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第128話 豪運天使

~積飛獏視点~


 パウラ・クレイ。


 デビューしてまだ4ヶ月と少しだが、その可愛らしい声と神絵師によって生み出された姿とが見事にマッチしたことにより、現在同期の薙鬼流ひなみと伊手野エミルを超えるチャンネル登録者数、88万人となっている。


 そんな彼女はゲーム実況やエレクトーンの演奏配信等をしている。久し振りにブルーナイツに清楚枠が入ったかと思いきや、彼女のとあるゲーム実況の切り抜きが話題になった。それが魚娘というソシャゲのガチャ配信だ。彼女はコツコツと貯めた無料分の石を使ってSSRのゴールデンアロワナを狙った配信をするつもりだったのだが、SNSでは無料分だけで手に入るわけないとか、身の程を知れとか、アロワナちゃんをなめるなとか過激な発言が散見された。しかし彼女は、貯めた石すらも使わずに初回無料のガチャで見事ゴールデンアロワナを手に入れたのだ。それだけでなくSSRのシーラカンス、通称ラカンちゃんも彼女は貯めた石を使って手に入れた。ちなみに俺はアロワナちゃんだけで560連している。他にもミレニアムクエストというRPGゲームに出てくるミニゲームのカジノでもスロットで開始早々ジャックポットを当てたりとその武勇伝は数知れず。


 そこで付いた彼女の2つ名は『豪運天使』だ。このポーカー大会に相応しいではないか。そしてその豪運天使が神楽坂詩音とかいう大会クラッシャーを見事一撃で仕留めたのだ。


 俺は今一度、場に集中した。 


 テーブル中央にあるチップがパウラ・クレイの座する所に吸い寄せられる。アンティ、つまりカードが配られる前に支払う参加費のことだが、それを各プレイヤーが50支払う。6人合計300にスモールブラインドである霧声麻未がアンティ50の2倍、100を強制的に支払い、更にその左隣のビッグブラインドであるカミカさんがそのまた2倍の200を支払う。合計して600のチップがゲーム開始前のテーブル中央に集められる。そこから詩音の持ち金、9950と共にパウラの元へ吸収される。


 ──つまり現在パウラ・クレイの所持金は20500だ。この差はデカイが、見たところパウラは素人。あの豪運天使の試合運びを注視しつつも、俺が最も注意すべき相手はやはりコイツ。


 エドヴァルド・ブレインだ。


 次のゲーム。ディーラーボタンが左隣に移動するため、


  パウラ・クレイ

  →20500


 D霧声麻未

   →9850

 

 SB天久カミカ

   →9750

 

 BBエドヴァルド

  →9950

  

  積飛獏

  →9950


 次のゲームは俺から始まる。UTG、アンダーザガンと呼ばれる最も不利な位置だ。アンティである50チップを支払い、残るチップは9900。


 配られた2枚のカードは、


 ♥️9

 ♣️9


 9のポケットだ。悪くない。アンダーザガンという他のプレイヤーの動向を知れない不利な位置に於いて勝負をするなら強い手、最低でも7のポケット以上でないと勝負すべきでないとセオリー的には言われている。


 俺はエドヴァルドの方をチラリと見る。


 ──ここは俺がセオリーギャンブラーであることをアピールすべきか?それともビッグブラインドであるエドヴァルドを勝負の場に無理矢理引き連れても良い……


「レイズ」


 俺はビッグブラインドであるエドヴァルドの掛け金の倍である400をテーブルに置く。


 積飛獏9900→9500

 →400 


 次に先程豪運を見せつけたパウラだが、俺のレイズに更にレイズをかましてきた。


「レインズです!」


 パウラ20450→19650

 →800

 

 ──大手飲食チェーンの会社名みたいな言い違いしやがって!しかし、こうなればリバーまで持っていってセオリーで戦う奴だと印象づけさせてやろう。


 次の麻未さんとカミカさん、エドヴァルドはフォールド。再び俺の番だ。テキサスホールデムは掛け金が同じになるまでカードは捲られない。


 俺は宣言する。


「コールだ」


 積飛獏9500→9100

 →400+400=800


 3枚のカードがオープンする。


 ♣️K

 ♦️A

 ♣️3


 俺は心の中で舌打ちした。ディーラーボタンの左隣のSBとBBが降りたため、アンダーザガンである俺からまた始まる。


 ──AとKかよ……


 これでパウラの持っているカードにAやKがあれば俺は負ける。しかしその考えは相手も同じ、俺の手の中にAかKがあると思わせよう。


「ベット」


 積飛獏9100→8700

 →400

 

 しかしパウラは臆せず仕掛けてきた。


「レイズです!」


 パウラ・クレイ19650→18850

 →800


 可愛らしい声だが、全く可愛くない言葉に俺は歯噛みする。


 ──コイツ……


─────────────────────


~田中カナタ視点~


 パウラ・クレイ

 ♠️K

 ♦️K


 積飛獏

 ♥️9

 ♣️9


「いやーこれは強い!流石ブルーナイツの豪運天使!さっきと同じKのスリーカード!獏は勝負から降りられるか?」


 神楽坂詩音が言った。


「俺だったら降りられないですねぇ……」


 詩音は開始早々死亡した為、こちら側に来てもらい賑やかしをしてもらうこととなった。


 場にあるカードを使って、パウラちゃんはKのスリーカード。次の4枚目、5枚目が捲られても獏の勝率はかなり低い。


「獏も悪くない手なんですけど、アンダーザガンという位置が良くなかった。無難にチェックをしてもよかったけど、相手を揺さぶる為にはベットで正解だと思うんですよね。しかしその揺さぶりにパウラちゃんは乗らずに更にレイズを宣言──」


 俺が言い終わる前に獏はフォールドを選択し、次のゲームに移行した。


「おおぉぉ!!」


 驚嘆する詩音に俺は言った。


「おぉ~~!えらい!誰かさんのお陰で大量に獲得したチップを使ってパウラちゃんはブラフをかけていると思っても良いんですけど、獏は読み切りましたねぇ」


「はいはい、どうせ俺のせいですよ……」


 パウラ・クレイ

  →22200


 D霧声麻未

   →9800

 

 SB天久カミカ

   →9600

 

 BBエドヴァルド

  →9700

  

  積飛獏

  →8700

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