:粉舞い肉踊る! 6人家族の「地獄の手作り肉まん」大作戦
インフルエンザと胃腸炎のダブルパンチを乗り越え、10キロ痩せたパパの「秘密のダイエット」が進行中ではありますが、今夜ばかりは休戦です。家族全員が健康で揃ったことを祝し、今夜のミッションは「肉まん作り」
【第1幕:役割分担と、静かなる嵐の予感】
「よし、今夜は全員で肉まんを作るぞ! 目標は15個だ!」
パパ(38歳)の掛け声がリビングに響き渡ります。胃腸炎から復活し、少しシュッとした(誰にも気づかれていないけれど)パパの顔には、珍しく闘志が宿っていました。
今回は効率を重視し、二つのチームに分かれることに。
【具材チーム】
リーダー:ママ(33歳)
精鋭:長女・陽葵(9歳)、長男・颯太(2歳)
【生地(皮)チーム】
リーダー:パパ(38歳)
精鋭:次女・澪(7歳)、三女・結菜(4歳)
「具材チーム」は、豚挽き肉500gを筆頭に、椎茸、筍、玉ねぎといった豪華ラインナップ。
「生地チーム」は、薄力粉とベーキングパウダーを駆使して、ふわふわの城壁を作る役割です。
「パパ、粉、こぼさないでよ?」というママの鋭い牽制を合図に、地獄の調理がスタートしました。
【第2幕:生地チーム、雪国の惨劇】
「いいか、まずは粉を混ぜるところからだ。澪、結菜、ゆっくり混ぜるんだぞ」
パパが薄力粉200gとベーキングパウダーをボウルに入れます。そこに砂糖、塩、ぬるま湯、サラダ油を投入。
しかし、4歳の結菜にとって、ボウルの中の白い粉は「魔法の砂」にしか見えませんでした。
「ゆいな、まぜまぜするー!」
勢いよく泡立て器を回した瞬間、ボウルから薄力粉が噴水のように舞い上がりました。
「ゲホッ、ゲホッ! 結菜、激しすぎる!」
パパの顔は一瞬で歌舞伎役者のように真っ白。横にいた7歳の澪も「わあ、雪だー!」と手を叩いて喜んでいます。
「こら! 喜んでる場合じゃない! 澪、ぬるま湯を少しずつ入れてくれ!」
「はーい……あ、ドバッて入っちゃった」
「あああ! ベチャベチャだ! 粉を足せ、粉を!」
生地担当は、早くも水分調整の泥沼にハマりました。パパの手はベタベタの小麦粉まみれ。それを面白がった結菜がパパのズボンにタッチし、パパの黒いスウェットには白く小さな手形がいくつも刻印されていきます。
「パパ……これ、肉まんになるの? 粘土遊びじゃないの?」
澪の冷ややかなツッコミが、パパの心に突き刺さりました。
【第3幕:具材チーム、肉の暴力と2歳児の乱】
一方、ママ率いる具材チームもまた、別の地獄に直面していました。
9歳の陽葵は、さすがの包丁さばきで椎茸と筍を細かく刻んでいきます。「パパ、生姜はこれくらい?」「お、おう、いい感じだ」と、パパは生地と格闘しながら生返事。
問題は、2歳の颯太でした。
ママが豚肉500gに醤油、鶏ガラ、オイスターソース、ごま油を加え、粘りが出るまでこねようとしたその時です。
「おにく! じょー!!(肉を貸せー!)」
颯太がボウルの中に小さな手を突っ込もうと、椅子の上で身を乗り出します。
「ダメ! 颯太、これはまだ生なの! お腹痛くなるよ!」
ママがブロックしますが、颯太は諦めません。隙を突いて片栗粉の袋を掴み、中身を確認しようと逆さまに振りました。
パサッ……。
「……陽葵、今の見た?」
「うん。颯太くん、豚肉に『雪(片栗粉)』を降らせたね」
ボウルの中の肉は、レシピの「大さじ1」を遥かに超える片栗粉を被り、まるで唐揚げの準備のような状態に。
「いいわ、もう! これで逆に肉汁が閉じ込められるはずよ!」
ママはもはやヤケクソで肉をこね始めました。オイスターソースとごま油の香りがキッチンに漂い、それにつられて、いつもはおとなしいフトアゴトカゲの「いちごちゃん」までケージの中でソワソワし始めています。
