表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6人家族の珍道中 ドタバタ家族の記録  作者: ゴリラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/31

算数ドリルと、母の忍耐

午後5時30分。

リビングには、三女が散らかしたブロックの音と、長男が叩く太鼓の音が響いている。

その喧騒の真ん中で、長女・陽葵はダイニングテーブルに座り、算数ドリルを広げたまま……石のように固まっていた。

「陽葵、あと何問?」

キッチンから夕飯の支度をしながら、ママ(33歳)が声をかける。

「……あと、5問」

「さっきも5問って言わなかった? 15分前から進んでないわよ」

ママが背後に立つと、陽葵はサッとドリルの余白を隠した。

「今、考えてるところだもん! 算数の神様が降りてくるのを待ってるの!」

「神様はドリルには降りてこないわ。自分で計算しないと」

ママが覗き込むと、ドリルの端には細かな「女の子のイラスト」がびっしりと描かれていた。

「……陽葵。この算数の神様、すごくオシャレなドレス着てるわね」

「あ、見つかった」

ここからが、ママと9歳児の格闘(第2ラウンド)だ。

「これ、繰り上がり忘れてるよ。もう一回やり直し」

「えー! もう書いちゃったもん。消すのめんどくさい。明日、先生が教えてくれるからいいよ」

「ダメ。今やるの。やり方分かってるでしょ?」

陽葵はわざとらしく大きなため息をつき、消しゴムを「シュッ、シュッ」とやる気なさそうに動かす。

「お母さんはいいよね、宿題なくて。大人ってずるい」

「ママだって、毎日『夕飯の献立』っていう、答えのない宿題と戦ってるの。ほら、ここ!」

その時、2歳の颯太が「あおー(遊ぼう)!」と陽葵の足元に突進し、4歳の結菜が「ママ、折り紙折って!」と割って入る。

「ちょっと、みんな静かにして! お姉ちゃん、今、全集中してるんだから!」

ママが下の子たちをなだめる隙に、陽葵はまた鉛筆を止めて、窓の外を見つめ始めた。

「……陽葵。終わったら、デザートのアイス食べていいよ。パパが昨日買ってきたやつ」

ママのこの一言で、陽葵の瞳に光が宿った。

「……チョコのやつ?」

「そう。一番高いやつ」

「……やる」

そこからの陽葵は速かった。

さっきまでの「神様待ち」が嘘のように、鉛筆が「カリカリカリ!」と音を立てて進む。

「できた! ママ、見て!」

「はいはい……あ、ここまた繰り上がり間違ってる」

「えー!! もう、お母さん厳しいー!」

結局、宿題が終わったのは夕食の直前。

ヘトヘトになったママは、アイスを美味しそうに頬張る陽葵を見ながら、心の中でつぶやく。

(明日は漢字練習か……またあの神様、降臨するんだろうな……)

9歳の「知恵」と33歳の「交渉術」。

この家のダイニングテーブルでは、毎日こんな高度な格闘技が繰り広げられているのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