表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人前で話せない陰キャな僕がVチューバーを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件  作者: 中島健一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/185

第17話 トレンド

~織原朔真視点~


 学校も終わり、下校している最中に考えた。


 結局音咲さんからホテルの件については何も言われなかった。それよりもむしろ車にひかれそうになったところを助けた件について感謝をされた。


 ──人から面と向かって感謝をされるのはいつぶりだろうか……


 それにやはり音咲さんはララさんなのであると実感する。変態となじり、勘違いとはいえストーカーだと疑った相手に感謝を告げるには中々の勇気がいることだ。それなのに彼女はそれを実行した。それだけでなく、火遊びという文字通り炎上しそうなことを前にして、躊躇なく僕の代わりに先生の前へ出て犠牲となった。


 結局音咲さんが良い具合に先生を丸め込んでくれたのだ。僕のVチューバー活動を助けてくれたララさんと同じように音咲さんは現実の僕をも助けてくれた。彼女に感謝をしながら、同時に僕は自分を卑下した。


 彼女にいつまでも守られてばかりではいられない。


 スマホからララさんのコメントをスクショした画像を見る。いつもお守りのように彼女のコメントを見るこのルーティーンも見直さなければならないのだろうか。


 そんなことを考えていた僕だが、もう一つ解決しなければならない問題を思い出す。それはあの時、樹の裏で聞いた声だ。


 ──どこかで聞いたことのある声……


 駅のホームで帰りの電車を待っていると、声が聞こえた。今回の声はあの時の声ではない。ただの駅の構内アナウンスだ。


『○○駅で起きました人身事故により、電車が遅れております。お客様には大変ご迷惑をおかけしております。申し訳ございません』


 ホームには多くの人が電車を待っていた。


 ──こりゃ朝の通勤ラッシュと同じくらいの人混みになりそうだな……


 僕はホームで電車を待つ間に、背後に注意しながらスマホを起動させた。学校では色々とあったためスマホのチェックができなかったのだ。


 SNSアカウントのたまった通知を覗く。DMの数も物凄い量が来ていた。


「ん?」


 まずはDMをチェックすると、


『大丈夫ですか?』

『煽られてんぞ?』

『シロナガックスに迷惑かけるな下手くそ』

『本人からDMきてないんですか?』


 僕は何が起きているのかいまいちわからなかった。そして昨日の配信を終えてからの感想ツイートのリプライに送り付けられたショート動画を開く。


 そのショート動画のタイトルはこうだ。


『シロナガックス、若手Vチューバーを煽り散らす』


 2分程に編集された動画は、僕の配信した動画画面を上手く切り抜いて、問題のシーンを写し出す。


 ダウンした僕のキャラクターの上で激しく屈伸運動するシロナガックスさんのキャラクターがいる。それを何度もスローにしながら、そして画面の色合いを白黒にしながら、面白おかしく演出している。


 ──あぁ、あれ煽られてたのか?


 僕はあの時、10時間以上の配信とシロナガックスさんと突発的コラボができたことでテンションがおかしくなっていたのだ。今、冷静にこの動画を見て煽られていたことを知った。


 しかし、だからと言ってシロナガックスさんに対して怒りは湧かなかった。プレイが下手な自分に落ち度があるし、それでも一緒にプレイができて楽しかった。


 僕はその切り抜き動画のコメント欄を見る。


 〉あの温厚なシロナガックスが煽る貴重映像

 〉このVの人がそれに気付いてないのが不幸中の幸い

 〉良い声だな

 〉流石に下手すぎだろ


 この『流石に下手すぎだろ』というコメントには更なるリプライがついており、僕を擁護するような返事がなされていた。


 〉切り抜きだけじゃなくて元動画見ろ。お前がバカにしたVもそこそこ活躍してる。


 そのコメントには元動画、つまりは僕のチャンネルへと誘うURLが貼られていた。


 また、この切り抜き動画は既に10.2万回再生されておりSNS上で軽く炎上していた。


 僕はすぐにシロナガックスさんのSNSアカウントを覗くと、例の切り抜き動画に対しての呟き、シロナガックスさんからの声明文があった。


『煽りの意図は全くありません。元々エドヴァルドさんの配信が好きでよく拝見させて頂いておりました。そんな彼とマッチングしたことによって少々舞い上がってしまいこのような行為に及んでしまいました。エドヴァルドさん含め、この動画を見て不快になられた方、大変申し訳ありませんでした』


 僕はすぐに、いや遅すぎるリプライを送る。


『動画を見てもわかるように煽られてるなんて1㎜も思ってませんし、不快になんてなってません!それよりもシロナガックスさんが自分のようなVチューバーを見てくれていることに驚いております!一緒にプレイして頂いて本当にありがとうございました!』


 そう送ると直ぐに返信とフォローの通知が来た。


『エドヴァルドさん!今度またアペでも何でも良いのでコラボしましょう!』


 僕は直ぐ様その返信にいいねを押して、シロナガックスさんをフォロバする。そして返信した。


『是非!!!!!!』


 僕の心は踊る。有名なゲーマーとネットを通して会話したことに満たされた。ふと、僕の前で軽快なステップを踏んだ一ノ瀬さんのことを思い出す。今の僕の心を身体で表すなら、彼女のようなステップを踏むのだろう。 


 そうこうしていると、電車が到着した。中には既に人で溢れている。しかし今の満たされた僕にとってそんな人混み等なんとも思わない。人と人の隙間におさまるように僕は電車内に入った。


 人の熱気と仕事や学校を終えた人達の疲れが充満している。そんな中、僕は舞い上がる気分でSNS上でトレンドになっていることをチェックした。


・無敵の人

・電車内

・放火事件

・薙鬼流ひなみ

・大谷さん

・ブルーナイツ

・七期生

・無差別殺傷事件


 物騒なトレンドワードが多い。僕は咄嗟に画面から目を逸らす。しかしその逸らした視線の先には僕と同じ学校の制服を着た女子高生がスーツ姿のおっさんに痴漢をされている光景が目に写った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