いつからこんな感じなんだろうか。いまさら考えてもいつからなんてわからない。誰もが一度は考えるが誰も知らない。その問いに答えはないかもしれない。だけど知らなくてはならない。答えを問わなければならない。それこそが自分自身がいまここにいる存在理由のひとつだからだ。なにもないこの白い世界でただ一人でしなければならないことだ。あの子のためならもう迷いはしないさ___
___久々に見たなこの夢は。よく周りを見渡したらいつもみる光景だ。いつもの教室。いつもの時計の針。いつもの眉間に皺をよせ鬼の形相で見てくる教師。科目はなんだっけ?
「お前は、いつも寝てるよな。そんなに先生の授業が嫌いか。成績が悪いくせによく眠れるな。次のテストが楽しみだな、授業中寝るってことはテストに自信があるんだろ。」
なにを言ってんだこの教師、言いたいことはわかるけどそれにいたる結論がわからん。
「一般の学校の勉強は必要最低限の内容がわかれば就職できます。」
「そんことは知っている。お前はこの学校が進学校だと知っていてもくだらない発言をするんだな。」
進学校のこと忘れてた。周りの生徒も馴れたのかしらないが黒板を向いてペンをはしらせてる。寝起きだから頭が働かないから許してほしいな。
「訂正します。就職志望なのでこれ以上覚えるきはありません。進学したら能力がどうとか多種族がどうとか面倒くさいので。」
「はぁ。」
「なにしても平常通りです。」
まぁ、教師も諦めるかな。ここまでやる気が無い人間がこれ以上何教えても意味がないと知ってほしい。能力がない人間は社会の藻屑で十分だ。
「あとで職員室に来い。」
そう言いながら授業に戻った。授業は世界史で第二次世界大戦をやっていた。
授業が終わり昼休みになった。学生寮にある食堂で口論してる学生がいた。内容なんて興味ないし食事中の音楽として聞き流しながらパンをかじった。
「いつも君はパンを美味しく食べてるね。そんなにそのパン美味しいかな?かわいいから許す!」
「なにがかわいいかわかりませんが距離とってくれませんか。公衆の面前でそういう行動は問題があります。それにない胸を押しつけても何もおきませんっ!!」
人間とは思えない威力の攻撃が腹にくる。そういえば先輩は人間と竜人のハーフだったこと忘れてた。
「女性にむかって体のことを言うなんて失礼だね。次言ったらあばら骨一本貰うね!」
ただの人間があんたに勝てるわけねぇだろ。少しは頭を使ってくれ。
「それにしても先輩はどうしてこんな一般の学校いるんですか?能力持ちだったからそっち系統の学校へ行けばいいじゃないですか。」
「んー?そうだね、この学校を選んだ理由はないけど私の感がここがいいっていうんだよ。」
「竜人の感はバカにできませんしね。昼食終わったので職員室に行ってきます。世界史の北村教諭に呼ばれたので、これで失礼します。」
腕の拘束が弱くなったから席を立とうとすると腕を捕まれた。
「その件の話は私が終わらせといたからもういかなくていいよ。それより、こんなに優しい先輩のことを下の名前で呼んでほしいな。いいでしょ?」
本当に何者なんだこの人。新手のストーカーかなにかなのか。
「では、雪代先輩はこの時期なぜ学校に来なくていいのにきていますか。」
「君に会いに来ただけだよ。それに、下の名前で呼んでよ。骨、嚙み砕くよ。」
裏がある。会って数ヵ月でこの人は他人に優しくするようなことはしない。そんなの最初からわかってる。だがなぜ、ここまでわかりやすい言い方をするのだろうか。周りから見たら恋人同士に見えるかもしれないがこの人が汚名を被ってまでするようなことなのか。絶対にないだから裏がある。詮索は好きじゃないがやむを得ないか。
「ところでせ「君の記憶は戻ったの?」!?」
いきなり記憶の話はずるいだろ。三年前以前の記憶は何一つとして覚え出せないがこの場所でする話ではない。それほどまで詮索されないのかあるいは無い記憶の中に彼女の求めるものがあるのか。
「すみません。全く覚え出せません。」
「いいよ。覚え出すまで一緒に頑張ろ!」
その時の雪代楓夏の顔はとても哀しく見ることができなかった。
放課後の夕日はいつみても綺麗だ。不思議と安らげるそんな気がする。
「いたいた。ここにいたのかずっと探したんだぞ。寮に戻ってこないし、屋上は出入り禁止だろ?全く悪いやつめ、早く戻ろうぜ赤点同士よ。」
「お前バンジージャンプ好きだろ。屋上からやってみろよ。ひもは俺が用意するよ。麻ひもでいいか?」
「待て、何それ殺す気なの普通バンジージャンプは麻ひもじゃないよね。バンジーはゴムひものことだよね。」
面倒い奴がきた。小学校の時から一緒だったという佐藤拓真だ。
「それに好きじゃない、一度もバンジーやったことないしここ屋上じゃん。五階建ての建物の屋上からやったら確実に死ぬじゃん!」
「いいから早く飛び降りろよ。そのまま頭から落ちて死ね。」
「小学校からの仲だろ。死ねと言うなよ。まぁ、お前は記憶無いけども元々そんなんじゃなかったよ。いつからそんな思考になったんだよ、ほんとによ。」
なにを感じたのか喋るのをやめて夕日をみる。やっぱりみんなそうだ。俺のことを少しながら知っている人達は哀しい顔する。意味はわからない。有耶無耶な考えを頭の隅へ置き、考えるのをやめた。そのまま時間が過ぎるのを待った。何時になく長く何時になく短い時間だった。
なんだこの状況は。人混みの中、理解するのにどれほどの時間を使ったのだろうか。寮の看板に張り出されたプリントに能力持ちで有名な中学生の写真があった。能力は記憶操作らしい。最近は人の記憶を形にしてそれを保存できるようになったとか。そんなに有名なら会ってみたいとは思うが、記憶を取り戻すことはできないと知ってる。彼女は何らかの後遺症で記憶の復元ができないらしい。もし、できたとしても彼女に何らかの影響があるとわかる。前の週刊誌で読んだから間違えない。それにしても男が多いな。全員ロリコンなのか?
「 」
「誰だ!?」
後ろを振り返っても誰もいない。誰かに呼ばれた。でも、俺の名前じゃなかった。それでも反応してしまった。まるでその名前こそが本当の名前のように。この違和感はなんだ。何かが始まった気がする。この日常を終わらせる何かが今近づいてる。苦虫をかみつぶしたような気分だ。世の中の能力者は何のために生まれてきたのか。持つ者と持たない者の違いは何なのかを問題として出された感じだ。答えは不明。気持ちを変えるべく写真に視線を戻すと鈍器でおもいっきり殴られたかのような激痛が頭にはしった。そしてすぐに痛みは消えた。さっきの痛みは記憶に関わるものだろうか。または別のものだろうか。答えは決まってる。それにしても何故、プリントの隣に今現在の校内全員の成績が張り出されている。しかも入り口近くの中央廊下に。嫌がらせ過ぎるだろこの学校。俺の学年順位は下から五番目。佐藤は上から七番目。謎だな、赤点同士よ。部屋戻ったら覚えとけ。
人混みの間を通り彼は部屋へ向かう。奥へ行けば行くほど静かになる。最初からその場所に人がいないように。彼の顔には何も写らない。物体も人さえもなにもかもだ。彼はいつも一人でいる。まるで一人でいることが義務であるかのように。私は知っている。彼は何のために記憶を取り出したのかを。