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人前で話せない陰キャな僕がVチューバーを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件  作者: 中島健一


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第69話 堕天

~榊恭平視点~


『だぁーっはっはっはっ!!』


 容赦なく敵に向かって撃ち下ろす銃声と俺達のチームプラハを着た天使たちのリーダールブタンさんのゲスい笑い声が俺の鼓膜を刺激する。


『いやぁ~ダメだよちゃんと安地の探索しないとぉ~こうなっちゃうよ~ん?』


 ルブタンさんの物言いとその所業は悪魔のようだった。チーム名に天使とつけたのは間違っていたかもしれない。いや、天使が堕天して悪魔になったのなら強ち間違ってはいないのか。天使でも悪魔になるんだ、人間だって悪魔になるのは当然じゃないか。なんてメッセージ性豊かなチーム名なんだろうか。


 俺、榊恭平の使うキャラクター、クリムトの使うドローンによって、遠隔に操作しながら遠くにある探索ビーコンを使用することが可能だ。安全にゲームを進めるには持って来いのキャラクターである。俺にぴったりかもしれない。セカンドゲームではオープニングゲームで2位だった為にブラバを使ってスキャンをしながら安全にゲームを進めようとしていたが、14位をとってしまったので、ラストゲームでは最も使いなれたキャラクターにした。


 おそらく今回のラウンド3の安地には多くのチームが困惑することだろう。俺達自身もラウンド2の安地をビーコンで調べて、『中継基地』周辺に最終安地が寄ることだろうと予測していた。だから素早く『中継基地』に聳えるクレーンの上にポジションを獲ったのだ。しかし念のためラウンド3の安地を見て功を奏した。早々にクレーンの上から退却し、『ヴァーススライド』に続く坑道の出入り口に向かって走った。


『中継基地』から『ヴァーススライド』に入るには『中継基地』の北東側にあるこの坑道と『中継基地』北西に伸びる道と2つある。坑道を選んだ理由としてはこれまた2つあって、1つは俺達のいたクレーンにこの坑道が近かったことと、残るもう1つは北西に伸びる道は既に別チームによって狙われていた可能性が高かったからだ。


 北西に伸びる道の両脇には山があり、その両脇の山の頂上に登ることができる。『ヴァーススライド』へ向かうプレイヤーをそこから撃つことができる。まぁ、アーペックスをそこそこやっている人でもその強ポジを知っているくらいだから占領されていて当然だろう。だがそのポジションを占領していたチームも『ヴァーススライド』から『中継基地』に入ろうとするプレイヤーを狩ろうとしていた筈だ。まさかその逆に『中継基地』から『ヴァーススライド』に入ろうとする者を狩るなんてラウンド2までは思ってもいなかっただろう。


『っしゃぁ!ラストゲームはキルポイントに制限ないからな!どんどん稼がせてもらおう!!』


 セカンドゲームでは14位と不甲斐ない結果に終わってしまった。それに最後にルブタンさんを殺ったのはエドヴァルドだ。オープニングゲームの仕返しといったところだろうか。俺も負けてはいられないと胸が高鳴った。


『恭平!パルスいけるか?』


 いけます、と返事をした俺はドローンを操作する。俺の操るキャラクター視点からドローン視点へと切り替わった。ドローンは薄暗い坑道に入り、少し進むと道の真ん中に遺棄されている列車がある。その列車をねじろにしている敵2名に向かって防具を破壊、更には視界不良のデバフ効果のあるパルス攻撃を放った。


「決まりました!」


『じゃあエミール、トーテム置こっか?』


『はい!』


 同じチームメイトの伊手野エミルが返事をする。エミルはレヴェナントのアビリティ、トーテムを山の頂上の最奥に焚いて──下から壊されないように──、ルブタンさんと俺はそれに触れる。不死の効果を得た俺達は下山して、坑道の敵を討ちに行った。


 パルスによってダメージを負っている敵プレイヤーをあっという間に撃破した俺達は、早速戦利品のデスボックスを漁る。


『アビリティ促進剤あるぞ』


「それ貰います」


 弾を補充して、俺とルブタンさんは山の頂上に戻った。


『ラウンド3の収縮ももう始まった。坑道を通る奴等がもう少しいると思うんだけどな……』


 ルブタンさんがそう溢すと、俺は発言する。


「でもラウンド3でここも安地外になっちゃいますけどどうします?」


『収縮する炎と一緒に動く感じでいこう。ここはもうちょっとキルポ稼ぎたい』 


─────────────────────


~織原朔真視点~


「どうします?」


 僕はシロナガックスさんに言った。


 バトルを終えたと同時にラウンド2の収縮も終わり、そしてラウンド3の安地が表示されたのを見て僕らは絶句した。


 南西に寄ると思っていたラウンド3の安地が北西に寄ったのだ。


 興奮冷めやらぬ中、次の新たな問題を前に立ち回りを決めねばならない。一息つく暇もなかった。


『恐らく今回、ラウンド3のイレギュラーによって多くのチームが混乱していると思います。しかしそれでも先回りしていたチームがいました』


 そういえばシロナガックスさんがクレーンにいたチームが移動したって報告していたのを思い出した。


『ラウンド2の安地からラウンド3の安地に向かうにはこの中継基地北西にある山と山の間にある細道を通るか、中継基地北東にある坑道を通るか。この二択に絞られます。現在おそらく、北西の道には銃声からして多くのチームが殺到していることでしょう。元々ラウンド3の安地は予測として南西に片寄ったものと考えていたプレイヤーが多かったと思います。多くのプレイヤーが最も近い道を抜けようとするのは至極当然のことです。そこへ近付けば多くの敵とエンカウントし、3人が無傷でヴァーススライドに到着することはほぼ無理だと思われます。必ず1人、もしくは2人がキルされるものと考えた方が良いでしょう』


