12話「貧しい新婚生活」ざまぁ
――アルゾン視点――
王子様と結婚したら、王宮で贅沢な暮らしができると思っていた。
なのになんなのよこれは!
リカード様は一度城に帰ったあと、王位継承権を剥奪され戻ってきたり
王子じゃなくなったリカード様なんて、顔以外に長所がないじゃない!
リカード様は毎日あたしの顔を見てはため息をつき、「こんなはずじゃなかった……」と言ってぼやいてる。
体調不良を理由に使用人はみんな辞めてしまった。
農民は「作物が取れなくなった……」と言って、他の土地に引っ越してしまった。
「商売がうまく行かなかった……」と言って、領地で商いをしていた商人までいなくなってしまった。
お母様はいつもヒステリックに怒鳴っている。
お義姉様がいなくなったから八つ当たりもできない。
もうほんとつまんない!
こんなはずじゃなかったのに!
☆☆☆☆☆
リカード様の話ではお義姉様は精霊の愛し子だったらしい。
しかも精霊二人と魔法使い一人に愛されていたらしい。
あたしたちが今苦しんでいるのは、お義姉様を虐めたかららしい。
何よそれ、意味分かんない!
なんなのよあの女!
精霊に愛されてるなら、愛されてるって言いなさいよ!
お義姉様が精霊に愛されてるって知っていたら、虐めたりしなかったのに!
精霊を使ってこんな嫌がらせをして!
しかもお世話になった人(お母様やあたし)にお礼も言わないで勝手に家を出て行っちゃうなんて……信じらんない!
何で精霊に愛されてるのが、ヒョロガリのお義姉様なのよ!
なんで可愛いあたしじゃないのよ!
日に日に貧しくなっていく伯爵領で、毎日の食事にも事欠くようになってきた。
今日は一つのパンを巡ってお母様とリカード様と喧嘩した。
お母様とリカード様と顔合わせるたびに喧嘩している。
無様だわ。
そして死ぬまでこの生活は変わらない……ほんと最悪。
お義姉様の靴の裏でも何でも舐めるから、あたしにもお義姉様のおこぼれを頂戴よ……!
そんな願いは叶うはずもなく……。
今日は一切れのチーズを巡って、お母様とリカード様とケンカすることになりそうだ。
お義姉様、あたしが悪かったわ許して……!
もしお義姉様に会えたら、土下座して許しを請おうと思う。
だがお義姉様を虐げたあたしたちは、精霊に見捨てられている。
あたしたちが、お義姉様に会うことは二度となかった。
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