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人前で話せない陰キャな僕がVチューバーを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件  作者: 中島健一


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第80話 童貞

~音咲華多莉視点~


 私は大丈夫。

 

 I'm ok。


 次の授業も始まり、廊下に出た織原も私の隣の席に戻ってきた。私はまたチラリと織原を覗き見る。


『童貞卒業したんだよ!』

 

 茉優の無邪気な言葉がフラッシュバックした。何故だか血の気の引く思いがする。


 ──ど、童貞卒業…そ、そりゃあ高校生だもん……そのくらい普通っていうか……その……あ!そしたら愛美ちゃんの想いはどうなるの!?


 頭の中をぐるぐると言葉が浮かんでは消えていく。眠気と一緒で、何か別のことを考えてもふと浮かんできては私を襲ってくる。


「はぁ、はぁ……」


 呼吸に集中するのよ華多莉!!私は以前『出家ガール』に出た時の役を思い出し、禅なる呼吸法に集中した。すると現在絶賛授業中の現代文の鐘巻先生の声が聞こえてくる。


「……童貞」


 ──え!!?


 呼吸が一気に乱れる。私は顔を上げて先生の方を見た。


 高村光太郎『道程』


 と、黒板には書かれていた。乱れた呼吸が戻ってくる。頭の中、まっピンクの私には刺激的なワードである。


「じゃあ、ここ織原、読んでくれ」


 織原は教科書を握り直し、声を発した。


 林間学校に行く前の私なら織原の声を聞いてエドヴァルド様かどうか判断しようと集中していたのかもしれない。しかし、その疑いも晴れた。私は教科書を読む織原の声に特に注目をせず耳を傾けた。


「……ぼぐの"ま"え"でぃ、みぢばな"い"」


 がらがら声だった。鐘巻先生は直ぐにストップをかけ、織原が風邪を引いていたことを思い出す。そして私が指名されて教科書を読むはめとなった。


 音読が少しお経ちっくになったのは『出家ガール』のせいだ。


『道程』の一節を読み終えた私に、鐘巻先生は言った。


「音咲、ありがとう。これと山月記はテストに出すから覚えておくように」


 先生の号令を元に生徒達は一斉に自分のノートにペンを走らせる。


 ──テスト……?


 私は忘れていた。テストが近いことを。またしても私は呼吸を乱す。


 将来、芸能界に身を置くことと現在稼いだお金なんかを勘案してもテストの点数が悪くても別になんてことはない。


 しかし、私が留年したりテストの点数が悪かったりしたらSNSで叩かれるに違いない。


◇ ◇ ◇ ◇


 〉かたりんバカで草

 〉ばかたりんじゃんw

 〉頭良い役はもうオファーされないね

 

『え~、椎名町45のかたりんこと、音咲華多莉のテストの結果を暴露したいと思います。現代文28点、日本史8点、英語13点──』


 〉ひっくwww

 〉very big kusa

 〉目瞑りながら受けてももうちょい点数取れる


◇ ◇ ◇ ◇



 は、はぁぁ……そ、それにせっかく友達になった愛美ちゃんにも嫌われるかもしれない。



◇ ◇ ◇ ◇ 


「華多莉ちゃん。バカだったんだね……」


 待って!愛美ちゃん!!


「私、親にバカとは友達になるなって言われてるの…さようなら……」


 嫌!行かないで!!愛美ちゃーん!!!


◇ ◇ ◇ ◇

 

 寒気がする。私は身を震わせた。


 もしかしたら、エドヴァルド様だってバカは嫌いかもしれない。


 ──勉強!勉強しなきゃ!!


 そう意気込んだが、次の時間は収録の為に学校を早退することになっている。


 時間通り早退した私は現在、車の中だ。


 ──車内で勉強!


 しようと思ったが、台本に目を通さなければならない。台本を読んでいるとスタジオに着いた。


 ──だったら楽屋で勉強!!


 そうかと思えば、早速本番が始まった。そして本番が終わったかと思えば次の番組の打ち合わせ。それが終わったら今度はラジオの収録。それが終わったら今度のライブのダンスレッスン。それが終わり、車内でようやく勉強をしようと思ったその時、運転席からマネージャーの加賀美が声をかけてきた。


「華多莉、さっきのラジオでゲーム実況について話してたじゃない?」


 もうくたくたの私には遠い過去のような気がしていた。


「…それが、何?」


「こんな話が来てるんだけど」


 加賀美は企画書を取り出して、表紙を私に見せてきた。


『全国高校eスポーツ選手権大会』


 私は力無げにその企画書を受け取って、中をパラパラと捲る。


「この業界ってまだまだ未発達なんだけど、その割にコアな層が色々とうるさくてね。ゲームに興味のないアイドルをコメンテーターの1人に置けば叩かれるのは目に見えてる。だから断ろうかと思ってたけど、どうする?」

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