魔王の娘に転生したら、魔界のアイドルになった。
「あぁ〜やっと仕事終わったぁ…えっと、今日は17時間かぁ。あれ?何時間寝たっけ。えっと、休憩してたら急患来て先生の手伝いして、人手不足だから、そのままオペ看して〜寝てなくない?」
私はそのまま、ベッドにダイブした。
ピロロロ、ピロロロ!!!
電話の鳴る音がして、携帯の画面が光る。
「はい〜」
私は力無く返事をする。
「もしもし!内藤さんですか?!今、内藤さんの担当病室からインフルエンザ出て、移動して4人部屋なので体調観察しないといけないんですけど、ちょっとわからないことが出てきてしまったので、今から、電話で教えていただけませんか!?」
まぁ、主任だから仕方ないか。
あー、夜勤明けなのになんでこんなことが…
「わかりました。えっと、電話よりも直接のほうがわかりやすいので、向かいますよ。20分くらいでつくし、いろいろこういう時の対処法教えたいので…」
今、シフト的に若手しかいないんだよなー。
ちょうど教えれるいい機会だし、少し行ってからすぐ帰ってくるか!
「いえいえ、そんな!申し訳ないです!内藤さんお疲れでしょうし!電話でかまいませんよ!」
まぁ、そうなるか…
「まず隔離できてる?それからアナムネ取って、シバリングの有無も確認して。状態に合わせて適切に処置してね。先生と一緒にムンテラしててね!」
大丈夫なはずだよね?先生いるし、最低限は伝わったはず……あれ?なんか反応が変?
「えっと…」
もしかして、意味が伝わっていない?
あー!!!!そう言えばこの人3ヶ月前に内科から外来勤務になったんだっけ!
失念してたぁー外来と救急じゃ違うよね
「わかった!一瞬行って、対応してすぐ帰るね」
うん。これが手っ取り早い!
専門用語を教えてあげるいい機会になるし、実戦経験をみんな積めるよね。
こんなトラブル外科ではあんまりないから。
行かなくちゃ。後輩が、患者が、困ってる!
「内藤さん、本当にすみません!明日のシフト、有給にしておきましょうか?」
「おね…が…」
あ…れ?なんか、めの…前が…なんか…歪んで、ない?
バッターン、、!
「内藤さんっ???どうされました??」
あ、で…んわ…
「おぎぁーおぎぁー」
え?私なんで泣いてるの?
はやく、病院に行かなきゃなのに!
「生まれてきてくれて、ありがうとう…ねぇ?」
「あぁ、そうだな……本当に天使か⁈君譲りのピンクの髪に俺譲りの赤い瞳に角」
角……?ナニコレ?本当に頭の上に突起物がある!
「名前はお決めになられましたか?」
名前?私は内藤瑠璃ですけど。それに、今46だよ?赤ちゃんでもないし……結婚もしてない!
「『ステラ』だ!意味は、輝く星のように育ってほしい」
ステラ……可愛いわね。ラテン語かしら?
「まぁ、いい名前じゃないの。今日からあなたは、『ステラ・フォン・ヴェスペリア』ね」
何その仰々しい名前は……?
「皆のものよ!聞け!今ここに誕生した俺の娘を『ステラ・フォン・ヴェスペリア』と名付け、連邦魔国の『第一王位継承者』とする!時期魔王はステラだ。ステラに何かしたら……わかってるだろう?」
とっても怖いのですが。今、連邦魔国の第一王位継承者って言いましたか?
連邦ってことは複数の国の頂点でしょう?
それを魔族が治めていて、魔王はその連邦魔国のトップってことなの?
そんなに偉い人の娘になってる?
あ、やっと理解したかもしれない。
姉さんの娘で高校生の姪っ子が「叔母さん見て!」とか言っていろいろ見せられた転生?
でも、よくよく考えると「悪役令嬢」だったけ?そんなのに転生するものばっかり読んだような……?
それに、トラックにはねられて亡くなる。みたいなパターンが多くない?
あれ?今「魔王の娘」に生まれ変わって「過労死」したんだよね?多分……これってありえるの?
『ぅおおおおおお!!!!!』
うっわ!びっくりした~
「おぎゃぁ~おぎゃぁ~」
あれ?勝手に涙がしかも泣き止まない!
