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第146話 #キアロスクーロ

~音咲華多莉視点~


 お父さんとの舌戦を終えてから幾日か経った。私は学校と収録、ダンスレッスンにボイトレといつにもまして鍛練に励んでいた。目標ができた為に、雑念が振り払われた。


 しかし、雑念というか織原に対する気持ちが揺れている。


 ──織原がエドヴァルド様なのか……


 林間学校の際、愛美ちゃんはシロナガックスとして、アーペックスの大会に出られた。つまり織原も同じようにして出られたということだ。


 ──もし、もし仮に織原がエドヴァルド様だとしたら……そ、想像できないぃぃ~~!!


 そして今日も美優がお弁当を織原に作り、一緒に食べていた。私と茉優はそれを邪魔しちゃ悪いと思い、少し離れて食べた。愛美ちゃんはお昼休みになると、生徒会の集まりに顔を出さなければならない為、最近お喋りできていない。


 そんな忙しい毎日を過ごしていた私だが、今日は楽しみにしていることがある。名古屋でのLIVEのフォーメーション練習を終えた後、私は帰宅し、ベッドに横になる。そしてスマホを眺めた。楽しみにしていたこととは、これからシロナガックスこと愛美ちゃんとエドヴァルド様、と他1名とのコラボ配信があるからだ。


 3人による雑談と視聴者からの質問コーナー等を設けているようだ。


 ──質問を募集していたけれど、私は忙しくて投稿できなかった……


 枠は3人の中で1番チャンネル登録者の多い薙鬼流ひなみというアイドルVチューバーのチャンネルで行われる。


 友達である愛美ちゃんが私の大好きなエドヴァルド様とコラボするなんて今思えば不思議な気持ちだ。


 もしかしたら美優や茉優も私がテレビに出ていると同じような気持ちになっているのかもしれない。


 オープニングが始まった。薙鬼流という角の生えたキャラクターが本来のビジュアルよりも子供の描いたような絵柄で、画面の中央に佇みながら、ほっぺをモチモチと上下に揺らしていた。


 既にコメント欄にはたくさんのコメントが流れている。


 〉久し振りだ!!

 〉わくわく

 〉楽しみ~

 〉モチモチ


 私もコメントを打とうとしたが、チャンネル登録者でないとコメントが打てなくなっている。


「くっ…小癪な……」


 私は渋々薙鬼流ひなみのチャンネルを登録した。


 すると、声が聞こえる。


『あ、あ~。聞こえる?』


 エドヴァルド様のいつもの良い声が聞こえた。


『はい!聞こえます!次、MANAMI先輩』


 次に溌剌とした薙鬼流ひなみの声がした。


『はい。もしも~し』


 愛美ちゃんの声が聞こえる。


『可愛い!てかキアロスクーロなんだからMANAMI先輩はシロナガックスの声に変えた方が良かったんですかね?』


 相変わらずモチモチした薙鬼流ひなみが画面の中央にいる。まだオープニングが終わっていない。


 コメント欄はざわついていた。


 〉可愛い!

