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久澄村エルフ奇譚   作者: 小町 翔平
26/39

寛治、心がわずかに重くなって。

寛治が待っていた日がやっときました。

でも空模様とは裏腹です。

寛治はどうするのか?


では、どうぞ。

 日曜日が朝から晴れることは、昨日の夕方のお山の天気予報でおっ父が言っていたのでわかっていた。

 おらにはまだわからないが、村の大人たちはお山見ればだいたいはわかると言い、実際にこれまで幾度となく翌日の天気を当ててきたのだ。

 外れることがないわけではないが、確率でいえばおらが穣と将棋をして負けるのと同じくらいだ。

 わざと勝ちを譲ったときを勘定にいれなければ、だけど。


 あぜ道を走り、たんぽぽを飛び越え、おらはりっちゃんに逢いに行った。


 神社には先客がいた。

 神社にお参りに来る人、神社を遊び場にするこどもは、そりゃあもちろん、いる。

 かくれんぼをしていた子どもらは、学校の下級生で顔見知りだ。

 三つも四つも五つも歳の離れた、子どもだ。

 おらがしろへび様に逢いに来たなんて言ったら、ついてきたがるであろうことは自明の理だ。

 だからおらは木登りが下手だから、みんなには内緒で練習しに来たんだと嘘をついた。

 練習してるって知られるのも、練習しているところを見られるのも恥ずかしいから、内緒にしてくれな、見ないでなと咄嗟にしては上手に誤魔化した。

 これはついてもいい嘘だ。


 それで上手くひとりになれるようにして、例のごとくおらはお社に手を合わせてから御神木に向かった。

 かくれんぼは続行され、おらはよしっと思った。

 そわそわしたら嘘がばれてしまうだろうと、平静を装って物陰に隠れるまで、普通に、普通に、と自分に言い聞かせただ。

 そうすることで生まれる異変、違和感があるなんて気づきもしないで。

 でも、好ましいことに相手は子どもだった。

 違和感には気づきもしないで遊びに夢中になっていた。


 御神木の前で、おらは手を合わせた。

 べつにそうしなくてもりっちゃんは現れるとは思う。

 でも御神木には手を合わせるものだし、まあ、これも決まり事だ。

 風が吹くたびに身を震わせたのはもう昔で、木の葉の触れ合う音が心地よかった。


「カンジ、目をつぶってて」


 そう声がした。

 それは命の感じられる声だった。

 風を切る冷たい感じがして、つぶっていてと言われたのに目を開けてしまった。

 こないだと同じ、お社を見下ろせる森の中だった。


「慣れていないから、驚きの声をあげちゃうと思ったの」


 そう説明をされて、おらは合点がいった。

 りっちゃんは前に逢ったときに着ていた厚手の外套は着てはいなくて、草色の上着とスカートという格好だった。

 胸には青い宝石があしらわれていて、とても似合っていて綺麗だと思った。


 でも、りっちゃんの笑顔にはどこか具合の悪そうな色があった。

 りっちゃんが言った。


「ねえ、カンジが逢ったのはあたしであってしろへび様じゃないのに、どうしてしろへび様だなんて嘘を言ったの?」


 それがどんな意図によって生まれた質問なのかはわからなかったが、なにかの核心をついた、とても重みのある質問だと思った。

 おらは慎重に答えた。


「……うーん、咄嗟に口をついて出たから、深い考えがあったわけではないから、おらもよくわかんねえけど、そう言わなきゃなんねえって気がしただ。だって、馬鹿正直に助けてくれたのがりっちゃんだなんて言ったら、天狗だなんて、山狩りをしねっきゃなんねえなんて騒ぎになりかねねえべ。そんなことになったらまずいっておら思っただ。なにがまずいのかなんて上手くは説明できねえけど、まずいべ。大事だべ。だからりっちゃんが助けてくれたとは言えねえ。でも不思議な力で誰かがおらを助けてくれた。不思議な力でおらを助けられる誰かって誰だ? しろへび様だ。おら閃いただ。だからあのとき、おらはみんなにしろへび様が助けてくれたんだって言ったんだ。……悪いことだったげ?」

「ううん。でもその後でいろんな人にしたじゃない。しろへび様に助けられた話」

「うん。した」

「そのとき罪の意識は感じた?」

「いんや。感じなかった」


 とおらは答えた。

 罪の意識という言葉が持つ言霊で今の今まで得意になっていたおらの心はわずかに重くなった。


「りっちゃんをしろへび様に置き換えて話しただけで、おらを助けてくれた不思議な力を持つ存在は確かにいたわけだから、嘘ではねえと思ったんだけど、やっぱり嘘だったげ? 悪いことだったげ?」

寛治は結果的に嘘をついていたとも言えます。

それをエルフたちはどう受け止めるのか?

私はその伏線を回収するのかしないのか(笑)?


では、また。

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