「佐助、そなたは……」
ついに天守閣が見えてきた。そこかしこで戦闘は続いているのだが、
「殿」
幸村が声を掛けてくる。
「どうだ、家康殿は見つかったか?」
「まだ見つかっておりません」
「政宗殿は」
「政宗殿も見つかってはおりません」
「そうか」
その時、見上げた天守閣に、火の手が上がり始めているではないか。
「あの者達は何をしているんだ!」
本丸にも火矢隊が矢を放っている。
「やめろ、何をしているんだ!」
だが辺り一面死闘が展開して、もうおれの命令が行き届かなくなっている。
「幸村、やめさせろ」
「はっ」
混乱の中、逃げようとした一群が捕らえられたが、家康殿でも政宗殿でもなかった。
「探せ、なんとして探し出すんだ!」
おれは家臣達に家康殿を見つけろと、必死で叫んだ。家康殿が見つからなければ、この戦は終わらないんだ。だが火の手はますます広がっていく。おれは燃え上がる天守閣を呆然と見つめていた。
「くそ、何のためにここまで頑張ってきたんだ」
崩れ落ちる天守閣を見つめながら、おれはつぶやいていた。
肝心な家康殿はついに見つからなかった。伊達殿も秀忠殿もおなじだった。
その後の首実検は主に幸村に任せた。あまり見たくない光景だ。
才蔵を亡くし行く当てに困っているだろうからと、佐助は大阪城に引き取ることにした。
いや、彼女がそう言った訳ではないが……
多分そうだろうと思って。
きっとそうだと思う……
大阪城の一室でおれは佐助と向かい合い座っている。
この娘が本当にがあの佐助なのか。
身ぎれいな衣装をまとい、薄く紅をさしている。
「佐助」
「はい」
「あの、……なんだ、……その着物は、綺麗だな」
「…………」
「あ、いや、違った」
「…………」
「そなたは綺麗だ」
佐助は下を向き、笑った。
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