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ヴィクトリーマン  作者: 尾黒 時男
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第1話『消えた水道の水』

こんにちは僕は正義 忠勝!

巷ではヴィクトリーマンなんて呼ばれてる正義のヒーローさ!

今、この国では悪の組織「スゴーク=ワルーイ」が世界を支配しようとして暗躍しているんだ。

でも、この国にはたくさんの人達が平和に暮らしている。

ヴィクトリーマンは悪を絶対に許さないぞ!


第1話『消えた水道の水』


ニュースで最近の異常気象について報道がされている。

今は6月だというのにここ最近ずっと気温が33℃を超している。

さらには日照りだ。もう一ヶ月も雨が降っていない。

そのため、各地で深刻な水不足が問題になっている。

一部では水道の水が出ないなどのトラブルが相次いでいた。

「なあなあ、弟や。最近熱くないか?お兄ちゃんへばっちゃってさ。アイスクリーム買ってきてくれんか?金渡すしおつりやるからさ。108円ぐらいのアイスクリーム頼んで110円ぐらい渡すから。」

私、ヴィクトリーマンこと正義 忠勝には弟が3人いる。今話しているのは1番上の弟で、名前は宇良霧 増世だ。

名字が違うのは複雑な家庭の事情が絡んでくる。

私の頼みを名字の違う弟はにべもなく断った。

「やだよ。2円しかもらえねぇじゃん。この暑さで2円のためにお使いいくやつなんかいんのか。」

弟にお使いを断られて私は仕方なく近所のコンビニまで自分で買い物にいくことにした。

この暑さでは徒歩で動くのがしんどい為、私はガレージから車を出す。

この車は通称、ヴィクトリー号。

見た目は黒色のクラウンだが、これにはヒーローの車らしい様々な機能がついている。

例えば空中の飛行機能。信号で捕まったり列に並んだりするのはめんどうなので、今回は空を飛んでコンビニまで向かうことにした。

風を切るように素早く車が飛行する。

車は飛行するときは当然ながら翼がはえる。

ジェット噴射で縦横無尽に空を駆けるのは気持ちがいい。

空から町を見ていると1つ妙なことに気が付いた。

「池や沼が、どこも干上がっている。」

そう。池や沼に本来あるべき水がなくなっていた。

水を無くして行き場を無くした魚たちが、ただの穴と貸した池や沼で苦しそうに跳ねている。

「かわいそうに。」

残念ながら死んでしまっているものもいる。

「後で埋めてやろう。」

そう心に決め、私はコンビニに急いだ。

コンビニについた私は愕然とした。

アイスクリームのショーケースの前で膝をつく。

「て、店員さん!これはどういうことなんだい!アイスクリームがないじゃないか!もうみんな売れちゃったってぇのかい?それにしても1つもないなんてあんまりじゃないですかい!」

嘆く私を見て店員さんが困った顔を見せる。

「ああ。それですか。アイスクリーム。今入荷できてないんですよ。」

「入荷できてない?なぜ?こんな暑い日はまさにアイスクリームの売りどきじゃないですか。なぜ仕入れないのですか。このコンビニは真冬の寒い時期にもおでんを売らないというのですか。」

