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人前で話せない陰キャな僕がVチューバーを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件  作者: 中島健一


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第15話 声が聞こえる

~織原朔真視点~


 音咲さんの足や胸の感触、僕の首筋にかかる吐息が背筋をゾクゾクとさせ、シャンプーの香りが鼻腔を刺激する。


 ──どうしてこうなった?


 体育館裏に聳える樹を背にして、僕と音咲さんは身を寄せあって、この場にやって来る侵入者に気付かれないように隠れていた。因みに音咲さんが背を樹につけて、僕が彼女を覆うような体勢となっている。この前、僕がビンタされた時の体勢とは逆である。


「ちょっと!どこ触って──!」


 音咲さんが囁くような声で僕に告げてくるが、体育館裏の様子を探りに来た者達の声がしたので直ぐに黙る。


「いや~今時火遊びなんてしてる生徒いますかねぇ?」


「火事になったら大変ですし、取り敢えず見てみましょう」


 聞こえてきた声はどうやら教師達によるものだ。

 

 音咲さんの書いた手紙を燃やした際に出た煙が近隣住民の目にとまり、誰かが通報したようだ。


 僕と音咲さんは息を殺して2人の教師がいなくなるのを待つ。しかしテレビにも出ているアイドル、音咲さんとこんな状況になってしまっていることに僕はドキドキしていた。動画で見る彼女がこんなにも近くに、しかもこうなる前には手も繋いだのだ、ドキドキしないわけがない。


 教師達の声が今までよりもはっきりと聞こえてくる。おそらく先程まで僕と音咲さんのいた場所に2人の教師が立っているのだろう。


「こんなところに燃えカスが……これが火元のようですね……」


 雑草を踏み締め、土に靴が埋もれていくような音が聞こえてきた。おそらく教師の1人が燃えカスをよく観察しようとその場で屈んだのだろう。


 ──しまった!燃えカスがそのままだ!!


「水を撒いて消火した跡がありますね……」


 僕と音咲さんの心臓が早鐘を打つ。


「やっぱり火遊びをしていたんでしょうか?」


「水を用意しているとなると燃やすことに意味があったんだと思います」


「はぁ……」


 なんだか推理ドラマのワンシーンのようだった。


「しかしそんな用意周到の犯人はこの燃えカスをそのままにしておくと思いますか?」


「と、ということは?どういことですか?」


「我々が来たことにより焦った為、この燃えカスを残してしまった……つまり犯人はまだこの近くに息を潜めている可能性があります」


 樹からはみ出さないように身を寄せる音咲さんは僕の腕をキュッと強く握り締め、見つかる恐怖を圧し殺そうとしている。僕もこの場をいかにして逃れようかと必死に考えを巡らした。


「じゃあ、例えばそこの樹の裏とかに……」


 足音が近付いてくる。一歩一歩と近付くにつれて僕と音咲さんの鼓動が跳ね上がる。彼女の握る力も強まった。


「冗談ですよ!最近、推理物のドラマを見て真似てみたんです!」


「な、なんだそうですか!鐘巻先生も人が悪い」


「もう土も乾いていますし、とっくに教室に帰っていると思いますよ」


「じゃあ戻りますか」


「いえ、私はここの掃除をしてから行きますので、先に職員室の方で報告してください」


 2人の内1人の足音が遠ざかる。話からしてまだその場にいるのは鐘巻先生、僕らの担任の先生だろう。


 僕と音咲さんは安堵の息を漏らしたがしかし、鐘巻先生が口を開く。


「そこにいんだろ?誰にも言わねぇから出てこいよ」


 安堵させてからのこの緊張はホラー映画のように僕と音咲さんを震え上がらせる。


 ──どうしよう……ここで僕が出ていけば、説明を迫られる。その際に声を出せば音咲さんに僕がエドヴァルドだってバレる恐れがある……先生は誰にも言わないと言っているが、僕は大人を信じていない……


 その時僕は声を聞いた。今までこんな幻聴等は聞いたことなかったが、その声は僕にとって慣れ親しんだ声のようにスッと心に入ってきた。


『俺に任せろよ』


 僕はその声を聞くと身体が勝手に動き、樹の裏から表へと躍り出ようとするが、音咲さんがそんな僕より先に先生の前へ出た。


「ちょっ!!」


 僕の戸惑いの声が一瞬吹き出たが、音咲さんはそれに構わず鐘巻先生と対峙した。


『ちっ、早く俺に委ねれば良いものを』


 またしても声が聞こえた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 燃やした手紙は、小さな紙片に書いたものではないのでしょうか 文字量からして広げても、手のひらの大きさ以下でしょう だとするならば、数秒程度で燃えて尽きてしまう煙を発見できるものなのか …
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