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乙女の夢はしょっぱい。

お待たせいたしております。

大泣きする私を見かね、セイラさんがパンをひとつ差し出してくれる。私は飛びつくように受け取って、あぐあぐと食べ始めた。


「それにしても、あいつらは何のためにタエコを狙ったんだ?」

「わざわざ仕事を依頼して俺たちからタエコちゃんを引き離したんだ。最初から狙いはタエコちゃん一人だったんだろうね」

「連れ去っておきながら食べ物も与えないなんて……ひどい目にあいましたね」


がっつく私を見て、セイラさんが涙を見せる。

ただ単に私が眠り続けていたのと、せっかく与えてくれた食事をデュオさんがパァにしただけなんですけど。

説明しようと思ったけれど、口一杯にパンが詰まっていてうまく言葉にならなかった。

そんな私に、セイラさんはそっと水筒をもたせてくれる。


……これってつまりパンを喉に詰まらせたように見えたってことですか?

なんだろう。女としてなにかを失った気がする。

…………ま、まぁいいや。

水が欲しいなと思っていたから、ここは深く考えずに水を飲んでおこう。悲しくなるだけだし、うん。


「誘拐犯はあなたをさらったことについて、何か言っていませんでしたか?」

「えっと、私が遺跡で召喚されたから、遺跡の宝を手に入れるのに役立つはずだって……」

「遺跡の、宝?」


そうつぶやいて、全員が私をじっと見る。


……あれ、おかしいな。

もう安全なはずなのに、なぜか悪寒が走る。

風邪のひき始めだろうかと思っていると、ヒイロさんが目の前までやってきて膝をつき、視線を合わせて私の両肩を掴んだ。


「よし、タエコ。一緒に遺跡を探検しよう」

「やっぱりそうなるのかよ!!いや、おかしいでしょ!?私なんて足手纏いにしかならないし、連れさらわれてここまで来たから靴も履いてなければ身を守るものは何もつけてないんですよ!!」


おいこら!

そんなきりっと格好つけて言ったって騙されないからな!!

こちとら丸腰なんだよ!

ゲームでも木の盾くらい初期装備しているっていうのに、私はお鍋のふたすら持ってないんだぞ!!


「靴なら、私が予備を持っています。確か、同じサイズでしたよね」


まさかのセイラさん裏切り!?


「タエコちゃんは俺が絶対守るから大丈夫だよ。ひとりになんて、もうしないから」


デュオさんが乙女ゲーのキャラみたいな甘いこと言ってる〜。

でも残念!意味が違いますよね、うん。

ひとりにしたくないとかじゃなくて、連れて行くのが決定したぞってことですよね。わかります。


「あぁ、こんなところにちょうどよく縄があるじゃないですか」


そう言ってラグロさんが手にしたのは、さっきまで私を拘束していたロープ。


「ちょっ、ラグロさん!?何しちゃってるんですか!?」

「何って、縛ってます」

「そんなの見ればわかりますよ!!私が言いたいのは、どうしてまた縛られなきゃならないのかってことで……て、みんなまで何してくれるんですか、逃げられないでしょうっ、離してくださいよ!!」


抵抗しようとした私を、他三人が押さえつける。

セイラさんまで加わっているだと!?


「タエコさん、ごめんなさい……」

「悪いと思ってるなら離してくださいよ!?」

「安心しろ、タエコ。もう、お前を置いて行ったりなどせん!」

「それってまさかこれからずっと旅に同行させられるとかじゃないですよね!?」

「大丈夫だよ、タエコちゃん。俺たちがついてる」

「こらぁっ!デュオさん!!爽やかに言えばなんでも許されるわけじゃないですからね!!」

「よかったじゃないですか、タエコさん。役立たずなあなたにも、存在する意味が見出されるかもしれませんよ」

「わぁ、ほんとだぁ。…………って、喜ぶわけないでしょうが!!確かに私はなんの特徴もない平々凡々ですけど、今日まで自分にできることを精一杯して、最低限居場所は作ってきたつもりです!こんな危ない目に合わなきゃいけないなら、新しい価値なんていりませんよ!!」

「甘いですね、タエコさん。その人の価値とは、本人ではなく周りが決めるのです。つまり、私たちですね。そして私たちは、あなたに遺跡の宝まで導いて欲しいと思っている」

「すなわち私は遺跡の宝を見つけるために存在しているってか、この最低野郎!!人でなしいいぃぃ〜〜!!!!」


私が魂の叫びをあげている間にも、ヒイロさんたちは私を毛布巻きにした。

元に戻っちゃったし!!

ぬか喜びとはまさにこのことだったよ。ちくしょう!!!


顔くらいしか動かせ無くなってしまった私を、デュオさんがひょいと抱き上げた。


ここでまさかの…………




お姫様抱っこ!!!!!




息づかいさえ聞こえてきそうなほど近くに、デュオさんの整った顔があって、デュオさんは私をじっと見めて、


「落としたりしないから安心してね」


と笑いかけてくれたりして、まさに乙女の夢が具現化!!




……なんだけれども。


こんなミノムシ状態で萌えられるかあああぁぁっ!!!!!




毛布巻きでお姫様抱っこされて萌えるとか、どんな変態だよっ!?

私はMなんかじゃない!ノーマルなんだよこんちくしょう!!


「窮屈な思いをさせてごめんね。後でちゃんと解いてあげるから」

「え?解いてもらえるんですか?」


てっきりダンジョン攻略が終わるまでこのままかと思いましたよ。

私はアイテムかっ、つーの!!


期待の眼差しでデュオさんを見上げると、デュオさんは虹色の瞳を優しく細め、言った。


「ひとりで引き返せないくらい奥まで行ったらね」


それってつまり、自由になっても自由がないってことじゃねぇか!!

なにこの人!?

ちょー優しい笑顔でちょー怖いこと言ってませんか!?


え?なに?

実はこの四人の中で一番怖いのはデュオさんだったりするの?

てっきりラグロさんがラスボスだと思っていたのに、まさかのデュオさん裏ボス説!?


なんてこったい。

唯一の癒しがなくなっちまった。

もうだめだ。なにもする気がおきないよ。

まるで狭間の世界にたどり着いた後みたいに無気力状態だ。

まぁ異世界へ来てるから当たらずしも遠からずなんだけども。


「よし!遺跡の宝を発掘するぞ!!」


ヒイロさんの高らかな宣言にほか三人は声をそろえて応え、遺跡らしい建物へと進んでいく。

私は「大事なもの・タエコ」的な状態で強制的にダンジョン侵入。

道具袋に詰められずに持ち歩いてもらえるだけましか?とか思ってしまうあたり、だいぶヒイロさんたちに毒されてる気がする。


ていうか、「大事なもの」に分類していいよね?


いやいやそんなことよりも今一番大事なことは、






この世界にエンデはいるんだろうか。


エンデが誰か分かりますでしょうか?

真紘が初めてやったこのシリーズは6でした。

これで大体の年齢層がばれますよね!!

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