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『ベチィルダイン国』

作者: 眞基子
掲載日:2026/02/02

             『ベチィルダイン国』


 皆さん、空を見上げて下さい。この地球より138億光年先に『ベチィルダイン』という国があります。まさかです。でも、天文学でパーセクは一秒ごとに3・26光年を移動します。まばたきをした瞬間に。勿論、人類が行く事ができない宇宙の果てですが、確実に存在しています。



 ベチィルダイン国は惑星スケレイドの中にある国家です。ダイン国王が統治し、レアナ王妃とクラッシュ王子と共に岩山で作られた頑強な城で暮しています。何故、頑強な城にしたのか。何千年もの間、ベチィルダイン国は国民と共に平和な生活を甘受してきたのです。山々に囲まれた豊かな自然、平地には山から流れ出た水が河川を通して注ぎ込む大きな池が点在している。林業、農業、漁業は国民生活を穏やかに支えてきた。だが十年前、長年友好国として密に接してきた隣国ケラエドで内乱が起き、ラド国王とマリー王妃が暗殺された。主犯の参謀長グラフイアが国を牛耳るようになり、国民は脅され何も反論できずグラフイアの言いなりになっている。そんな中、グラフイアが領土拡大を狙い、ベチィルダイン国に魔の手を伸ばし始めて来たとの情報が流れた。それまで戦とは無縁な国にだったベチィルダインは嫌でも軍隊を装備せざることとなった。武器と言っても今まで戦も無かったベチィルダイン国では、せいぜい刀剣の類である。グラフイアが用いた飛び道具、弓矢さえ無かった。ダイン国王はケラエド国に内乱が起こった時、新たな武器を作製することを内密に指示していた。それは、山の奥から掘り出した火種。小さな小石を擦り合わせることにより、火が熾ることを知っていた。今までは食事を作る時や暖房に使っていたが、それを武器として使えないかと。小さな小石を筒に詰め、一気に放出する際に出る火を敵に向って撃つ。長年、試行錯誤で考えられた武器だった。ダイン国王は、いざという時の軍隊の指揮を二十歳になったクラッシュ王子に委ねた。 

 ダイン国王はクラッシュ王子を呼び寄せた。

 「クラッシュ、我が国は国民を守る為、仕掛けられたら応戦せねばならぬ。ただし、相手国にも国民がいる。そこを配慮し、こちらから戦を仕掛けるな」

 「承知致しました」

 しかし、クラッシュ王子は立ち去らず、何か言いにくそうにしていた。 

 「話は終わった。まだ、何か言いたい事があるのか?」

 ダイン国王は不思議そうに言った。

 「実はケラエド国の内情を長年友人として傍にいたカッシに偵察を頼んでおりました。ケラエド国内は悲惨と聞き、戦以外に両国民を救う手立てはないかと、私は農民の振りをしてカッシと共にケラエド国に潜入したのです。その時、ラド国王側近として長年付き添っていたネレドに見つかってしまったのです。ネレドは私がベチィルダイン国のクラッシュ王子であると気付きました。ネレドが騒ぎ立てるのではマズイと思い、隠していた刀剣を出しました。すると長年ラド国王側近として仕えてきたネレドは、ダイン国王とラド国王の長年の友好を見続けてきて、今の惨状を憂いていました。そして、まさか参謀長グラフイアが内戦を起こし、ラド国王一家を暗殺するとは思いも知れませんでしたと。暗殺される前日、察知したネレドはラド国王に知らせましたが、その時すでに遅く城の周りはグラフイア率いる敵に囲まれていましたと。ラド国王夫妻は私に五歳のディオ王女を頼むと懇願致しました。後は必死で逃げ出したのことです。そして、十年間農夫として働き、孫として王女を育てたと。王女の印として胸にラド国の刻印が小さく刻んであります。しかし、ネレドは歳をとり自身が大病に罹りました。ここで、ベチィルダイン国のクラッシュ王子と出会ったのは神のご加護です。どうかディオ王女を宜しくお願いしますと言い残し、私と会ってから三日後にネレドは亡くなりました。私は慌てて農夫の馬車にディオ王女を隠し、我が国に入りました」

 ダイン国王は暫く考え込んでいた。

 「ところで、ディオ王女は何処に?」 

 「カッシの知り合いの所で匿ってもらっております」

 ダイン国王は又考え込んでいた。

 「私はディオ王女に会ったことがある、可愛い赤ん坊の頃だ。だが、あれから十年以上の月日が経っている。私は疑いたくはないが、今の状況を考えると簡単に迎え入れていいのか。今やケラエド国とは一触即発の危機に面している。ネレドの事は良く知っておる、ラド国王に忠実な人間だ。だが、グラフイアに脅され、ディオ王女を我が国のスパイに仕立て上げる可能性も捨てきれない」

 クラッシュ王子も考え込んだ。ネレドの命を掛けた頼みを疑う事はできない。確かに父上のいう事にも一理ある、何しろ一触即発の危機がある。そして、私には何が何でも国民を守る義務がある。王女の命も国民の命も同じ命。もう一つの懸念。ディオ王女が生きている事をグラフイアに察知されたら、密かに王女の命を狙う輩が入り込まないとも限らない。戦は疑心暗鬼を植え付ける。後は真実を確信した者の勝利かも知れない。暫くカッシの知り合いの所にいるのが安心であると親子で合意した。五歳だったとしても、自分が王女である事は確信しているのではないだろうか。しかし、自分を育ててくれたネレドの事を祖父だと思い、毎日祈りを捧げている。クラッシュ王子は何れハッキリしたときにはディオ王女の事は俺が守ろうと自分に言い聞かせていた、ネレドの命を掛けた頼みを守為に。

 それから三か月後、グラフイア率いるケラエド国の軍隊がベチィルダイン国へ越境しようと山の中にじわじわと集まり始めているとの情報を察知、クラッシュ王子は手薄になっているケラエド国の軍隊の裏を搔き、ベチィルダイン国の軍隊を密かにケラエド国に送り込んだ。ケラエド国の主要基地にベチィルダイン国の軍隊が占拠した。ケラエド国の軍隊は自国をベチィルダイン国の軍隊に占領されたのだ。グラフイアが領土拡大を狙って仕掛けた戦は、ベチィルダイン国の領土拡大に繋がった。ダイン国王はケラエド国をグラフイアから取返し、ディオ王女を当主となることにした。だが、十五歳のディオ王女の後見人としてクラッシュ王子を当てた。いずれ、両国は一つの国に成っていく予感がしていたのかもしれない。いずれにせよ流血もなく、両国民に幸せな日々が続く事になるであろう。


  

 地球の存続が何秒単位で減っていきます。核爆弾を作っている場合ではないでしょう。



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