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第四話 星に願いを

ちょっとタイトル変えて見ました。(11/24)

やっぱり戻しました(6/17)

満天の星空の中、僕は必死に操縦桿を握っていた。

手元のコンソールにある指針だけを頼りに真っ暗闇の中を必死に進んでいる。

どうやら今いるあたりは小惑星帯アステロイド・ベルトになっているようで10階建てのビルみたいな大きさの岩がひっきりなしに僕のほうに飛んでくる。

天の光はすべて星と言うが、光らない石っころみたいな星がこんなに飛んでいるなんて聞いたことがない。

遠くにしか見えない星よりこっちのほうが大問題だ。

真空の宇宙には音がない。自分の吐いた息だけが僕の耳を震わせ、無限の闇に吸われてゆく。

そのスポンジのような闇に自分もそのまま吸い込まれてしまうような気がして理由もなく遣りどころのない恐怖に襲われる。

僕はもう、そんな時間をかれこれ4時間近く過ごしている。




第四話 星に願いを




************************************************************



「なあ?ノエルさんよ!命だけは助けるんじゃなかったのか?」



ここはワルプルギス領最凶の禁足地「無間牢獄」。

近付くものすべてに死の呪いを振りまく呪物を封印するために作られた太古の結界。


そこの新たなる住人、ナナ・ハルバルトは怒っていた。

命を救ってやると約束した雇い主から受けたその仕打ちに。


「黙れ。私の気が変わらぬうちにな。」


その無間牢獄の管理者もちぬし、ノエル・クリスマスはもっと怒っていた。

またしてもナナ・ハルバルトに出し抜かれた自分とその愚かなる友人に。


この宇宙を統べる女神、ノエルの両脇には彼女の姿をかたどった自律人形オートマタが二体控えている。

名をそれぞれホーカスとポーカスというその二体の人形はその身に式神を宿した意志ある人形としてその主を日々支えている。


「ホーカス、ポーカス、やれ。」


ノエルの号令により、二体のオートマタの周囲が銀色に輝き始める。

自律人形の核に溜め込んだ高密度のエーテルを魔術を行使するために放出しているのだ。

陰の気を操るホーカスが無間牢獄の発する呪いを中和し結界の境界面の安全を確保し、陽の気を操るポーカスが結界に干渉して穴を創る。

そうしてできた片道のワームホールの正面で長身の女 ナナ・ハルバルトはさらに大柄な女、ノエル・クリスマスの手で首根っこをひっ掴まれて立たされていた。


「なあ、考え直せって。私が抜けたら困るだろ?」


「……私を手こずらせた記念だ。遺す言葉があれば聞いてやろう。」


そう言い終わるとノエル・クリスマスはナナを穴の奥へと突き飛ばした。

ナナが穴の奥に消えると入口はすぐに掻き消え、周囲を粘りつくような静けさが覆う。


「これで奴も一巻の終わりか。何にでも使い道はあるものだな。」


「まったくだ。ところでノエルよ。奴をここに放り込むのは脱走させた子供のことを聞き出してからでも遅くはなかったのではないか?」


「……奴をなんとかしないことにはおちおち調査もできんからな。ホーカス、至急調査班を結成して艦内の痕跡を調べさせろ。ポーカスはラヴレースに連絡をとって地球人テラーの捜索を急ぐよう伝えろ。」



この銀河最大の権力者、ロックレース辺境伯は静かに激怒していた。

自分の寄子のあまりのバカっぷりに。そして友人だからという理由で彼女を重席に取り立てた己の愚かさに。



**********************************************************



~4時間前~ 戦艦ワルプルギス -ナナの隠し部屋-


「”輝き(ハンズ・オブ)の手(・グローリー)”」


ナナの咆哮とともに部屋に閃光が走る。

月ほどの大きさの鐘がなったような爆音が広がる。


眩んだ眼が再び見えるようになった頃には、装甲板に大きなヒビを入れた敵のヘビーメイルがホーカスの後ろに転がっていた。


重鋼鎧へヴィーメイルの装甲を一撃でこんなに……この銀河で一番硬いんだぞ!」


「やっぱ硬すぎて埒が明かねえな。この調子じゃあ腕があと何本いるのやら。」

ナナは不自然な方向に曲がった左腕をつかみながらそう言った。」


「何だと?」


ナナが押さえていた腕が淡く光りだす。

光が収まるとナナは拳を曲げ伸ばしして指の動きを確かめる。

ひょっとして今の光で骨折が治ったのだろうか?


