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才蔵は不敵に笑った。

 戦闘は何の前触れもなく始まった。寝返った駿府や掛川の隊と、右翼を守備していた盛親隊が戦闘状態に入ったとの知らせを受ける。それなら敵二隊の兵力は合わせて九〇〇〇だろう。

「才蔵」

「はっ」

「行長に隊を分けさせ、三〇〇〇で盛親隊を支援するように伝令を出せ。それから正則隊は戦場を大きく迂回して敵の背後を突くようにと伝えろ」

「分かりました!」


 次は幸村と長政の隊が、前進して来た伊達隊と戦闘に入るとの知らせがーー

「伊達隊の兵力は?」

「二〇〇〇〇から二五〇〇〇ほどかと」

「左近」

「はっ」

「五〇〇〇を率いて幸村らの背後で待機し、命令がなくとも、苦戦が見えたら支援せよ」

「分かりました」

 幸村と長政の隊は伊達隊と激しい銃撃戦になったようだ。その後は、すさまじい乱戦に突入した。


 さらに左翼を守る義弘殿の隊が忠興隊から攻撃を受けているとの情報だったが、義弘隊の背後にいた吉継隊がすかさず援護に入ると、今度は左横から一豊隊が突撃して来た為、敵味方の区別がつかないほどの混戦状態だと。

「長政」

「はっ」

「兵四〇〇〇を率いて左翼に回れ。状況を見て義弘殿や吉継隊の援護に入るんだ」

「かしこまりました」

 義弘殿は負傷して後退し始めたが、代わりに長政隊が割って入ると、激闘の末一豊隊は崩れ去り戦線を離脱したという。


 中央付近で清正隊の前に陣を構え、状況を見守っていた忠吉隊だが、清正隊に襲い掛かると撃退された。それを後方で見ていた秀忠が怒り、自身の隊全軍に清正隊攻撃を命じたようだ。

「嘉明は、一五〇〇〇を率いて清正隊を支援せよ」

「はっ」

「安治は六〇〇〇で後方に待機。状況を見て討って出ろ」

「分かりました!」

 

 秀家隊は目の前の直政隊を銃撃、攻撃に移ると、数に劣る敵は徐々に後退しているようだ。

「才蔵」

「はっ」

「秀家に前に出過ぎるなと言え!」

「分かりました」

「それから横の清正隊が苦戦しているようなら、支援しろと伝えろ」

「はっ」

 だが戦線はどこも優劣がつけがたく、膠着状態が増えてきた。


「才蔵」

「はっ、これに」

「今すぐ敵本隊の近くにまでもぐり込めるか?」

「必要なら私がまいります」

「ならば、豊臣方に寝返った者が居ると噂を流して来い」

「それならば、お任せください」

 才蔵は不敵に笑った。

 

 やがて徳川方の大名たちに動揺が走る。中には早くも離脱しようとするものまで現れる始末。家康はそれを鎮めようと手を尽くすも、なかなか収まらない状態だと才蔵は知らせて来た。

「勝永、兵二〇〇〇〇を率いて徳川殿本陣を突け」

「はっ」

「幸長、一五〇〇〇を率いて、勝永の邪魔をする者どもを蹴散らせ!」

「はっ!」

「殿」

「才蔵は何処だ」

「殿!」

 家臣が何度も声を掛けてくる。

「なんだ!」

「そんなに兵を出したら、殿を守る者が居なくなります」

「分かっておる。才蔵、安治に戻れと連絡せよ」

「分かりました」

 だがこの時点で家康本陣突入のチャンスが来たと、そればかりに気を配っていたからなのだが、やはりおれ自身の周囲が手薄になり始めていたのを甘く見ていた。

 豊臣本陣の守備が極端に薄くなっているのを見た伊達の別動隊が、急襲して来たのだった。

「殿!」

「佐助」

「早くお逃げ下さい」

 だが、もう遅い。既に周囲は数千の伊達隊で埋め尽くされている。それに対して動ける味方の兵は五〇〇か一〇〇〇か。

「くそおっ!」

 おれは刀を抜いた。

 佐助も刀を構え、おれの背後に居る。

 後はもう夢中で刀を振り回していた。

 兜がゆがんで落ちそうになっていたおれは、敵雑兵に槍で頭をぶん殴られ、ひっくり返って気を失った…………


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