表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6人家族の珍道中 ドタバタ家族の記録  作者: ゴリラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/31

真冬のミステリーツアー パパ暴走 娘の我慢の伝え方

38歳のパパが、暴走しました。行き先を決めない「無計画ドライブ」という名のギャンブル。

楽しい1日の始まりだ

【AM 9:00:パパ、野生の直感で発進】

日曜日の朝。昨夜の肉まんのカロリーが、パパ(38歳)の中で謎のエネルギーに変換されたのでしょうか。パパは突然、リビングの真ん中でキーを掲げました。

「全員集合! 今からドライブだ! 準備は10分以内!」

ママ(33歳)は洗濯機を回したばかりの手を止め、「は? どこに行くのよ」と呆れ顔。しかし、パパの目は「秘密のダイエット」で研ぎ澄まされた(と本人は思っている)野生の眼光を放っています。

「行き先は、走ってから決める! これが男の浪漫だ!」

半強制的に車に詰め込まれた6人家族。オムツのストック、おしりふき、着替えの予備、そしてなぜか2歳の颯太が離さない「虫かご」。

パパの運転するミニバンは、とりあえず近くのインターチェンジから高速道路へと滑り込みました。

【AM 10:00:地獄の「どこ行くの?」クイズ】

走り出して1時間。最初のうちは「わーい、お出かけだ!」と喜んでいた子供たちでしたが、風景が変わらないことにしびれを切らし始めました。

「ねえパパ、どこ行くの?」と長女・陽葵(9歳)。

「パパ、どこ行くの?」と次女・澪(7歳)。

「どこ行くのー?」と三女・結菜(4歳)。

「どこいくのぉぉぉ!」と長男・颯太(2歳)。

最初は「秘密だよ」と余裕を見せていたパパでしたが、4方向からの波状攻撃に、次第に精神を削られていきます。

「どこ行くの?」「秘密だ」「どこ行くの?」「楽しいところだ」「どこ行くの?」「教えない」「どこ行くの?」「パパにも分からない!」

ついにパパが本音を漏らしたところで、車内の空気が一変しました。

【AM 11:00:次女・澪、作詞の神降臨】

目的地が決まっていない不安をかき消そうとしたのか、突然、次女の澪が歌い出しました。

「あるこう〜あるこう〜私は元気〜♪」

お馴染み、ジブリの『さんぽ』です。それに陽葵と結菜がハモり、颯太が手拍子(ミニカーを窓に打ち付ける音)で応戦。車内はさながら「ジブリ合唱団」と化しました。

しかし、2時間ほど走り続けた頃、澪の歌声が不穏なメロディに変わりました。彼女は天才的な替歌の才能を発揮し始めたのです。

「♪まだかー まだかー おしっこでるよー」

「♪そろそろ でちゃうよー お腹も減ったぁよー!!」

澪の『さんぽ〜失禁への序曲バージョン〜』。

「おしっこ! おしっこ出る!」と結菜が便乗して叫び、颯太も意味が分からず「しっこー!」と拳を突き上げます。

「パパ! 早く、早くパーキングエリア(PA)に入って!」

ママの悲鳴に近い指示を受け、パパは慌てて一番近いPAへと車を滑り込ませました。

【PM 12:00:迷走の作戦会議と、パパの「冬の常夏」】

PAのフードコート。うどんを啜る子供たちを横に、パパとママは地図を広げていました。

「……で、パパ。現在地はここだけど、どうするの? 軽井沢まで行く? それとも沼津?」

ママの問いに、パパは腕を組みました。

「軽井沢は山だろ。寒いじゃないか。沼津か伊豆……。いや、この辺りだとまだ実家に行くのと変わらない。俺は今、猛烈に『海』が見たいんだ」

「海って、あんたその格好で?」

ママが指差したのは、パパの今日の服装でした。

上着: 薄手のオレンジのパーカー(しかもチャック全開)に黒のタンクトップ

ズボン: なぜか季節外れの「八分丈」スエット

足元: 裸足にビーチサンダル

一方、ママや子供たちは、冬の外出を想定して、しっかりと防寒ダウンやマフラーを装備しています。

「いいんだよ、俺は常にヒートテックという名のミートテック(脂肪の鎧)を纏っているんだ」

謎の自信を見せるパパ。

「よし! だいぶ戻ることになるが、熱海に行こう!」

「戻るの!?」というママの絶叫をBGMに、パパは意気揚々とUターン。海を目指してアクセルを踏み込みました。

【PM 1:30:熱海到着、そして視線】

ついに熱海の海岸に到着。

車を一歩出た瞬間、パパの頬を「真冬の海風」という名の冷たいビンタが襲いました。

「おぉ……風、そこそこ強いな……」

ガタガタと震えそうになる膝を、八分丈のスエットで必死に隠すパパ。周りを見渡すと、観光客たちは厚手のウールコートに身を包み、「寒いね」と言い合いながら歩いています。

そんな中、ビーチサンダルで砂浜を歩くパパ。

観光客たちの視線がパパに突き刺さります。

(え、あのおじさん、季節間違えてない?)