店員さんが目を細めて頭を掻いた。

「いやね。あれですよ。最近の猛暑と水不足で工場の方がアイスクリームの原料の水を調達できてないらしいんです。」

私は言葉を飲んだ。

今さっきも池や沼の干上がった光景を目にしてきたが、まさかそこまで酷い状態だったなんて。

なんでそんなことになってしまっているんだ。

温暖化の影響というやつなのか。

私は肩を落とし帰路についた。

私がコンビニから外に出ると、全身黒色のスーツでシルクハットを被った男たちが何やら話をしていた。

その男たちは今、コンビニには置かれていないはずのアイスクリームを食べている。

私はそのアイスクリームを眺めながら横を通りすぎ、車に乗ろうとした。

そのとき男たちの会話が耳に入る。

「で、順調なのか?水攻め計画の方は。」

私ははっとして通りすぎながら男たちの会話に集中する。

「ええ。兄貴の力で気温を操作し後2ヶ月も日照りを続ければ、この国から飲み水はなくなります。」

男二人の、おそらくリーダーと思わしきため口の男が怪しく笑う。

「クックック。そうなれば人々は水をどうにかして手にいれようとしてパニックになるだろうな。」

「ええ。そこで我々がアジトに溜め込んだ大量の水をちらつかせれば、この国の連中は我々の言うことを聞かざるを得なくなるって寸法です。」

フフフと二人が笑う。

しかし、とリーダーと思わしき男が首を振りながら話を続ける。

「2ヶ月は少し時間がかかりすぎるな。ここは手っ取り早く水道局を襲撃して水を失わせるようにするか。」

「いつ、やるんです?」

「こういうのは思い付いたときにやっちまうのがいいんだよ!」


私は水道局に先回りした。

しばらくそこで待っていると先程の黒いシルクハットが見えた。

「さて、派手にやりますか。」

したっぱの方が手のひらを向けると爆音と共に水道局の敷地で大爆発が起こる。

爆風と共に土砂が飛び散った。

建物の中から水道局の職員たちが蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出してきた。

その人たちに向かってしたっぱの男が再び手のひらを向ける。

「危ない!」

私はそう叫んでヴィクトリーマンに変身した。

ヴィクトリーマンに変身するのにかかる時間は0.0002秒。

変身した私は職員たちを庇うようにその間に飛び込んだ。

すさまじい爆発が私を襲い、激しい砂煙が立ち上る。

「なんだ?だれか飛び込んできやがりましたよ。」

したっぱがリーダーの方に頭を向けて尋ねる。

「誰だか知らねぇが死にてぇようだぜ!やっちまいな!」

砂煙が晴れて立ち尽くす私にしたっぱの男が手のひらを向ける。

「俺はね、手のひらを向けた先の対象を、直径50Kmの小惑星すら塵も残らぬ破壊力で爆破することができんですわ。粉々になって死にやがれ!」

そうしたっぱが宣言し、今にも私が攻撃を受けようというタイミングで弟の増世が現れて私の方に駆け寄ってくる。

「兄さん!」

弟の増世がそう叫ぶのと同時に、私は大爆発に包まれた。

「へ。塵も残さず死にやがりましたね。」

したっぱは得意気に鼻を鳴らし、リーダーと顔を見合わせる。

「ヴィクトリー・パンチ!!!」

私はよそ見をしたしたっぱの横っ面を思い切り殴りつけた。

したっぱは空中で何回か回転した後地面に墜落し、完全に動きを止めた。

リーダーは驚愕した表情を見せてなぜと呟いた。

しかしすぐ口許に笑みを浮かべると不敵な表情を見せる。

「奴を、俺の部下を倒したぐらいでいい気になるなよ。日照りを起こさせていたのは私の力。私はマッチの火種程度の熱から、天に浮かぶ太陽と同じだけの熱まで、好きな温度を持たせた火の玉を作り出すことができるのだ。そしてそれを意のままに、自由に操ることができる。」

そう言ってリーダーは気球と同じほどの火の玉を産み出した。

「そして今産み出したコイツの熱は、太陽と同等だ!」

リーダーはその小さな太陽とでも言うべき火の玉を私に叩き付けた。

「兄さん!」

弟がまた叫んでいる。

リーダーがハハハハと高笑いをした。

「ヴィクトリー・キック!」

高笑いをするリーダーの膝を、正面から思い切り蹴り込んだ。

バキッ!と鈍い音がしてリーダーが崩れ落ちる。

「バカな!どうして!」

リーダーがそう叫ぶと弟がはっとしたような表情で声をあげた。

「そうか!ヴィクトリーマンには! き か な い ん だ !!!」

私はリーダーに睨みをきかせて大声でいう。

「そういうことだ。おとなしくお縄につけ!」

「くっそー!」

リーダーは悔しそうに地面に拳を叩き付けた。

リーダーとしたっぱはやがてやってきた警察に連行されていった。


朝起きてニュースをつけると久しぶりに雨が降ったと報道されていた。

「いや。よかったよかった。これでまたアイスクリームが食べられるってもんだ。弟よ。お兄ちゃんはアイスクリームが食べたい。買ってきてもらえるかな。」

ソファに寝転がりながら弟の増世に言う。

もちろん今はもう6月の気温に戻り猛暑日ではなくなった為にお駄賃は無しだ。

「やだよ。だって外、雨ふってんじゃん。つーか、兄さん雨ふってんのにアイス食うの?」

「ああ。そっか。」

そう。今は別に暑くないし雨も降ってない。アイスクリーム食う必要がなくなってしまったな。

あと1つ。

「あっ!魚のお墓作るの忘れてた。」


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