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6人家族の珍道中 ドタバタ家族の記録  作者: ゴリラ


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烈女・陽葵のフルスイング 6年生をなぎ倒した放課後の審判

38歳のパパが「天然ハゲ社長」との冷や汗モノの攻防を繰り広げていたその裏で、実は家庭内最強のDNAを継承した長女・陽葵(9歳)が、学校を舞台に「武闘伝」を繰り広げていた

【第1幕:学校からの不穏な一報】

その日、パパ(38歳)はいつものように「秘密のダイエットメニュー(スープと小指サイズのおにぎり)」を完食し、在宅ワークの画面に向かっていました。10キロ痩せた体は軽く、心なしか仕事の効率も上がっている……そんな気がしていた午後のひととき。

ジリリリリ……!

家の固定電話が、静寂を切り裂きました。受話器を取ったママ(33歳)の背中が、みるみるうちに戦闘モードへ切り替わるのをパパは見逃しませんでした。

「……はい。ええ、陽葵が? ……ええ!? 男の子を!? ……今すぐ向かいます」

電話を切ったママの顔は、般若のようでもあり、どこか「ついにやったか」という諦めに似た境地でもありました。

「パパ、仕事中断。学校へ行くわよ。陽葵が喧嘩して、相手に怪我をさせたって」

「えっ、陽葵が? あの大人しい(はずの)長女が?」

パパは慌てて「八分丈のスエット」を履き替え(熱海の教訓)、ママと共に小学校へと急行しました。

【第2幕:取調べ室……ではなく、校長室】

学校に着くと、そこには気まずそうに下を向く小学3年生の陽葵と、その隣で氷嚢ひょうのうを頬に当てて呆然としている、一回り体の大きい6年生の男子児童、そして困り果てた担任の姿がありました。

「あ、あの……お父様、お母様。実はですね……」

担任の説明によると、放課後の校庭でトラブルが発生し、陽葵が6年生の男子に「鮮やかな一撃」を食らわせたというのです。パパは、ひとまず陽葵を別室へ連れて行き、膝を突き合わせて「聴き込み(事情聴取)」を開始しました。

「陽葵。パパは怒らないから、何があったのか全部話しなさい」

すると、陽葵はポツリポツリと、しかし確かな口調で事の顛末を語り始めました。

【第3幕:中指と死線、そしてフルスイング】

事件の始まりは、些細なことでした。

校庭で遊んでいた陽葵たちの横を通りかかった6年生の男子。彼はいわゆる「やんちゃ坊主」で、年下の陽葵たちをからかってやろうと思いついたようです。

「あいつ、いきなり私に向かって、中指を立ててきたんだ」

中指を立てる——。海外ならずとも、その意味は子供でも分かります。侮辱、蔑視、攻撃の合図。普段からパパと一緒に爬虫類を育て、生命の尊さと「売られた喧嘩の買い方」を背中で見てきた陽葵にとって、その指先は「宣戦布告」のラッパでした。

「だから私、言ってやったの。『そんなことするなら、お前が死ね』って」

パパの背筋に冷たいものが走りました。9歳児が放つ「死ね」は重い。しかし、それは陽葵なりの正当防衛(精神的)だったのかもしれません。

言葉の弾丸を食らった6年生の男子は、年下に言い返されたことに激昂しました。

「なんだと、コラァ!」

彼は陽葵の胸ぐらを、力任せにグイと掴み上げました。

ここからが、陽葵の「武勇伝」の本番です。

「胸ぐらを掴まれたとき、私、こう思ったんだ。『あ、こいつ、やっていいやつだ』って」

陽葵のスイッチが入りました。彼女は日頃、2歳の颯太に服を引っ張られ、次女の澪にちょっかいを出され、それでも長女として耐えてきました。その鬱憤と、パパ譲りの格闘センスが右腕に凝縮されます。

