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あいつは彼女じゃないのに…
これは間違っている。
息が触れるほど近い距離、そこにあいつがいる。
海みたいな香水の匂いが鼻に残る
優しそうな瞼、
仄かに赤みのある唇、 否が応にも重なる。
私が好きなのは彼女だ、あいつじゃない。
いくら彼女に似通っていたとしても、そこにいるのは彼女なんかじゃない。
……。
わかっている。
なのに視線が吸い寄せられる。
だめだ、違う。 それでも、私はあいつを見つめる。
その瞳に乱されている。
制服の着方すら違うのに。 見つめるたびにお腹が痛む。
口元を綻ばせる、目尻が垂れる。 そして豪快に笑う。
笑い方は違うのに、笑顔だけはそっくりで。
動けない私はあいつにされるがまま。
細くしなやかな指が顎に触れる。
放課後の教室。 窓ガラスに反射する私の顔はどうしようもなく綻んでいて。
「じゃあ、始めるよ」 そういった声が彼女のものに聞こえた。
ゆっくりと唇が近づく。




