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悪者っぽい帝国に召喚されました双子  作者: すすす
サイドストーリー
6/9

間者のアンナちゃん


   + File.1 渡り廊下



「────あら、ウフフ。ごぶさたですね。いらっしゃい。


 何が知りたいの?」



 メイドのアンナさんは、私に対して、人なつっこくほほえんだ。

 アンナさんは日当たりのいい渡り廊下にいた。


 ここは帝国城の中で、もっとも人通りの少ない場所である。

 陰鬱な城には珍しく、光りに満ちあふれた空間だった。


 アンナさんは、古いカーテンに寄りかかっている。

 渡り廊下はその明るさとは逆に、物理的な閉塞感があった。

 換気も掃除もろくにしていないらしい。


 ばら色の頬に浮かんだそばかすが、アンナさんのきれいな顔に親しみを加えていた。



   + File.2 アンナちゃんのプロフィール



「あら、今さらうふふ。そうですね、


 両親は仕立屋で、兄と姉と弟と妹がいました。犬と猫を飼ってたの。

 庭には二羽、にわとりが。

 あら、本当ですよ。


 もうみんな、いなくなってしまったけど。


 魔物に殺されたのよ。今のご時世、珍しくもないですね。

 あら、にらんでなんかいませんよ。


 魔物が多くなったのは、今の皇帝になってからですね」



   + File.3 黒い双子について



「あの「帝国の救世主」のことですね。


 これで何人目、だったかしら。

 ──あら、いえいえ。間違いなく一人目……というか一組目ですよね。


 一年前のあれは、召喚の魔力が足りずに、召喚されたとたん魔獣が暴走して……、犠牲者も多くなって後処理が大変でしたね。


 二ヶ月前のあれは、こざかしく立ち回って、下手に権力を持ちそうで目障りだからって理由で、多勢に無勢でほふりましたよね。


 古の神殿を掘り起こしたかと思えば、なにが始まるのでしょうね。

 えぇそうですね。命は惜しいので、この位にしときます。


 あの双子のことですね。

 ふつうの少年少女です。きっとよいご両親とご学友がお有りなんですね。

 早く元の世界に返してあげればいいのにねっ。


 目つきの悪さも、この帝国にはおあつらえ向きです。

 雰囲気もあるし、男女の双子という相乗効果は抜群かと思います。

 目鼻立ちもすっきりとしていて、人前に祭り上げられるのも、十分耐えうる容姿です。

 成長途中の中性的な体は、マニア垂涎の


 え? もうお腹いっぱいですか。そうですか」



   + File.4 王国の救世主



「こちらの双子よりもやや前の時期に、同じように召喚されたようです。

 同じくまだ少女です。


 好きな食べ物は、激甘、激辛、酸味と苦味。

 極端なものを好むようですね。

 護衛の一人に、大変懐いています。弱みを突くならここかと、乙女の勘が言っています。


 最近の趣味は、野生動物の解体を覚えること。

 野営が多いので、必然性もあるのでしょうね。


 ただいま、立ち寄った村の少年を、魔物から助けられなくて傷心中。

 精神的な弱さを攻撃するなら、克服をする前の、今がチャンスのようです。


 星座とやらがアレで、血液型とやらがコレだそうで。


 あ、情報の有用性がバラバラで分かりづらい。そうですか。

 失礼しました。


 まあ何に役立つか分からないので、一通りは聞いておいて損はないかと思います。

 堅実な情報収集は、すばらしいことだと思います。にっこり。


 イトコの神官からの直輸入なので、情報の正確性は保証しますよ。

 つきましては、追加料として────」



   + File.5 「母なるなにか」とは



「あなたですら近づけない所を、私に調べさせるとは。

 いくつ命があっても足りないわ。やり甲斐はありますけど。

 ……時間と料金がかかりますけど、それでもよろしいのなら。

 ────ハイ。毎度アリです。


 今の段階で分かるのは、これくらいですよ。


 史実を見るならば、

 この世界が出来る前に、空から堕ちたものがあったそうです。

 昔話では、それは万物の母となり、私たちを作ったと言われています。

 空気も植物も、虫も動物も、すべてですね。


 噂を見るならば、

 ある将軍すじでは、かの黒い神殿を掘り起こした際に、壁に施された神話があったそうです。

 その壁の神話を解釈して、帝国内の最北端にある永久凍土を掘り起こしたところ、驚きの維持状態の、生き物と思わしき何かを発掘したとか。


 ある給仕すじによれば、近ごろ、皇帝の食の好みが変わったとか。

 あと、皇帝が一人でいるはずなのに、会話をしているのが聞こえたそうですよ。


 また、ネズミの数が異様に減ったようです。

 誰かが、いえ何かが食べているのかしら。


 ある研究者すじからは、空から堕ちたもの、というのは、他にもいた説があるそうです。

 東の地の果ての海溝に、それが堕ちた可能性があるようよ。


 あら、この研究者と連絡を取ってみますか?

 ではその件については、後日また。連絡手段はいつもの方法で」



   + File.6 白魚の手



「────あなたの手は、いつも真っ白できれいですね。

 まるで白魚のよう。

 どんなお手入れをしているの?」


 彼女は私を見て、赤毛を小さく揺らした。




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