朝の「二度寝・三度寝」防衛線
この家の朝には「静止画」のような時間が存在します。それが、1年生の次女・澪と、年中さんの三女・結菜の「絶対に起きない二段構え」
AM 6:45。
ママ(33歳)の戦いは、布団を剥ぎ取るところから始まる。
「ほら、澪! 1年生でしょ、遅刻するわよ! 結菜も起きて、今日もお花さん見ながら歩くんでしょ!」
しかし、返事はない。そこにあるのは、二つの「芋虫」のような塊だけだ。
ターゲット1:次女・澪(7歳)の場合
澪は「寝たふり」のプロである。
ママが声をかけると、薄目を開けて一度は「おはよ…」と言う。しかし、ママが朝食の準備でキッチンへ戻った3分後、見に行くとそこには、さっきより深い眠りに落ちた澪がいる。
「澪! 起きたふり禁止! ほら、ランドセルが泣いてるわよ!」
「……ランドセル、泣かないもん。お布団が、澪を離してくれないの……」
1年生になり、知恵がついた。彼女は布団と一体化し、ママが引っ張ってもズリズリと床を滑るだけで、決して立ち上がろうとはしない。
ターゲット2:三女・結菜(4歳)の場合
結菜の防衛策は「逆ギレ」である。
「ゆいな、起きてー。朝だよー」
「……やだぁ!! まだ夜なの! お外が明るいのは、誰かが電気つけたからなの!」
もはや宇宙の真理をねじ曲げるレベルの言い訳。
しまいには「寝ながら怒る」という高等技術を披露し、布団を頭まで被って鉄壁のガードを固める。
最終兵器:長男・颯太(2歳)投入
ママが手を焼いていると、パパ(38歳)に抱っこされた長男・颯太が登場する。
「パパ、もうこの二人、颯太に任せよう」
「よし、颯太。お姉ちゃんたちを起こしてこい!」
パパが颯太を布団の上に放流する。
2歳児の容赦ない攻撃が始まった。
ダイブ: 次女の腹部へ一直線。
目潰し: 三女のまぶたを無理やり指でこじ開ける。
絶叫: 耳元で「あーーー!!」
「いたたた! 颯太、やめて!」
「うわーん! 颯太くんがゆいなのお目目触ったー!」
阿鼻叫喚の地獄絵図。でも、これでようやく二人は起き上がるのだ。
AM 7:30 ようやく食卓へ
髪の毛をボサボサにした次女と、半泣きの三女が食卓に並ぶ。
「ほら、早く食べなさい。今日はパパがゴミ出しついでに途中まで一緒に歩いてくれるって」
その言葉を聞いた瞬間、二人は顔を見合わせ、
「パパ、ゴミ袋持つの手伝ってあげる!」
「ゆいな、お花さんの道、案内してあげる!」
と、さっきまでの「石」のような状態が嘘のように元気になった。
「……ねえ、パパ。私の呼びかけより、ゴミ出しの方が魅力的なの?」
ママが呆れ顔でコーヒーを飲む横で、パパは鼻の下を伸ばして「さすが俺の娘たちだな」と笑っている。
この家が完全に「始動」するまで、あと、お着替えと、忘れ物チェックと、靴が見つからない騒動の、計3回のアトラクションを残すのみ