陽葵は、掴まれた胸ぐらを支点にして体をひねり、遠心力を最大限に活用しました。

狙いは一点。相手の左頬。

「フルスイングで、ビンタした」

パパは幻聴を聞きました。バチィィィン!!という、乾いた、しかし重厚な破裂音。

体重差を物ともしないその一撃は、6年生の男子を文字通り「数センチ浮かせ、横へ飛ばした」のです。

【第4幕:親同士の意外な再会】

陽葵の話を聞き終えたパパが、再び校長室に戻ると、そこには相手側の両親が到着していました。

パパは身構えました。「うちの息子になんてことを!」と怒鳴られる覚悟をしていたのです。

しかし、相手のパパの顔を見た瞬間、お互いに「あ!」と声を上げました。

「……田中さん?」

「……佐藤パパさん!?」

なんと、相手のパパは、パパが以前仕事でお世話になったことがあり、さらには爬虫類仲間でもある知人だったのです。

「いやぁ、佐藤さん。すみませんね、うちのバカ息子が。中指立てるなんて、どんな教育してるんだって私が叱っておきますから!」

「いやいや、こちらこそ。陽葵のビンタが、まさか6年生を飛ばすほどだとは……。本当に申し訳ない」

お互いの両親が「うちの子がすみません」と頭を下げ合うという、なんとも奇妙な和解風景。

ママ同士も「今度お詫びに、例の肉まんのレシピ持っていきますね」なんて話をして、事態は驚くほど円満に収束しました。

【第5幕:翌日の奇跡 —— 子どもの不思議な一面】

その夜、パパは陽葵に言いました。

「陽葵。守るための力は大事だけど、次は言葉で解決しような。……でも、あのフルスイングは、パパもちょっと見てみたかったよ」

陽葵は少し照れくさそうに「……うん。でも、スッキリした」と笑いました。

さて、問題は翌日です。

あれだけ取っ組み合い、ビンタで吹っ飛ばし、一触即発だった二人。学校で会ったら気まずいどころか、また喧嘩になるのではないかとパパは心配していました。

夕方、パパが様子を見に近くの公園へ行ってみると……。

「おーい! 陽葵、こっちこっち!」

昨日、頬を腫らしていたはずの6年生の男子が、満面の笑みで陽葵を手招きしていました。

「お前、マジでパンチ力やべーな! 今度格ゲーのコツ教えてくれよ!」

「いいよ。でも次、変な指立てたら、次は左の頬も飛ばすからね」

「勘弁してくれよ〜(笑)」

二人は昨日までの殺伐とした空気を1ミリも残さず、仲良くシーソーで遊んでいました。

パパはベンチに座り、冷めたコーヒーを飲みながら思いました。

「大人は『天然ハゲ』とか言われて根に持つのに、子供は拳一つで通じ合えるのか……」

昨日のスリリングな一報が嘘のような、穏やかな夕暮れ。

陽葵のフルスイングは、結果的に「学年を超えた友情」を生み出したのでした。

【第6幕:パパの「ダイエット」への影響】

家路につく陽葵の背中を見ながら、パパは自分の腹部をさすりました。

「……陽葵があれだけ強いなら、パパも負けてられないな。守るべき家族が強すぎる」

その日の夕食。パパは「サラダ中心」のメニューを継続中でしたが、ママがそっと、昨日の残りの肉まん(冷凍しておいたもの)を一つ、パパの皿に置きました。

「パパ、今日はお疲れ様。陽葵の喧嘩を止めた(?)ご褒美よ。たまには食べなさい」

「……ありがとう、ママ」

パパは肉まんを一口齧りました。皮の甘みと肉汁の旨味が、一日の緊張を溶かしていきます。

10キロ痩せて、誰にも気づかれないまま、社長に弄られ、娘の武闘伝に振り回される。

そんな波乱万丈なパパの日常。

「パパ! 明日、学校にルリ(大トカゲ)連れて行っていい? あの6年生の男の子に見せてあげたいんだ」

「……それは絶対にダメだ!!」

長女・陽葵の好奇心とパワーは、フルスイング同様、パパの想像を遥かに超えて加速していくのでした。

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