 〉ミュート外れてるよ

 〉ミュートw

 〉声聞こえてるよ


『あ!すみません!ミュート外れてて今のやり取り全部聞こえてたみたいです。アハハハ』


『アハハじゃねぇだろ!何か変なこと言ってなかったか!?』


 エドヴァルド様の慌てた声に愛美ちゃんが返した。


『たぶん大丈夫だと思いますけど……』


『あ、ていうかオープニングあけますねぇ』


 画面が切り替わる。画面中央に小さな穴があく。その穴が画面全体に広がると、エドヴァルド様と愛美ちゃん、薙鬼流ひなみの3人が画面に写った。


 エドヴァルド様と薙鬼流ひなみはVチューバーとしていつもの様相を呈しているが、愛美ちゃんは写真だ。制服を着込み、左目を挟み込むようにピースをしている。


 正直言って、友達である愛美ちゃんがエドヴァルド様とコラボすると知ってから、もしかしたら自分が愛美ちゃんに嫉妬してしまうのではないかと心配していたが、しかし……


 ──え、愛美ちゃんの宣材写真可愛い過ぎる……


 コメント欄も私の意見に同調していて、嫉妬どころではなかった。


 〉MANAMIちゃん可愛いすぎ

 〉シロナガックス、クっソ可愛いw

 〉キアロスクーロのヒロインやな

 〉かわいい

 〉てか薙鬼流もJKだし、シロナガックスもJKか


『MANAMI先輩も確かにかわいいけどぉ、私はぁ~?ほらぁ?かわいいでしょ~?』


 薙鬼流ひなみは首を傾けながら、ウインクしたり、色々な可愛い表情を試みるも視聴者達の反応は薄い。


 〉早く先進めよっか

 〉エドヴァルド可愛い

 〉エドがかわいい

 〉エドヴァルドの方がかわいい


『おい!っかしいだろ!!MANAMI先輩はわかるけどエド先輩にかわいさで負けんのはおかしいだろ!!』  


『まぁまぁ』


 エドヴァルド様が薙鬼流を宥める。


『でもでもぉ、エド先輩のリスナーがエドの民略してエド民でぇ、私のリスナーはひな民なわけでぇ、とっても運命感じません?』


『いや、ちなみにシロナガックスさんことMANAMIさんのリスナーはMANA民だけどな』


 〉俺MANA民になろうかな

 〉俺もMANA民になろう

 〉安心しろ。俺はHINA民のままやで


『安心しろじゃねぇっだろ!!ひな民のひなをローマ字にすんなよ!!それほぼMANA民やんけ!!てか自己紹介もまだやってない!!早くやらなきゃ!!もうエド先輩が変なこと言うから──』


『お前がミュート忘れたとこから全てが始まってんだよ!!』


 3人の自己紹介が終了し、それぞれの近況から話し始めた。


『最近はもうずっとCZカップに向けて練習してます』


『MANAMI先輩、配信はやらないんですか?』

 

『ゴースティングが酷い時があって。配信するならCZカップが終わってからにしようかと。あと文化祭の取り決めが色々とあって忙しかったりして──』


『文化祭!?そっかぁ、MANAMI先輩のところも文化祭の季節なんですよね!!忘れてた!えっ、行っても良いですか?』


『良いよ!今度チケット渡すね!』

 

『あっ、チケット制なんですね!?』


『そう。うちの学校はチケット制で、その、華多莉ちゃんもいるから生徒1人のチケットの上限を減らしたりしてるんだ』


『かたりん!!』


 〉その高校行きてぇ~

 〉かたりん!!

 〉来年その高校の倍率エグそうだな

 〉高校生いいよなぁ~

 

 私の話題になった。


 ──コメントする?いや、ここでコメントしたら配信の雰囲気を壊しちゃう気がする……


 私はコメントするのを我慢して視聴する。


『かたりんと言えばやっぱり、エド先輩でしょ~』


 エドヴァルド様に話がふられた。


『ビックリしたよね。あんなに反応してくれると思わなかったからさ。でも凄く嬉しかった』


 ──きゃぁぁぁぁぁぁ!!!エドヴァルド様が嬉しがってるぅぅぅ!!!


 私はベッドに横になった身体をぎゅっと丸めて喜びを噛み締めていた。

 

『あれは凄かったですよね!それにあれから周囲のVチューバーを見る目が変わったというか……』


『わかる!』


 薙鬼流ひなみとエドヴァルド様が私の話で盛り上がっていると、


『た、たぶん…この配信も華多莉ちゃん見てると思う』


『え!?本当に?かたり~ん!!見ってるぅ~』


『やめとけ!それに忙しいからリアタイしてないんじゃ……』


 〉かたり~ん!!

 〉かたりん見てる~?

 〉かたりん!!

 〉かたりん、見ってる~?


 私はコメントを打った。ララのアカウントではなく、私自身のアカウントでだ。


 〉見てます……


『やっぱり見てた!華多莉ちゃん!!』


『えっ?かたりんがコメント打ったってことは私のチャンネルに登録してくれたってこと?やばっモデレーターつけとこ!!』


 〉うおぉぉぉぉぉ!!!

 〉これでかたりんもひな民だぁ!!

 〉かたりんもよう見とる

 〉囲え!囲え!!

 〉かたりんも俺達と同じかぁ


『え~盛り上がってきたところで、募集していたリスナーさんからの質問コーナーに写りたいと思います!』

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