(見て、短パンに近いズボンにビーサンだよ。何かの罰ゲームかな?)

「パパ、あっちの人たちがパパを見て笑ってるよ」と澪。

「いいんだ。あれは、パパのワイルドさに畏敬の念を抱いているんだよ」

パパは強がりましたが、実際は足の指先から感覚が消え始めていました。

【PM 2:00:砂浜のデッドヒートと、ママの神捕獲】

「おーい! 鬼ごっこするぞー!」

パパは体温を上げるため、全力で砂浜を走り出しました。

「待てー!」

陽葵、澪、結菜がパジャマ……ではなく、冬服で砂まみれになりながら追いかけます。子供たちは転んでも砂まみれになってもお構いなし。冬の海は、彼女たちにとって巨大な砂場でした。

その時です。

2歳の颯太が、波打ち際を見て「おみじゅ!(お水!)」と覚醒。

凄まじいスピードで、真冬の紺碧の海へと猛ダッシュを開始しました。

「ああっ! 颯太! 止まれ!!」

砂に足を取られ、ビーチサンダルが脱げて転倒するパパ。

颯太の足が海水に浸かるまで、あと1メートル。

その瞬間、後ろから防寒ダウンをなびかせたママが、ラグビーのタックル並みのスピードで颯太を横から抱え上げました。

「確保ぉぉ!!」

波がザザーッと、ママの靴先を濡らしましたが、颯太は完全防御。

「……ママ、ナイスキャッチ」

砂だらけのパパが地面から親指を立てました。

【PM 3:00:お砂バイバイ、必要なし】

1時間の激闘を終え、一行は車に戻ることに。

陽葵、澪、結菜は、髪の毛から靴の中まで砂だらけ。

「ほら、靴脱いで! 外で砂を落として!」

ママが一人ずつ靴を叩き、「お砂にバイバイ」をさせます。

颯太も全身砂の衣を纏ったコロッケのようになっていましたが、パパだけは違いました。

「……パパは、バイバイの必要なし」

パパはビーチサンダルを脱ぎ、足を二回振るだけで完了。

「ビーサンはな、メンテナンス性が高いんだよ。冬の海に最適だな」

震えながら言うパパに、陽葵が冷静に返しました。

「パパ、足の指が紫色になってるよ」

【PM 4:00:帰路、そして誰もいない後部座席】

熱海を出発し、帰路につくミニバン。

後部座席では、遊び疲れた4人の子供たちが、まるで重なり合うトカゲたち(ラッキーやいちごちゃん)のように、折り重なって爆睡していました。

「……パパ。結局、今日何がしたかったの?」

助手席でママが、ようやく一息ついて聞きました。

「いや……10キロ痩せたからな。体のキレを確認したかったんだ」

「ふーん。で、その結果、足がしもやけになったわけね」

パパは赤くなった足の指をヒーターの風に当てながら、密かに満足していました。

目的地を決めず、2時間かけて行って2時間かけて戻り、砂浜で鬼ごっこをして、観光客に笑われる。

そんな非効率で無駄な一日。でも、車内のバックミラーに映る、砂だらけで眠る子供たちの寝顔は、どんな緻密な計画よりも完璧な「日曜日の成果」に見えました。

「次は、ちゃんと靴を履いて来ような」

パパの言葉に、ママがクスッと笑いました。

「そうね。でもその前に、家に着いたら、また全員分のお風呂と、砂だらけの服の洗濯が待ってるわよ。パパ、わかってるわね?」

「……はい。そっちは任せて、ちゃちゃっと夕飯作らしていただきます」


熱海の風に吹かれたパパの八分丈のスエットは、帰りの車内、ヒーターの熱で少しだけ潮の香りを漂わせながら、夜の道を家へと急ぐのでした。

帰宅後、ママの怒声と服のポッケから出るわ出るわの熱海の砂

パパは、6人分のオムライスをせっせと作り

楽しい1日が幕を閉じました。

例のごとく、車で爆睡をした子ども達は、目をギラギラ輝かせ無駄に元気な夜を過ごし1日が終わりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