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第129話 ピュアブラフ

~霧声麻未視点~


 私はスコアを見た。現在1位は私の嫌いなパウラ。今の獏さんとの駆け引きだって、初手で神楽坂君との勝負に運良く勝ったから勝てたのだ。


 ──やはり運だけ……


 人生の運の総量は決まっているなんてよくきくけど、そんなことはない。私は運がなかった。というか運の良くない顔で生まれてきたんだ。運の良い顔の奴はそのまま、特に苦労もすることなく成功していく。人生イージーモードとはよく言ったものだ。


 顔の良い女の性格は悪いと言うが、男との交際や交遊関係等、たくさんの経験を積むんだ。顔の悪い女はそんな経験をする機会すらない。そうやって顔の悪い女はいつの間にか大人になるにつれてひねくれていく。どっちが性格悪いのかは一目瞭然なんだよ。


「えへへ、やったぁ~」


 この女、パウラの男に媚びたような声が私を逆撫でる。


 次のゲームが始まった。それぞれがアンティを払うと以下のスコアだ。


  パウラ・クレイ

  →22150


  霧声麻未

   →9750

 

 D天久カミカ

   →9550 


 SBエドヴァルド

  →9550

  

 BB積飛獏

  →8450


 そして各プレイヤーに2枚のカードが配られた。私のカードは……


 ♥️J

 ♦️7 


 ──微妙……


 アンダーザガンであるパウラの番からだ。パウラは珍しく「コール」を宣言する。


 パウラ・クレイ22150→21950 

 →200


 次に私の番だ。私も「コール」を宣言する。


 ──そろそろ勝負にいかないと……


 霧越真美9750→9550

 →200


 次にカミカさんだ。カミカさんは「フォールド」を選択した。ここまでカミカさんは一度もゲームに参加していない。その次のエドヴァルド君は「レイズ」を選択した。


 SBエドヴァルド・ブレイン9550→9250

 →100+300=400


 ──ここでレイズはいやだな……


 私はエドヴァルド君の手札が強いと判断した。そのため、次に自分の番が回ってくればフォールドを選択しようと考える。そして次の番、BBの獏さんは何故だか笑った。


「ハハハハハ!!エド、お前の手札弱いだろ?」


─────────────────────


~織原朔真視点~


 積飛獏。


 生粋のギャンブル配信者だ。麻雀配信、スロット配信、競馬配信、そしてこのポーカー配信をしたり、RPGゲームをすれば運要素のある技を多用するその配信スタイルによって付いたあだ名はギャンブル配信者、ではなくギャンブル廃人者だ。


 そんな獏さんが僕をこの大会に誘ってくれたのは嬉しい。ギャンブラーの獏さんの目に、僕は賭けるに値すると判断されたようだ。


 しかし実際にゲームが始まると、彼の恐ろしさに僕は震える。


「エド、お前の手札弱いだろ?」


 僕の手札はこれだ。


 ♠️9

 ♦️2


 確かに弱い。パウラちゃんの『コール』から始まり、麻未さんも『コール』、カミカさんは『フォールド』ときたら、ゲームに参加する2人のカードは弱いのだろうと今までのゲームから推測するとそう判断できる。そこで僕の手は弱いが敢えての『レイズ』を選択したのだ。


 しかし、それを見透かすようにして積飛さんがレイズを仕掛ける。


 BB積飛獏8450→7850

 →200+600=800 


 これにより先程『コール』したパウラちゃんと麻未さんは『フォールド』した。


 僕の番が回ってきた。そして僕の思考を乱すように獏さんは口を開いた。


「こいよ、エド」


 獏さんの方が所持しているチップは少ない。僕は宣言した。


「別に良いっすよ?コール」


 エドヴァルド・ブレイン9250→8850

 →400+400=800


 僕は元々場にある400のチップから更に400のチップを出して合計800のチップをベットした。


 獏さんがレイズした掛け金と同額となった為、3(フロップ)が捲られる。


 ♦️J

 ♦️3

 ♣️8


 ストレートも狙いづらい。ディーラーボタンの左隣、つまり僕からの番だ。相手に煽られ、ここで掛け金を上げずにチェックをかますよりはベットを宣言した方が良い。弱い手であると獏さんが確信を付いたのか、僕を揺さぶっただけなのかわからないが、幸い場にあるカードは弱いカード達だ。これで更なる揺さぶりがかけられる。


「ベット」


 エドヴァルド・ブレイン8850→8450

 →400


 するとまたしても獏さんは笑い飛ばす。


「良いね、エド。だけどお前のプレイスタイルは練習配信で研究済みだ。お前は言っていたな?弱い時こそ強くみせる、それは人生と一緒だって」


 するとこのゲームから降りたカミカさんが口を開く。


「なにそれ!?かっこよ!!」


 僕はカミカさんを無視して、獏さんに言った。


「それがどうかしたんすか?」


「場には比較的弱いカードで埋まっているが、何もヒットさせてないだろ?」   


「それはどうっすかね?」


 テキサスホールデムでは、会話は自由だ。海外のプロプレイヤー達の中には全く喋らないでプレイする者もいれば、めちゃくちゃよく喋る者もいる。獏さんは後者だ。こうやって揺さぶりをかけてくる。


「じゃあこれでどうする?」

 

 そう言って獏さんは『レイズ』を宣言した。


 積飛獏7850→7050

 →800


 次で『コール』して4枚目(ターン)を捲って役を作ったとしてもたかが知れてる。ここで降りれば傷は浅いが相手を調子づかせてしまう。それに獏さんも僕と同様、ブラフをかけているのかもしれない。


 ──くそっ…どうする?

 

──────────────────────


~田中カナタ視点~

 

 エドヴァルド8450   積飛7050

 ♠️9          ♣️K  

 ♦️2          ♠️J



 ♦️J♦️3♣️8


「うわぁ、これどうする?エド君はピュアブラフをかましてるけどねぇ。リスナーの皆には聞こえづらいかもしれないけど、今向こうの卓では、獏がエド君煽ってんのよ。でもこれ、パウラちゃんと麻未さんがコールして更に、エド君がレイズをして、そして獏の手札が強いからアイツ話し掛けたんだろうね。相変わらず上手いというかなんというか……」


 するとエドヴァルド君は『フォールド』した。


「うわぁ!そうだよね。てか寧ろ偉いわ」


「よく降りれたな……俺なら一気にオールインしてたかも……」


 俺は詩音の言葉に頭を抱えるも、向こうの卓の会話に耳を傾けた。


『おんやぁ?俺の言ったことがあってたってことかなぁ?』


『……』


  パウラ・クレイ

  →21950


  霧声麻未

   →9550

 

  天久カミカ

   →9550 


  エドヴァルド

  →8450

  

  積飛獏

  →10500 

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