氷点下の交渉術 —— 閉め出されたパパと、窓越しの攻防 ——
38歳のパパ、人生最大のピンチです。
冬のキャンプ場で「寒い寒い」と言っていたはずなのに、今のパパはTシャツ一枚。しかし、体温よりもママの怒りの温度の方が高いことは間違いない
PM 2:50 北風とTシャツの男
「……あ、開かない」
パパ(38歳)がウッドデッキのサッシを引くが、無情にも「カチッ」とロックの音が響いた。
外は1月。気温は一桁。手元には、もう半分冷めかけたコーヒーが一杯。
「ママ! 冗談だろ!? 冗談がすぎるよ! Tシャツだよ!?」
窓をトントンと叩くが、リビングではママ(33歳)が仁王立ちになり、オムツ1枚の颯太にズボンを履かせながら、パパを一瞥もせずに無視している。
PM 3:00 子供たちの反応
窓の外に張り付くパパに、ようやく子供たちが気づいた。
「あ、パパが外で踊ってる」と次女・澪(7歳)。
「違うよ、澪ちゃん。あれは寒くて震えてるんだよ」と冷静な長女・陽葵(9歳)。
三女・結菜(4歳)は、窓にべったりと顔をつけて「パパ、雪だるまになるの?」と無邪気に聞いてくる。
「陽葵! 鍵を開けてくれ! パパ、このままじゃルリ(オオトカゲ)より先に変温動物になっちゃう!」
パパが必死にジェスチャーで伝えると、陽葵が鍵に手をかけようとした……その瞬間。
「陽葵。パパが自分の過ちに気づくまで、開けちゃダメよ」
ママの背後からの「声のオーラ」に、陽葵はビクッとして手を引っ込めた。
「……パパ、ごめん。お母さん、本気だわ」
PM 3:15 豆との対話
パパは寒さに耐えかね、庭で冬眠(?)しているはずのマルギナータリクガメ「豆」のお家の陰に隠れた。(豆のお家の中はヒーター付いてるから外気より暖かい)
「豆……お前はいいよな暖かい家の中で。パパのTシャツなんて、布の薄い膜一枚だよ……パパが入れるサイズのお家作れば良かった」
ガチガチと歯の根が合わない音をさせながら、パパはコーヒーを一口すする。すでに冷え切って泥水のような味がする。
ふと見ると、家の中ではママが温かいスープをボウルに注ぎ、子供たちが幸せそうにそれを囲んでいる。そこは、パパがさっきまでいた「天国」だった。
PM 3:30 決死の謝罪作戦
パパは最終手段に出た。
地面に落ちていた子供の落書き用チョークを拾い、ウッドデッキの床に大きくこう書いた。
『ゴメンナサイ。夕飯作るので許してください。そして、タバコだけでも取ってください』
窓越しにそれを見たママの眉間が、一瞬ピクリと動いた。
「……明日の朝御飯も作るから、作ってから仕事行くから」
パパが涙目で叫ぶと、ようやくカチャリと鍵が開き、タバコとライターを手渡され再び鍵を閉められた。冷めたコーヒーとタバコをくわえガタガタ震えているとカチャリと鍵の開く音がした。
PM 3:50 生還
「……おかえり。次は一番に逃げないこと。作るだけじゃ無くて皿洗いもする事わかった?」
ママが差し出した温かいバスタオルを被りながら、パパは震える声で答えた。
「はい……。ママの咆哮からは逃げません」
その横で、2歳の颯太が「パパ、おそと、たのしかった?」と笑っている。
パパは「ああ、もう二度と行きたくない冒険だったよ」と言いながら、ストーブの前にダイブした。
そして、ママから「てか、外に小さい焚き火台あるんだから頑張って火付ければ良かったんじゃない?」
まだまだ、ママの怒りは静まってないようです
この家の冬は、外気は冷たくても、ママの「熱血」のおかげで、ある意味年中ポカポカなのです。
そしてパパは、Tシャツ一枚で冬の厳しさと「主婦の怒り」を身をもって知る