 今の薙鬼流ひなみの状態からして、乱戦となると確かに3人が揃って生存するのは難しいかもしれない。僕は考えながらシロナガックスさんの言葉を聞いた。


『しかし北東の坑道では敵が待ち構えているとしても坑道の出口にワンパーティーがいるくらいだと思います。そこでは3人が生存するか3人が殲滅させられるかのどちらかだと思われます。このラストゲーム、上位を狙うには坑道からヴァーススライドに行ったほうがまるいかもしれませんね。坑道の中にもしかしたらそこを抜けようとしているチームがいるかもしれませんけど、もしいた場合は私達と出口を固めてるチームで挟んでしまいましょう』


 僕達は坑道へ向かった。その途中、僕は疑問を呈する。


「もし自分達が坑道に入った後に別チームが入ってきた場合、どうします?炎が収縮する動きに合わせて入った方が後ろを気にしなくてすむんじゃないですか?」


『そのつもりです。まずは私が坑道の中を探索してみます。エドヴァルドさんと薙鬼流さんは坑道の入り口付近に待機して見張っていてください』 


 シロナガックスさんはそう言って、坑道の中へと入った。入って直ぐにアビリティ、スキャンを使ったのが窺えた。


 薙鬼流と僕は坑道の入り口から少し離れたところで誰か入ってこないか見張る。薙鬼流と二人っきりだが話すことがない。


「……」

「……」


 なんだか気まずい。いつもは冗談めいたことを言い合っていたのだが、そんな空気ではなかった。


『リング収縮開始』


 普段なら焦るゲーム内アナウンスだが、僕らの沈黙を埋める良い役割を担ってくれた。そのアナウンスに続いてシロナガックスさんが口を開く。


『普通に出口にワンパいますね。一旦戻ります』


 了承の返事をした僕は坑道の入り口に誰か他のプレイヤーがやって来ないか警戒する。視界を忙しなく動かした。


『そっちは誰も来てないですか?』


「誰も来てませんね」


『念のため収縮する炎と同時に坑道に入ります。これで逃げ道はなくなってしまいますが、後ろを気にせず戦うことができます』


『逃げ道……』


 薙鬼流が久しぶりに言葉を発した。いや、溢したと言った方が正しいかもしれない。


 坑道の入り口にシロナガックスさんの操るキャラクターが顔を出すと僕と薙鬼流は緊張の糸を少しだけ緩ませる。


 ラウンド3の安地外を埋めるべく収縮していく炎を背にして僕らは坑道へと歩みを進めた。


 淀みなく一定のスピードで収縮する炎は最終ラウンドの時と比べて幾らかのんびりとした動きに見える。最終ラウンドになると残る敵チームの動きに集中するため、炎の収縮はほぼ間接視野で確認している。そのせいか最終ラウンドの炎の動きはとても早く感じるものだ。


 そんなゆったりとした速度で動く炎に押されるように僕らは坑道へと入った。そしてその炎が完全に坑道の入り口を塞ぐと僕らは急いで出口に向かって走った。


 一本道の入り口が塞がれたのだからもう後ろから敵が来ることはない。一刻も早く出口で待ち構えている敵の所へ向かった。その敵を倒すには時間の猶予がほしいところだ。それを稼ぐ為に僕らは急いだ。


 少し進むと坑道の真ん中に列車が連なった状態で遺棄されているのが見えた。そこにはデスボックスが散らばっており、激しい戦闘の痕跡が窺える。


『そのデスボックスは漁られてます。おそらく、出口にいるチームがやったのでしょう』


 シロナガックスさんはそう言うと、異音が坑道内に響いた。


『ドローンです!!』


 僕とシロナガックスさんはドローンに照準を合わせたが遅かった。視界にノイズが走り、移動速度が低下した上、防具のライフが半分以上減った。


 防具の回復アイテムを使おうと思ったがシロナガックスさんは叫んだ。


『前から来てます!』


 出口から銃声と共に、レヴェナントのアビリティで不死を得た赤黒いオーラを纏った敵2名が詰めてきた。


 ──オープニングゲームの再現か?


 僕とシロナガックスさんは幾らか被弾しつつも、列車を遮蔽に使って詰めてくる2人に向かって銃弾を浴びせた。


 見事彼等を追い返すことに成功した僕らだが、直ぐに復活を果たした敵が僕らに回復の暇を与えないようにやって来る筈だ。


 待ち構える僕らだが、敵はやって来ない。


「え?来ないっすね。とりあえず回復しておきま──」


 僕がそう言いかけると、今度は僕らのやって来た入り口から銃声が聞こえた。


「は!?」


 放たれた弾は、列車に命中し、カツンと乾いた音を発する。敵が来ない理由がわかった。僕らの背後から新たなチームが迫る炎と共にやって来ていたからだ。


 ──どうやってこの坑道に入った!?


 出口にいるチームは先程のように前に詰めてきたりはせず、僕らとその背後から迫る別チームがぶつかり合うのを待っている。ライフを削り合い、最後の一撃を遠くから虎視眈々と狙っているのだ。


『す、すぐに回復してください!!おそらくルーのワープゲートでここに入ってきたんだと思います!…すみません。私の判断ミスです……』


 シロナガックスさんの言葉で僕らは回復に専念する。そして考えた。ここは坑道。逃げ場のない一本道。出口と入口には敵が迫る。しかも、背後の敵の姿が先程チラリと見えた。虹色に輝くグラビティ。新界雅人率いるチームである。まさに絶体絶命だ。

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