうでもいいとして、本題に戻ろう。

 ここが乙女ゲームの世界だという話だ。ゲームのタイトルは「七色の恋の華〜百花繚乱〜」というものだった。

 内容はファンタジー系の剣と魔法と冒険もので、序盤は学園もの……王子や騎士との恋物語、後半は攻略対象たちと魔王討伐への道のりを描いたRPGのようになっている。



 この世界での魔法は火、水、雷、風、土、光、闇の七属性だ。

 魔法は魔力を持つ者しか使えず、人間だと大抵貴族出身。

 さらに前者五属性は魔力を持つものなら大体どれか一属性(まれに二属性)使える。

 しかし光と闇の属性はほぼいないと言ってもいいほどレアなのだ。

 物語の舞台は特に魔法が発展しているという設定のエファームル国。

 ヒロインはその国の田舎に生まれた。

 平民で母子家庭出身、だが保有魔力が高いことと使える魔法が光の属性であることが発覚し、十四歳の時に魔法学園の学園長から直々に入学のお誘いが来る。

 それがこの物語のスタート地点だ。


 そこから見目麗しい第三王子や硬派な騎士、軟派な魔導師、やんちゃな弟系のファイター、ナルシストの僧侶などなどと恋に落ち、時に悪役と対峙して成長する。

 そして十八歳になった学園卒業の年に魔境と呼ばれる魔族の住まう土地アグラダイタスで魔王の復活があり、それを討伐しに行くというストーリーだ。

 乙女ゲームとしてのメインは前半だが、後半のRPG部分でも常に好感度は上下し、大量のスチルが存在する。前半に目もくれなかった相手と後半で恋仲になるというのもざらにあったようだ。

 ついでに二周目に入ると超絶美形の魔王とのルートも解放されるらしい。

 凄まじい程のハードモードだと聞くけれど。


 で、その前半に出てくる悪役と言うのがシェルダント公爵家令嬢、エルミシア・シェルダントだ。

 彼女は第三王子の婚約者で、その地位に胡座をかき尊大で不遜、自分の願いは叶って当然というなんとも我儘な娘である。

 そんな彼女は王子だけでなく他の攻略対象にも色目を使っており、その攻略対象たちが興味を持ったヒロインをありとあらゆる手で苛め抜く。

 最終的にはその悪事を世間にバラされ学園追放、家から勘当、異国追放、処刑、暗殺などの結末が待っている……らしい。



 そして何を隠そう悪役令嬢エルミシア・シェルダントとは、私の事だったはずなのだ!

 ……そう、だったはず・・・・・なのだ。

 つまり今の私は公爵家のご令嬢ではない。今の私の立ち位置は……



「……陛下、今度は何を思いついたんですか。頼みますからからこの前みたいに『コイノボリが見てみたい』とか訳のわからないことを言ってシーサーペントの群れを空中浮遊させたりしないでくださいよ」

「あははー、マオー様今日も元気だねぇ。今度はなぁに? どっかの国でも潰すの?」

「魔王陛下……穏便に……」

「今はそれどころじゃないのよ!!」


 魔国アグラダイタスを建国し、魔族の領地を統一した魔王エルミシア・ルキフェル・アグラダイタスという、なんとも物々しいものだった。


 そう、魔王だ。

 魔王様なのだ。


 さっきも言ったような気がするが、二周目以降には激ムズではあるものの魔王も攻略対象になる。

 しかし一周目であろうが二周目であろうが三周目四周目五周目であろうが魔王は必ず主人公率いる魔王討伐部隊によって殺されるのだ。

 何度も、何度も(まあここは現実だからそんな何周もしたりはしないだろうけど)。

 ついでに魔王攻略は魔王を殺す事によって好感度の変動が起こるため、これは『殺し愛』と呼ばれていた。


 しかも私は女だ。

 ヒロインが同性愛者でない限り攻略対象にはならない!

 ……何故だ、自分の本来のポジションを知った上で今の方が死亡フラグが濃厚になってるのは。

 何故なんだ!



 ついでに今勝手に私の部屋に入ってきた、幹部のイカれたメンバーを紹介するぜ!


 黒髪緋眼で超絶美形の『殺戮の黒騎士 カウィール』通称カウィ。

 すっごい真面目。そして心配性。

 どっかで見たことあるような気がするなーと思ってたら、ゲーム内での本当の魔王だ……多分。


 金髪碧眼、王子様より王子様じみた見た目のヴァンパイア達の長『金色の吸血王 バロルド』。

 年齢は三桁を軽く超えているそうだ。


 最年少でちみっこくて猫耳生えてる、白髪と桃色の瞳の幹部『白き魔獣 リリィ』。

 猫系の獣人と魔族のハーフで、ちょっと年齢の割に片言で喋るけど可愛いから許す。

 猫耳幼女可愛いよ幼女。

 猫耳生えてるけどあえてうさ耳フード付きの服を買い与える事が多い。

 まあ今はそんな事どうでもいいんですけどね!!


「あああ私は殺される……!」

「は?」


 あーあ、なんで私は魔王になったんだろう。

 ちょこっと人より魔力が多くてー、ちょこっと人より魔法が強くてー、ちょこっと人より戦闘能力が高いから調子こいて国を滅ぼしたり害のある魔獣を千切っては投げを繰り返してたらいつの間にか国が出来てて魔王様と崇められていただけなのにぃー……あっれ可笑しい、今答え出たぞ。


「魔王陛下……殺される……?」

「隣国をまるっと消し炭にした陛下が?」

「素手で真紅龍クリムゾンドラゴンを倒すマオー様が?」


「「「誰に?」」」

「バロルド、カウィは黙ってて! リリィはこっちきて私を癒して!」

「はい……魔王陛下」


 リリィをなでなでハスハスしてるとどうにか落ち着いてきた。

 耳がピクピクして尻尾を足に絡ませてきた。

 にゃんこ系幼女可愛いよ幼女。

 しかし私はレズでもロリコンでもない。断言しよう。

 ちょ、ちょっと人より幼女が好きなだけだもん!


 おっといけないまた話が逸れた。



「……で、マオー様はいったいどうして自分が殺されるなんて妄想したのさ」

「妄想じゃないわよ、いずれ訪れる未来よ! 今私が十四だから……あと四年後には魔王討伐部隊がやってきて殺されちゃ……あと四年? 四年もあるの?」

「あぁもう、こっちに説明する前に自分の世界に飛んじゃったよ……」


 四年もあればアグラダイタスの国力を上げ、周辺国との同盟を結んで平和的に魔王討伐の未来から逃れられる……かもしれない!


 こうして私の、魔王として討伐部隊に殺られないために国交頑張ろうぜ計画、作戦名『(自分の)いのちだいじに』が始まったのだった!!





「いやいやマオー様、史上最強にして最悪の魔王とか言われ始めた時に魔王討伐軍なんてなんどもけしかけられてたじゃん。毎回焼き殺してたけど」

「魔王陛下、強い。負ける……無い、絶対」

「同盟? 服従させるの間違いでしょう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