【第4幕:15個の個性派集団、誕生】
ようやく生地がまとまり、具材も完成。いよいよ「包む」作業です。
目標は15個。生地を15等分にし、肉を詰めていきます。
ここからは、この家族の「個性」が爆発しました。
長女・陽葵作: 教科書通り。ひだを丁寧に寄せた、お店に並んでいてもおかしくない完璧な肉まん。
次女・澪作: なぜか形が三角形。本人曰く「おにぎり肉まん」。
三女・結菜作: 中身がはみ出し、上に具が乗っている。「オープン肉まん」。
パパ作: とにかくデカい。肉を詰めすぎて、皮が今にも破裂しそうな「爆弾肉まん」。
颯太(ママ補助)作: もはや丸い塊。中身が肉なのか皮なのか判別不能な「謎の小球」。
「数えてみるよ。1、2、3……よし、ピッタリ15個!」
陽葵が数え上げました。蒸し器(もしくは深めのフライパン)に並べられた15個の肉まんたちは、お世辞にも「同じ料理」には見えません。まるで異種格闘技戦の入場待ちのようなバラエティの豊かさです。
【第5幕:蒸し時間の沈黙と、パパの誘惑】
強火で蒸すこと約15分。
キッチンには、小麦の甘い香りと、肉汁の濃厚な香りが充満しました。
「秘密のダイエット」中のパパにとって、この香りは致死量に近い毒(誘惑)でした。
(あかん。この香りはあかん。10キロ減った苦労が、この湯気と共に消えてしまいそうだ……)
しかし、蓋を開けた瞬間の子供たちの「わあああ!!」という歓声を聞いた時、パパの自制心はあっけなく崩壊しました。
蓋を開けると、そこにはふっくらと(一部はベチャッと)蒸し上がった15個の肉まんたちが!
ベーキングパウダーの力で膨らんだ生地は、パパの白くなった顔を思い出させるほど白く輝いています。
【第6幕:実食! 地獄の後の天国】
「いただきます!!」
家族6人が一斉に肉まんにかぶりつきます。
「熱っ! でも美味しい!」
澪が三角形の肉まんを頬張ります。片栗粉を多めに入れてしまった具は、ママの予想通り、肉汁をしっかりと蓄えていて、噛むたびに溢れ出してきます。
「パパ、これ最高だよ。お店のより好き!」
陽葵の言葉に、パパの鼻の奥がツンとしました。インフルエンザで苦しみ、緊急外来を走り回り、自分も1週間寝込んだあの地獄の日々。その先に待っていたのは、この不格好な15個の肉まんと、家族の笑顔でした。
パパは決意しました。
(今日だけだ。今日だけ、この肉まんを2個……いや、3個食べて、明日からまたスープ生活に戻ればいい)
結局、パパは自分の「爆弾肉まん」を含め3個を完食。
「あれ? パパ、ダイエット中じゃなかったの?」とママに突っ込まれましたが、「これは燃料補給だ!」と力強く言い返しました。
【エピローグ:片付けという名の第2地獄】
宴が終わった後、キッチンに残されたのは、
床に散らばった薄力粉の「雪」。
ごま油でギトギトになったボウル。
なぜか颯太の髪の毛に付いている肉の破片。
「パパ。皿洗いよろしく」
ママが笑顔でスポンジを差し出します。
「……もちろんだ。喜んでやるよ」
パパは、小さくなった胃袋がパンパンに膨らんでいるのを感じながら、山のような洗い物に向き合いました。
10キロ痩せたことは誰にも気づかれない。ダイエットの道は険しい。
けれど、家族で作った15個の肉まんの味は、パパの心の中に、どの高価なサプリメントよりも深い満足感を与えてくれたのでした。
窓の外は真冬の寒さ。でも、この家のキッチンだけは、肉まんの湯気と、パパの決意(と皿洗いの泡)で、いつまでも温かいままでした。
パパの秘密のダイエット、そして6人家族のドタバタな毎日は、これからも続いていくのです。
ミッション完遂
本当に、美味しく頂きました




