表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6人家族の珍道中 ドタバタ家族の記録  作者: ゴリラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/31

家庭内パンデミックと、パパの消えた10キロ — 秘密のダイエット奮闘記 —

賑やかで平和だった6人家族を、突如として見えない敵が襲いました。パパ(38歳)とママ(33歳)の奮闘、そしてパパに訪れた数奇な運命を描く、壮絶な闘病記をお届けします。

【第一章:夜の緊急外来、連日のシャトルラン】

それは、ある日曜日の夜遅くのことでした。翌日からの学校や幼稚園に備えて、ようやく静まり返った家の中。ふとパパが次女・澪(7歳)の寝顔を見ると、いつもの寝息とは違う、荒い呼吸が聞こえてきました。

「澪? 大丈夫か?」

触れた頬は、驚くほど熱くなっていました。顔はリンゴのように真っ赤。体温計は非情にも39度を超え、パパとママは顔を見合わせました。「行くしかないわね……」「ああ、緊急外来だ」

これが、地獄の連鎖の始まりでした。翌朝の診断は「インフルエンザA型」。澪を別室に隔離し、加湿器をフル稼働させ、家中にアルコールをスプレーして回るパパとママ。しかし、ウイルスはすでに潜んでいました。

2日後の20時過ぎ。今度は長女・陽葵(9歳)の顔が火照り始めました。「パパ、なんか体が重い……」と訴える彼女の熱を計ると38.2度。またしても夜の緊急外来へ。診断結果は、やはりインフルエンザ。

「なぜ……なぜ子供は、病院が終わった夜にだけ熱を出すんだ」

パパは夜の診察待ちの長椅子で、哲学的な問いにぶつかっていました。昼間はあんなに元気に縄跳びをしていたのに、太陽が沈むと同時にスイッチが切れたように発熱する子供の体質の不思議。

しかし、戦いはまだ終わりませんでした。さらに翌日の21時。さっきまでパパとミニカーで遊んでいた三女・結菜(4歳)と長男・颯太(2歳)が、電池が切れたようにパタリと倒れ込みました。

「寝ちゃったかな?」とママが抱き上げた瞬間、その腕に伝わる熱気に驚愕しました。「パパ! この二人、熱い!」

計ってみれば、二人揃って39.0度。パパはもはや半分白目を剥きながら、三度目の緊急外来へと車を走らせたのでした。

【第二章:ウイルス性胃腸炎という第二波】

子供たち4人が順々に倒れ、ようやくインフルエンザの嵐が去った1週間後。家の中にようやく活気が戻り、登校・通園を再開したのも束の間。今度は「第二波」が、さらに残酷な形でやってきました。

きっかけは三女の結菜でした。「お腹痛い……」と泣き出したかと思うと、一晩中トイレとお友達に。診断は「ウイルス性胃腸炎」。

ここからは、負のピタゴラスイッチでした。2日後に長男、3日後に次女、その翌日に長女。そしてついに、鉄壁の守りを誇っていたママまでが「気持ち悪い……」と倒れ込んだのです。

子供たちが育て、ママが熟成させたそのウイルスは、最後にこの家の主、パパへと受け継がれました。

パパの症状は、家族の中で一番重いものでした。一週間、ベッドから一歩も動けず、天井を見つめるだけの日々。大好きなトンテキどころか、うどんの一本も喉を通りません。ただひたすらに水分を補給し、ウイルスとの最終決戦に挑むパパ。

1週間後。ようやく熱が下がり、フラフラになりながら体重計に乗ったパパは、その数字を二度見しました。

「……10キロ減ってる」

驚愕でした。たった1週間で、38歳のパパから10キロもの肉が消え去ったのです。これまでの暴飲暴食(主にキャンプでの肉料理や深夜のカップ麺)が、いかにパパを大きく見せていたかを物語る結果でした。

【第三章:気がつかれない悲劇と、秘密の決意】

「10キロも痩せれば、みんな驚くだろうな」

病み上がりのパパは、内心少しワクワクしていました。「パパ、かっこよくなったね!」「痩せて若返った!」という家族の賞賛を期待して、ヨレヨレのTシャツを脱ぎ捨てリビングへ。

しかし。

「あ、パパ起きてこれたの? よかった。ゴミ出しお願いね」と、日常に戻ったママ。

「パパ、今日の夜トカゲの餌買いに行ける?」と、いつも通りの長女。

誰も、パパの体の変化に気づきません。10キロも減ったのに。見てくれが変わらないのか、あるいは家族がパパの存在そのものを「背景」として認識しているのか。

在宅ワークのオンライン会議でも同様でした。

「あ、パパさん、復帰ですね。お疲れ様です」と画面越しの社員たち。

画面を凝視しても、誰一人として「あれ、痩せました?」と言ってくれません。

「……よし。こうなったら、誰にも気づかれないまま、極限まで絞ってやる」

パパの心に火がつきました。10キロ減ったことを悲しむのではなく、これを機に「秘密のダイエット」を敢行し、いつか「あれ? パパって昔、もっと丸くなかった?」と言わせてやることに決めたのです。

パパはママに頭を下げました。

「ママ、お願いだ。俺の食事だけ、別メニューにしてほしい」

ここから、パパの「自分だけの特別メニュー」が始まりました。

朝は、腸内環境を整えるためのヨーグルトと、体を温める温かいスープのみ。

昼は、同じくスープに、コンビニのおにぎりよりも二回り小さい、自家製の「小さめおにぎり」を一つだけ。

夜は、大好きな肉を横目に、キャベツとカニカマ(あの『むしり料理』)を主軸にした野菜中心の少食生活。

「今、俺の胃袋は赤ん坊(颯太)と同じサイズなんだ。ここで無理に詰め込んだら、リバウンドの悪魔に捕まる」

パパは毎食、自分にそう言い聞かせています。

子供たちが美味しそうにピザを頬張り、ママがビールを飲む横で、パパは一人、静かに白湯を飲み、小さな野菜を噛み締めます。

「誰にも気づかれない……。でも、ベルトの穴は3つも縮んだんだぞ」

パパの秘密のダイエットは、今日も静かに、そして孤独に続いています。

いつか、ママが「パパ、最近ズボンがブカブカじゃない?」と気づいてくれるその日まで。パパは今日も、小さなおにぎりを大切に、大切に食べるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