「痛めた腕を治しながらこちらを削りきるつもりか?私が倒れるよりもノエル様が駆けつけるほうが早いぞ?」


「それもいい手だがこっちには時間がないんだ。なんなら降伏ギブしてくれてもいいぜ。」


「……」


ホーカスが無言で再び影の帳を展開する。先ほどとは比較にならない密度だ。


「おいクソガキ。」


「……なんだよ?」


「いいか、これからの流れを説明しておく。

 私が合図をしたらそこの宇宙船シップに駆け込め。

 そしたら中に適当な武器が入ってるから一個選んで私に投げろ。

 それが終わったらおうちに帰っていいぞ。地球への安全なルートは星図コンパスにもう入ってる。何か質問は?」


「待ってくれよ。それじゃあアンタはどうなるんだよ?」


「私はもともとこっち側の人間だ。このままこっちにに残るさ。」


「でも……」

俺が言い終わる前に周囲に異変が起こった。壁が緊急ランプのように点滅しだしたのだ。


「チンタラやりすぎたな。“お願い!乗せて!ナナお姉ちゃん!!”。」


ナナがそう叫ぶと宇宙船のドアが開いた。


……いやさっきのやつお前が言うのかよ!

そんで開くのかよ。


なんだかんだ言いつつ俺は宇宙船に駆け込んだ。


「ギャアぁぁっ!!」


後ろから機銃で撃たれていた気もするが全部ナナが受け止めてくれたみたいだから大丈夫だ。


宇宙船のハッチを駆け昇ると何かにけつまずく。

俺の脚にぶつかったのは床に転がっていたエレキギターのようだ。

少しあたっただけなのにぶつけた部分が熱を持つほどジンジンする。


「ナナ。武器ってどこにあるんだ?」


「何でもいい。適当にこっちに投げてくれ。」


部屋を見渡したが、ガラクタにしか見えないものばかりだ。


「なあ、この部屋オモチャしかないんだけど!」


「うるさいバカ!早くしろ!」


俺はとりあえず足元にあったギターをナナに投げつけた。

後頭部に向かって思い切り投げたはずなのにナナは振り向きもせずにそれをキャッチする。


「よし、アタリだな。」


ナナはそう独り言≪ご≫ちるとギターを大きく振りかぶって敵に叩き付けた。

雷のような音がして敵のロボットが吹き飛んだ。


勢いのまま壁にめり込んだロボットを見ると片腕が外れていた。

いや、よく見ると外れたのではない、斬られている。破断だ。

あのギターを叩き付けられた圧力に自称銀河一固い防御力が追い付かなかったのだ。



「何!貴様どんな手を使ったのだ?」


「……ホーカス、ひとつ、良いことを教えてやるよ。」


「急にどうした?」


「本当の強さってのはな!勝つことじゃなくて負けないことなんだよ!」


「意味がわからん!」


ホーカスが吠えている間にナナは手負いの鎧≪メイル≫を一人で袋叩きにしている。


それを眺めているとナナと目が合った。


ナナは僕に気が付くと軽くウインクをした。

それから声を出さずに唇だけでしゃべりかける。

「(じゃ・あ・な)」


ナナはそれだけ言うとこちらに手をかざした。

すると宇宙船の重い扉が勢いよく閉まった。

一拍置いて艦を物凄い衝撃が襲う。

次の瞬間僕は……宙に浮いていた。



************************************************************



ワルプルギス領の母艦 戦艦アトランティスは超高度な次元迷彩を展開し、常に人類の目に留まらぬよう気を配っている。その結界はこの200年間、一度も解かれたことがない。


しかし、今その帳を破って黒塗りの探索艇(スペース・ポッド)が21機、艦の周りを飛び回っている。

彼らには光学、電子、魔術の三つの迷彩しか掛けられていない。絶えず不規則に座標の変わる艇《ポッド》を覆うような結界はいかに最高レベルの式神、ホーカスとポーカスであっても片手間では制御できないのだ。


そのため今の彼らを超高性能な望遠鏡で()()()()()才能を持った人間がみれば、過去3000年以上にわたって秘匿されてきたアトランティスの痕跡が地球人にも知れてしまう。尤も、そんな人間()()()()()誰一人いないのだが……


21機のポッドはしばらくアトランティスの周りを旋回したのち、編隊を組んで飛び去って行った。







次回からテンプレ展開です。

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