「ちょっと!ステラちゃんがびっくりしちゃったじゃないの!大きな声出すなんて信じられないわ!」
うんうん。その通り。赤子の前で大声を出すとそうなるよ。
このピンクの髪に緑の瞳の女性がお母さんかな?
で、そっちの怒られてる黒髪に赤い瞳の角が羊みたいな人がお父さんなの?
「ごめん、ステラ!こらもうちょっと静かにせんか!」
いやいやいやいや、うるさい原因を作ったの貴方でしょう?
ところで、周りに誰かいるの?
視界がボヤっとしてて何もわからない~辛うじて色と感触はわかるけれど。
それに、首が動かない!
「あなたも、謝りなさい!」
おぉ、お母様ナイスです。
あ、この人がお母様なら、あの人はお父様かな?
多分それで間違えなさそうだしそう呼ぼうかな。
名前知らないし。
それに、「魔王様」とか「お后様」みたいな感じに呼ぶのも変だよね。
「すまんっ!ステラ……だがな、わかってほしいのは国中がステラの誕生を祝福しているのだ!」
あぁ、そうですか~としか言いようがないかもしれないわね。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ー半年後
私はついに「ずりばい」と「三脚座り」をマスターした!
なんか、言葉が丁寧すぎて、最近お嬢様言葉になりつつあるのよね。
「まぁ~お嬢様!お可愛らしいですわ!こちらを向いてくださいな!」
え?そんなに可愛いの?
「だぁ!」
必殺、笑顔で首をかしげてみる!
「ぐっは!」
あれ?大丈夫ですか。看護師だから何とかしないと!
ずりばいって自由が利かないね~早く歩けるようになりたい。
よし、とりあえず背中を叩いてみるか。
「あ~ぁ?」
大丈夫って言いたいのに!
「すみ、ません。お嬢様が可愛すぎて!」
なにその、のろけ話。
「お嬢様、次は私を見てください!」
「いや!私だ!」
「僕も~」
「こっちみてぇ?」
あ、今日も来た。
この人たち四天王なんでしょう?
仕事大丈夫かな?
話を聞いている限り、ちょっと違うらしい。
正確には連邦に属している小国の国王みたい。
とても、偉い人なのに私の前では顔が崩壊しているけれど、いいのかしら?
「お前たち~?誰が仕事をさぼって、毎日ステラのところに通えと言った!許せん……今まで思っていた政策を全部言ってやるから、今すぐ来い!」
やっぱり、今日もお怒りですね。お父様……
「そんな!」
「なぜですか!陛下……」
「なんで~」
「政策なんてぇ、あとでもいいよぉ!」
まぁ、こうなるよねぇ~
「魔国の理を統ぶる我が血に告ぐ。四天らよ、其の座に留まること叶はず。闇路の扉、今ここに開帳し、執務室へと道を結ばん。汝ら、我が命に従ひて、此処より彼処へ、即刻移ろふべし」
わ~今日も出だ。多分転移魔法ってやつだよね。
っていうか、古文だよね。これ。
暇だから現代語訳してみるか。
◆◆◆
魔国の法を司る我が血の名のもとに命じる。四天王たちよ、今いる場所に留まることは許さない。闇の道を開き、執務室へ通じる転移の門を結ぶ。私の命令に従い、ここから執務室へ、ただちに移動しなさい。
◆◆◆
こんな感じかな?ザ・中二病ですな。
最近、私が笑うとけが人が出るし、なんか「お嬢様を押す会」とか出来てて、ちょっとめんどくさい。
現代日本でいう、売れっ子アイドルみたいな感じだ。
違うのは、お父様が背後にいるせいで堂々と動けないことかな。
本当に嫌だけれども、嬉しいような何とも言えない。
ずっと気がかりなのは、病院に残してきた患者と後輩だな…
でも、もうどうしようもない。ここは一旦割り切って、今生を謳歌しようではないか。
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読んでくださりありがとうございました。
【専門用語】
①「シバリング」・・体が震えること。
②「アナムネ」・・・患者の病歴・既往歴・生活歴などの情報。
③「ムンテラ」・・・医師、看護師が患者や家族に治療方針などを伝えること。




